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アリペイ15周年。知られていない「9つのクールな知識」

アリペイがサービス開始15周年を迎え、「9つのクールな知識」をウェイボーのアリペイ公式アカウントで公開した。アリペイが15年で、大きく変わってきたことがわかる。

 

1:アリペイの最初のネーミングは「担保交易」

「支付宝(アリペイの中国名)は、元々は支付宝という名前ではなく、担保交易という名前でした。なぜなら、知らない人同士がネットで取引する時の信用問題を解決するために生まれたものだからです」。

アリババは、2003年5月にCtoC型ECサイト「淘宝」(タオバオ)をスタートさせた。誰でも商品を出品できるフリーマケットサービスで、出品料は無料、手数料も無料というものだった。

しかし、当時の中国は、店頭でも偽物商品、劣悪商品が売られている。ネットで現物を見ないで、買おうという人はなかなか現れなかった。そこで、アリババは、同年10月にアリペイの前身にあたる担保交易の仕組みを導入した。

購入したお金は、直接出品者には渡さず、タオバオ運営がいったん預かる。購入者の元に商品が送られてきて、中身を確認し、問題がないとなって、初めて出品者に送られるというものだ。

これが、後にタオバオ内ポイントを使うようになり、アリペイに発展をしていく。

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2:最初に全額補償制度を始めたアリペイ

「最初は誰もネットでお金を使おうとは思いませんでした。そこで、アリペイは、最初に全額補償制度を始め、それを15年間続けています」。

アリペイを導入したことで、ようやく横浜在住の中国人留学生が出品した日本製の中古カメラの取引が750元(約1万1000円)で行われた。しかし、西安市にいた購入者は思い直して、キャンセルをしてきた。タオバオの担当者は、思わず、その購入者に電話をしてしまった。そして、自分の名前、身分、個人の携帯電話番号まで伝え、「もし、問題が生じたら、私が750元を弁償します」と言った。これで、タオバオ最初の取引が成立した。ここからアリペイの全額補償制度が始まっている。タオバオやアリペイ側の問題で、消費者が損失を被った時は、全額を弁償してもらえる制度だ。

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3:最初の補償制度は、担当社員の個人的な補償

「アリペイの最初の決済は、もう少しのところで成立しなかったかもしれません。購入者がキャンセルをしてきたのです。担当の女性社員は問題が生じたら自分の給料から弁償すると伝え、それで最初の取引が成立しました」。

タオバオのサービスがスタートすると、すぐに出品する人が現れた。崔衛平という横浜に住む中国人留学生だった。崔衛平さんは、日本の家電製品などを買い付けて、中国に送って利益を得るというサイドビジネスをしていた。そこで、自分が使っていたカメラをタオバオに出品をしてみた。

750元で購入したのは西安市に住む大学生だった。ところが、当時の中国の郵便事情はまだ悪く、郵便局に取りに行っても荷物はなかなか届かない。郵便局員は、ネットで購入したと聞いて「そりゃ、騙されたんじゃないか?」という始末。大学生は購入をキャンセルしてきた。

それで、担当の女性社員がこの大学生に電話をしてしまった。女性社員は「750元は私の1ヶ月の給料と同額です。問題が生じたら、私が自分の給料で弁償します」と説得した。

これで、取引が成立し、大学生はカメラを受け取ることができた。しかし、大学生は、関税や運送費などで合計800元を追加で支払うことになった。それでも、大学生は、当時の中国では入手が難しい日本製カメラを手にして大満足だったという。

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4:アリペイがあるから、悪者はいない

「アリペイの最初のCMに登場したのは王宝強さんでした。アリペイがあるから悪者はいないという台詞でした」。

王宝強は、中国で人気の高い映画俳優。2004年に「天下無賊」(イノセントワールド)=「この世に悪者はいない」という映画に出演し、この映画が大ヒットをする。そこで、アリペイは王宝強を起用して、TVCMを作成した。あたかも「天下無賊」のような映像で、王宝強が登場し、「ネットで支払いをした」「ネットには悪い奴が多いぞ」「アリペイがあるから悪者はいない」という会話をする。

最後には、「アリババのアリペイは、この世界を悪者がいないようにします」というコピーが表示される。

現在のアリペイは、利便性により使われているが、当時はまだネットの信用を担保するためのものだった。

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▲アリペイの最初にCMに登場した人気俳優、王宝強。自ら出演したヒット映画「この世に悪者はいない」のパロディで、「アリペイがあるから、悪者はいない」という決め台詞を言う。

 

