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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

人工知能も混乱する中国の道路状況。自動運転の前に必要な道路環境整備

中国でも自動運転によるロボタクシーの営業運行が始まっている。現在は、エリアを限定して、その範囲内での運行だ。しかし、このエリアを拡大していくには大きな問題がある。それは道路環境が標準化されていないという問題だと智車科技が報じた。

 

歩行者を歩行者と認識できないケースが存在する

自動運転車の普及が始まり、それに伴い、自動運転車の交通事故も起きている。2018年3月、ウーバーの自動運転車がアリゾナ州で試験走行中に世界で初めての自動運転車の死亡事故を起こした。

乗車していた監視員がスマートフォンの操作をしていて、前方を注意していなかったということも問題になったが、テクノロジー的には、被害者となった女性をシステムが歩行者だと認識できなかったことが大きな問題だ。自転車を押していたため、画像解析から歩行者ではなく、障害物だと認識。衝突5.6秒前に検知はしたものの、歩行者ではないという判断だったため、行動の予測をしなかった。車両の前に「障害物」が移動した時、車両の時速は69kmであり、回避行動が間に合わなかった。

テスラは2016年に左折するトレーラーとの左直事故(日本の右直事故に相当)を起こしている。牽引されている長いトレーラー部分が、銀白色であったため、日光を反射し、車両としてうまく認識できなかったことが原因だ。

 

人工知能にとって認識が難しい交通環境が多く存在する

このような問題は、システムが認識できない交通要素が、実際の路上には数多く存在しているということを示している。

智車科技は、中国の交通状況はまさにこのようなバラエティに富んだ交通要素がふんだんにあるため、この問題が、中国の自動運転の発展の大きな障害になっていると指摘をしている。

中国の都市部には、構造化されていない道路がたくさんある。古い時代からの道路を舗装しただけで、通行も多くはないため、センターラインや標識などの整備がされていない道路だ。多くは、近隣住民の生活道路であるため、人が運転をするのであれば、互いに譲り合って運転すれば問題はないものの、自動運転システムは道路状況が把握できない。

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▲生活道路や敷地内の私道では、レーンマーク、標識などが整備されていないことが多い。近隣の人しか利用しないため、人間であれば、互いに譲り合って利用するが、これも自動運転システムは混乱をする。

 

標識類も誤認識を起こしやすい状況

また、構造化されている道路でも、混乱を招きかねない道路指示があちこちにある。2車線道路であったものの、交差点では左折専用3車線に変わる。直進マークと右左折マークが重なってプリントされている道路もある。交差点での渋滞圧を減らすための工夫だ。

これもそこを毎日運転している地元ドライバーにとっては、状況がわかっているので問題はないものの、自動運転システムは混乱をすることになる。

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▲交通指示に関しても、矛盾したものが無数にある。地元の人はわかっているので、問題は起きないが、自動運転システムは混乱をする。

 

ガイドラインに従っていない交通信号も

また、交通信号、道路標識には、国際的なガイドラインにあたる「ウィーン条約」があるが、日本と同じく、中国も批准をしていない。さらに問題なのは、国内のガイドラインもあるものの、現実には守られていないのが現状だ。

その都市の交通状況により、交通信号にもさまざまなタイプのものが生まれ、さらに道路標識でさえ、言葉で指示をする看板を掲示するケースがある。

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▲左が、国際的なガイドラインで定められた交通信号。しかし、実際には右側のようにさまざまな交通信号が存在する。それぞれの地域によって、見やすい、理解しやすい形になっている。これが自動運転システムを混乱させる。

 

歩行者に見えない歩行者、車両に見えない車両

また、大きな問題が、電動バイクや三輪車などで、中国の場合、積載量などに関する規制もあるものあまり守られていない。大量の荷物を積載した電動バイクは都市を歩いているとよく見かける。

画像解析により、障害物、歩行者、車両などを識別する自動運転システムが、このような異形の車両を、果たして車両として認識できるかどうかはかなり疑問だ。2018年のウーバーの交通事故のようなことが中国でも起きる可能性がある。

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▲積載量をまるで無視した車両。このような車両は、自動運転システムの画像解析では、車両と認識されない可能性がある。

 

人間は交通ルールも守らない

さらに問題なのが、高速道路に歩行者、電動バイクなどが入り込んでしまうこと。高速道路は、最短距離で場所を結ぶため、地方の歩行者や都市部の電動バイクにとっては、便利な陸橋代わりとなるため、違法侵入が後を絶たない。

これも人間が運転をしていれば、驚きはするものの、回避をして、大事にはならない。しかし、自動運転システムにとっては想定外のことであり、大事故につながりかねない。

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▲歩行者通行不可の高速道路、陸橋に侵入する人、二輪車が跡を絶たない。交通ルールが守られないという単純な問題ではなく、歩行者の利便性を考慮した道路環境になっていないのが原因だ。

 

自動運転の前に交通状況を標準化する必要がある

智車科技は、中国の道路状況を、世界標準に合わせることがまず重要だとしている。さらに、世界標準だけではなく、中国独特の三輪車、電動バイクなどについても自動運転システムが学習をする基準を作ることが必要になるとしている。

また、過積載、高速道路への侵入などについては、交通ルールを徹底するだけではなくならない。それぞれ理由があって、違法だとわかっていてその行為を行なっているのだから、その理由を解消する施策を講じていく必要がある。例えば、地方の高速道路で歩行者が侵入してしまうのは、下道を歩くよりも早く移動ができるからだ。であれば、高速道路脇に歩行者専用の陸橋を用意するなどの対応が必要になる。

 

自動運転エリアの拡大には課題が山積み

このような対応まで考えると、自動運転車が全国どこでも通行できるようになるまでには長い時間がかかる。

当面は、自動運転車が走行可能なエリアを定めて、その中の交通環境を整備し、そのエリアを徐々に拡大していくという形で自動運転車が広がっていかざるを得ない。

つまり、自動運転車走行可能エリアは、交通環境も合理的かつシンプルに整備せざるを得ないが、これは人間にとっても運転がしやすい。自動運転車による事故率の減少に加え、人間の運転による事故率の減少も期待をすることができる。

すでに、各都市で、固定バス路線、交通環境が整備されたエリアでのロボットタクシーなどのL4自動運転の営業走行が始まっている。しかし、エリアを拡大していくにはいくつもの課題を解決しなければならない。