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ミニプログラムの広がりで、メガヒットが生まれるカジュアルゲーム

最近の中国では、ゲームといえばMOBAなどのeスポーツ系が人気だ。ネイティブアプリのパズルゲームは押され気味になっている。しかし、手軽に利用できるミニプログラムが普及したことで、再びカジュアルゲームからヒットが登場するようになっていると4399遊戯盒が報じた。

 

ネイティブアプリからミニプログラムの時代へ

O2O(Online to Offline)ビジネスや新小売ビジネスでは、ネイティブアプリではなく、WeChatやアリペイのミニプログラムが活用する流れになってきている。アプリでは、ユーザーに「ダウンロード」「アカウント登録」「決済方式登録」などの手間をかけるため、その各段階で、離脱をしていってしまう人が出てくる。

一方で、ミニプログラムは、WeChatであれば検索、ブックマーク、履歴などから簡単に呼び出すことができるため、ダウンロードという概念が存在しない。さらに、WeChatのアカウントが流用され、決済方法も自動的にWeChatペイが使われるなど、アプリに存在するハードルが一切ない。

そのため、始めて使う人でもすぐに使うことができるため、新規ユーザーを獲得しやすい。

例えば、街を歩いていて、コーヒーを飲みたくなったら、地図でカフェを探すのではなく、WeChatで「付近のミニプログラム」を検索する。すると、現在位置近くに店舗があるカフェのミニプログラムが表示されるので、その中からカフェを選ぶことができる。以前使ったことがあるか、会員登録をしてあるかなどは気にする必要はない。

ミニプログラムでモバイルオーダーをしてしまい、それから地図を見てカフェに向かう。着く頃にはコーヒーができあがっていてすぐに飲めるという世界が実現されている。


ヒットが生まれているミニプログラムゲーム

このようなミニプログラムへの流れが、カジュアルゲームでも起きている。ミニプログラムのゲーム「動物レストラン」が人気となり、リリース1年で利用者数が1.3億人、日間アクティブユーザー数は500万人以上、広告収入は1億元(約15億円)を突破している。このゲームは、2020年のWeChatミニプログラムゲームの中での「年間人気創意賞」にも選ばれた。

しかも、ミニプログラムの開発は、アプリよりも簡単で、動物レストランを開発したのはわずか4人のチームだ。

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▲可愛いキャラが多数登場する「動物レストラン」。わずか4人のチームで開発し、1年で約15億円の広告収入をあげた。

 

キャラを楽しむカジュアルゲーム「動物レストラン」

動物レストランは、日本の感覚からするとゲームと呼ぶほどのこともないカジュアルゲームだ。自分のレストランを開き、宣伝をすると、動物のお客がやってくる。お客はそれぞれに食べたいものを吹き出しで表示するので、その料理を提供するだけだ。お金が貯まると、レストランの家具を購入したり、新しい料理を仕入れられるようになる。

ゲーム性は特になく、ひたすらタップをしていくというゲームだ。しかし、慌ててタップする必要はなく、可愛い絵とキャラクターの動きを楽しむ癒し系のゲームだ。

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▲動物レストランのメイン画面。宣伝をするとたくさんのお客さんがやってくるので、お客さんが吹き出しで求めている料理を提供してお金を稼ぐというもの。タップをするだけの単純なゲームだ。

 

若い世代に受け入れらた「仏系ゲーム」

このようなカジュアルゲームは「仏系ゲーム」と呼ばれる。日本の「放置ゲーム」に近い。動物レストランも、最初は自分で料理を提供する必要があるが、お金が貯まるとスタッフを雇うことができるようになり、そうなると、自分は何もしなくてよくなる。ただ、レストランが繁盛する様子を眺めているだけのゲームになる。

仏系とは、Z世代と呼ばれる20代前半に受け入れられている感覚で、「多くを求めない」癒し系の感覚だ。このような仏系世代に、「操作をしなくていい」「攻略することを考えなくていい」「癒される」「気軽に始めて、いつでも終了できる」などが受けている。

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▲さまざまなキャラのスタッフが用意され、スタッフを雇用すると、ユーザーは何もしなくてよくなる。ただ、キャラの動きを楽しむ放置ゲームとなる。

 

拡散しやすいミニプログラムゲーム

ミニプログラムゲームの利点は、拡散をしやすいという点だ。アプリゲームの場合、誰かがやっているのを見て、なんというゲームなのかを教えてもらっても、ダウンロードをしなければならない。中にはアカウント登録が必要だったり、長いオープニングを見なければならないものもある。また、ゲーム性が高い内容であると、操作方法や攻略方法を覚えなければならない。仏系世代にとっては、これが煩わしいのだ。

一方で、ミニプログラムゲームであると、人がやっているのを見て、面白いそうであれば、すぐに探してゲームを始めることができる。やってみて、つまらなければ削除する必要もなく放置をしておけばいい。時間が経てば、履歴リストからも消えて、忘れてしまうだけだ。

 

スタートアップが参入しやすいミニプログラムゲーム

中国では「王者栄耀」「荒野行動」「PUBG」というアクション性の高いゲームや、eスポーツ的なゲームも人気が高い。しかし、どうしても10代、20代が中心になる。一方で、動物レストランのような癒し系、放置系のカジュアルゲームは、ゲーム好きではない人、広い世代にも受け入れられる。このようなカジュアルゲームは、気軽に始めることができるミニプログラムの方が向いている。しかも、ミニプログラムの放置ゲームであれば、グラフィックの質やアイディアは求められるものの、開発自体は手間がかからないため、少人数のスタートアップでも参入ができる。

動物レストランの成功を見て、早速類似ゲームが多数登場している。ミニプログラムゲームというジャンルも広がっていく可能性が出てきた。