浙江網商銀行とアリペイは共同で、「2019中国小店経済温度図譜」を公開した。これによる飲食店を中心とする個人商店は、全国に1億店があり、3億人の雇用を生み出している。中国経済の成長率を上回る成長をしており、中国経済の下支えをしていると中国新聞網が報じた。
元気な中国の個人商店1億軒
現在の中国経済は、テック、製造、小売などの大企業が牽引しているが、個人商店も元気だ。浙江網商銀行とアリペイが共同で公開した「2019中国小店経済温度図譜」によると、1億店の個人商店があり、3億人の雇用を生み出している。全体の年平均の成長率は35%にも達し、GDP成長率を大きく上回っている。店主の87%が「来年は今年よりも売上がよくなる」と答えている。
このような個人商店は、多くが飲食店であり、一間間口の小さな店だったり、屋台ということが多い。58%は夫婦や友人で経営し、55%の店が今年従業員を増やしている。
▲中国の典型的な個人商店。屋台も多く、売上は小さいが、朝食やおやつに利用される。このような小さなビジネスが3億人の雇用を生み出し、中国経済を下支えしている。
不良債権率が低い個人商店
このような個人商店は、52%が従事者が5人以下で、90%が1日の3万元(約48万円)以下と小規模だ。しかし、1億店が集まると、中国経済にとっても無視できない規模となる。
1店あたりのビジネス規模は大きくないため、必要としている資金も小さい。45%の個人商店が必要としている借入金は5万元(約80万円)以下で、しかも借入をした個人商店の99%が期日内に返済をしている。
中国中央銀行の統計によると、借入金500万元以下の零細企業の不良債権化率は5.9%もある。つまり、銀行としては零細企業に融資をするよりも、個人商店の方が好ましい市場なのだ。
しかし、大手銀行は、1件あたりの金額が小さく、業務効率が悪いという理由で、個人商店を市場だとは見做さずにきた。ここに目をつけたのが、アリババの浙江網商銀行で、アリペイの信用スコア「芝麻信用」とスマートフォンを利用し、融資決定までも自動化し、マイクロファイナンス市場に参入することで成功をしている。
▲北京市の個人商店の分布図。明るいところに個人商店が多い。最近ではIT企業の集まる中関村付近や、若者向けのカフェやファストフードが並ぶ南鑼鼓巷などに集中をしている。このような個人商店が都市の経済を下支えしている。
わずか50万円で倒産を回避し、成長が望める個人商店
個人商店の今までの痛点は、融資の難しさだった。包子店が冷蔵庫が故障しただけで、店の売上規模からすると大きな損害を被ってしまい、店主はアルバイトに行かざるを得なくなり、新しい冷蔵庫を購入する資金の目処が立たず、店舗の再開ができなくなる。毎日行列ができるほど人気の包子店が、調理器具を新しいものに買い換えれば、より多くの包子を作れるようになり、売上を倍増させることができるのに、そのお金が調達できずにいる。
個人商店は、ごくわずかなお金が用意できないために、倒産したり、成長できないでいる。「小店図譜」では、わずか3万元(約48万円)の余剰資金があるだけで、個人商店は倒産せずに、成長軌道に乗ることができるのだとされている。
個人商店は、中国の経済の下支えをしている。個人商店を守ることが中国経済を守ることで、個人商店を成長させることが、中国経済を成長させることに直結をしている。それに必要なのはごくわずかなお金なのだ。
▲「小店図譜」で紹介されている西安市の包子屋台「詩魅裹面皮」。店主が文学青年で、包子を作りながら詩を読む。その面白さと、味のよさでわずか1時間で売り切れてしまう人気屋台。
▲「小店図譜」で紹介されている成都市のウサギ頭焼きの店「張三脆」。ウサギの頭は成都で人気の食べ物。創業77年で、73歳の女主人は三代目。
▲「小店図譜」で紹介されている西安市の「小賈麻花油茶」。朝食ではポピュラーな揚げパン「油条」(ヨーティアオ)を夫婦で売っている。10平米の小さな店だが、毎日1000人が行列をして訪れる人気店。
▲「小店図譜」で紹介されているフィギュア製作職人。ECサイト「タオバオ」で、小聡聡の名前で製作したフィギュアを販売し、人気になっている。1日に55体のフィギュアを作り、3年で数千本のブラシを消耗する。