中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

急成長するオンラインシルバー経済。高齢者もスマホからECを利用する時代に

京東ビッグデータ研究員は、「2019中老年オンライン消費情勢報告」を公開した。オンラインでの高齢者関連の販売額が成長をしている。中高年の人口が増え、スマートフォン利用率が伸びていることが要因だ。また、子どもが親を心配して注文する「関懐型消費」も多く、銀髪経済(シルバー経済)が注目されるようになっている。

 

立ち遅れる中国のシルバー産業

世界には、高齢者向け商品が6万種類あると言われているが、中国で流通しているのはわずか2000種類にすぎない。高齢者向けの商品、生活サービス、医療、娯楽の4つの領域で、中国は諸外国に比べて遅れている。しかし、だからこそ、「シルバー経済」は成長空間の大きい有望産業だと考えられている。

京東ビッグデータ研究院がECサイト「京東」の購入データを分析した結果、この3年、高齢者商品の販売数は毎年、平均39%という急成長を示していることがわかった。特に、伸びが著しかったのが、オンライン生活サービス、日用品、調理器具、家具だった。

 

高齢者人口が子どもの人口を初めて超える

中国国家統計局によると、2018年末での中国の人口は13億9538万人となった。このうち、0歳から15歳までの人口は2億4860万人、60歳以上は2億4949万人。60歳以上の人口が初めて15歳以下の人口を超えた。60歳以上は全人口の17.9%となり、中国も本格的に少子高齢化が始まっている。

さらに、高齢者のネット利用が進んでいる。「第44回中国インターネット発展状況報告」によると、2019年6月時点で、50歳以上のネット民は2018年末の12.5%から13.6%に増加している。また、平均アクセス時間は1日4時間近くになっている。

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▲ネット利用者の年齢構成。60歳以上は6.9%となり、無視できない割合になってきた。それに伴い、高齢者のEC利用額も急成長している。

 

伸びる生活関連派遣サービス

このような背景があり、この3年で、高齢者向け商品の販売数は毎年平均39%伸び、2019年には2017年と比べて商品種類数も78%増えている。

その中で、昨年から急速に需要が増えているのがオンライン生活サービスだ。スマートフォンなどから、清掃、介護、設置、修理などのサービスを注文することができるというものだ。

このようなサービスは、以前から街中にあり、電話で派遣を頼むことができたが、多くは少数のスタッフが何でもやるということからサービス品質が高くないという問題や、価格が不透明という問題が生じることもあった。

これをチェーン展開する企業が提供することで、サービス内容に応じて専門スタッフを派遣することができ、価格も明快になった。また、オンラインで質問や相談をすることもでき、さらに利用者のレビューを参考にすることで、安心して利用することができる。このようなことから、このサービスが急速に広がり始めている。

2019年の重陽節(9月9日)前後の期間、京東上で注文されたオンライン生活サービスの27%が、異なる場所での購入だった。つまり、別の都市に住んでいる息子や娘などの家族が、実家への派遣を注文している。

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▲2019年の高齢者のEC商品で、昨年からの伸び率ランキング。清掃、介護、修理などの専門スタッフを派遣してもらうオンライン生活サービスの伸び率が、34倍と急成長している。

 

子どもが親のために注文する関懐型消費

高齢者向け商品の販売が伸びている要因のひとつが、別都市に住んでいる息子、娘が親のために購入するという「関懐型消費」(関懐は、中国語で気にかけるという意味)だ。オンライン生活サービスの中には、サービスを実行後、注文主(子ども)に対して、撮影した写真や生活の様子の簡単なレポートを送ってくれるものもある。

高齢者向け商品の購入者のうち、48%は80年代生まれ(30代)と90年代生まれ(20代)になる。高齢者向け商品を高齢者自身(56歳以上)が購入しているのは13%にすぎない。

つまり、シルバー経済が伸びているのは、2つの要因が重なっているからだ。

1)高齢者自身がスマホを使うようになり、ECを利用するライフスタイルに変化をしている。

2)親子で別都市に住むことが多いという事情から、子どもが親の生活を心配して、生活サービスを派遣したり、商品を贈る「関懐型消費」が伸びている。

 

注目されるシルバー消費

ただし、このようなシルバー経済は、地域差も大きい。最も多いのは華東地区の江蘇省安徽省浙江省で、多くの農村、地方都市の若者が仕事を求めて、上海や杭州などの都市にいくということが関係しているのかもしれない。一方で、西南、西北などの西部の消費は少ない。

すでにシルバー経済は、急速な伸びを占めているが、西部ではほとんど見られない。つまりは成長空間は広大だということだ。各方面からシルバー経済が注目をされている。