5:最初は決済が煩雑だったアリペイ

「アリペイは最初からワンクリックで支払いができたわけではありません。以前は、3ページも経なければ支払いができませんでした」

アリペイがネットでの信用担保から利便性に舵を切ったのは、やはりスマートフォンが登場してからだ。2009年にスマホに対応をし、2010年に快捷支付を投入して、ワンタップで支払いができるようにした。

これにより、アリペイは、タオバオの決済ツールという地位から、広く、他サイトのネット決済、そしてQRコードを使った対面決済でも使われるようになっていく。

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6:初期のアリペイは、すべてを伝票で処理していた

「当初のアリペイは、伝票を人手で処理していました。毎日、伝票の山は高さ1mにもなりました」。

サービス開始当初のアリペイは、伝票という人手による処理が中心だった。銀行のシステムに接続していないからだ。出品者が得たアリペイを現金化するときは、アリババが銀行振り込みをしていた。

アリババでは、毎日、大量の振り込み依頼書を印刷し、それを工商銀行の西湖支店に持っていき振り込み依頼をする。西湖支店では、その振り込み依頼書を見て、行員が銀行の送金システムに手入力をしていた。

タオバオが成長していくとともに、振り込み依頼書の枚数は増えていき、麻袋につめて西湖支店に搬入するようになっていった。西湖支店では、数人のタオバオ専属行員が端末に張り付いて入力をしていたという。

西湖支店は、悲鳴を上げて、工商銀行の本部に、アリペイと銀行システムを連結すべきだと訴えた。これに北京支店、珠海支店が同調して、3支店によるアリペイ処理システムの開発が始まる。2005年12月、アリペイと工商銀行のシステムは接続され、現金化処理が自動化されるようになった。

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7:ジャック・マーを出してくれ!

「アリペイの管理職は、定期的に顧客センターに入り、顧客の対応をすることが伝統になっています。ある時、顧客が、この問題はあなたじゃ解決できない、ジャック・マーを出してくれと言ったことがあります。対応していた担当者が答えました。はい、私がジャック・マーです」。

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8:ある社員の批判から生まれたQRコード決済

「2012年、ある社員がアリババの戦略を批判しました。会長の面前でも批判をし、そこから最初のQRコード決済が生まれてきました」。

アリババは高い理想を掲げて、テクノロジーを使って、理想に突き進んでいく企業だが、もうひとつの側面は「ライバルを叩き潰す」だ。強い競争相手が登場してくれると、アリババは結束をし、本領を発揮し、成長をする。タオバオのライバルはeBayの中国上陸だったし、アリペイの最初のライバルはPayPalの中国上陸だった。

スマートフォンが普及すると、テンセントが始めたWeChatペイが強力なライバルになった。WeChatペイは、SNSがベースになっているので、相手のアカウントか携帯電話番号がわかれば、WeChatペイを使って送金をすることができた。しかし、初対面の人がアカウントや電話番号を伝え、入力するのは手間なので、アカウントをQRコードで表示する機能をつけた。これが対面決済につながっていく。

例えば、買い物客も店主もWeChatの利用者であれば、店主のQRコードを表示してもらい、客がこれをスキャンすることで、WeChatペイで送金することができる。利用者たちが、この機能を利用して、勝手に対面決済にWeChatペイを利用し始め、テンセントはこれを正式な機能としてWeChatに組み込んだ。ここからQRコード決済が始まっていく。

アリペイもQRコードの対面決済に対応しなければならないが、SNSではないので、開発は簡単ではない。アリペイ内部では、どのようにしてQRコード決済をアリペイのシステムに組み込んでいくか、相当の議論があったと言われている。

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9:当初は、面倒だと言われたQRコード決済

「7年前、アリペイを初めて導入した商店主は、メディアに、余計な手間ばかりかかると語りました。今では、チェーン店など1000万以上の商店でアリペイは使われています」。

最初のQRコード決済は、商店側がQRコード掲示し、客が金額を入力し、送金するというものだった。客がQRコードを表示して、商店がそれをスキャナーで読み取るという方式はまだ対応していなかった。

客側も手順が多く煩雑だが、商店側も客のスマホの送金画面を確認したり、商店のアカウントの入金を確認する必要があった。間違った送金先に送ってしまったり、金額を間違えて送金してしまうこともたびたびあった。

さらに、QRコードを改竄される危険性も中国工信部から指摘され、2014年3月にQRコードを決済は一時使用停止にする命令も出されている。

このような問題を解決するために生まれてきたのが、客側がQRコードスマホで表示して、商店側がスキャナーで読むという方式だ。

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