中国のスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」を使用禁止にしているのは、ミャンマー、ベトナム、ネパールの3カ国。いずれも中国人旅行客の多い国だが、禁止の理由はそれぞれに違うと財兎新金融が報じた。
消費税脱税を問題視したミャンマー政府
ミャンマーのホテル旅行部は、インバウンド旅行客によるアリペイ、WeChatペイの使用を一時禁止すると発表した。
2018年、ミャンマーへの中国人旅行客は20万人あり、2019年1月から10月までで60万人となり、中国人の海外旅行先として人気が出てきてたところだった。消費額も年間11億ドル(約1200億円)にもなる。インバウンド消費を伸ばすことに寄与してきたアリペイ、WeChatペイをなぜ禁止するのだろうか。
ミャンマー政府は、このインバウンド収入がミャンマー経済にほとんど寄与をしていないと考えている。なぜなら、中国人旅行者がお金を使うのは、中国人が経営するホテル、レストラン、レジャー施設、ショップばかりだからだ。このような中国系施設がアリペイやWeChatペイを使い、人民元建で利益を得ているため、ミャンマーの経済とは無縁の存在になっている。
しかも、ミャンマーには5%の商業税がほとんどの商品、取引に課せられている。しかし、このような中国人旅行者と中国人経営の間での決済では、この商業税もとっていないことが多い。ミャンマー政府から見れば脱税なのだが、決済がスマホで行われてしまうため、なかなか実体が把握できない。
そこでミャンマー政府は、半年間の猶予期間の後、アリペイとWeChatペイの使用を一定期間禁止することにした。
国内決済システム経由で対応するベトナム
ベトナムには、毎年400万人以上の中国人が訪れている。2018年5月、ベトナム政府はアリペイとWeChatペイの使用を禁止した。
その理由は、ミャンマーと似ている。中国系の商店が、中国から中国製のPOSレジを持ち込み、中国人旅行者から人民元建の支払いを受けていたからだ。これでは、まったくベトナムの経済に寄与しない。
しかし、ただ禁止しただけでなく、中国人観光客のことも考えている。ベトナムでは、電子決済「Vimo」(ビモ)が使われている。このビモがアリペイとWeChatペイに対応をした。中国人旅行者は、Vimoが使える場所では、アリペイやWeChatペイを使って決済をすることができる。この決済は、Vimoを経由して行われるため、ベトナム経済に寄与することができる。
▲ベトナムでは、アリペイ、WeChatペイを直接使うことは禁止されたが、Vimoがアリペイ、WeChatペイに対応している。ベトナム当局が資金の流れを把握することで、脱税などを防いでいる。
ネパールでも人民元建決済が問題視
ネパールでも2019年5月から、アリペイとWeChatペイの使用が禁止されている。ネパールは、最近中国人旅行者の間で人気が出てきている渡航先で、2018年は15.36万人が訪れ、前年から46.8%も増加している。ネパールでは、インバウンド消費が大きな財源となっていて、中国人旅行者による消費がネパール経済に大きく寄与している。
しかし、ミャンマーやベトナムと同じように、中国系の商店が進出をし、人民元建で決済を行う。これはまったくネパール経済に寄与しない。そのために、アリペイとWeChatペイの使用を禁止した。
国内独自のQRコード決済の普及が急務
東南アジアは、以前、漢字を使っていた国も多く、中国文化の影響を大きく受けている。在住華人も多い。そのため、中国人旅行者が利用するホテル、レストラン、ショップの多くが中国資本、中国経営になってしまう。この場合、中国人観光客がいくら多く訪れようと、お金は中国人の間で回るだけで、地元国の経済には寄与しない。
ベトナムのように、国内決済システムを普及させ、それがアリペイやWeChatペイに対応するということが必要だ。それであれば、消費税なども徴収することができ、国内の経済に寄与できる。東南アジア各国でも、アリペイ、WeChatペイに対応した独自のQRコード決済が普及していくきっかけになる可能性もある。