中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

世界一、ITエンジニアの数が多い国インド。途上国であることを逆手にとった強み

ITエンジニアを最も多く輩出している国はインドだ。270万人と推定されていて、中国の200万人を大きく超えている。インドはまだ途上国で、教育機関、テック企業の環境は整っているとは言えない。しかし、それが大量のITエンジニアを生み出す要因になっていると柚柚科技が報じた。

 

ITエンジニアを世界一たくさん生む国インド

ITエンジニアの世界では、近年、インド人の活躍が目につくようになっている。特に米国では、3人起業のスタートアップであれば、米国人、中国人、インド人という組み合わせが増えている。

インドは国としては、まだまだ途上国。女性の地位の問題、公衆衛生の問題、識字率の問題、貧富の格差の問題など、数々の問題を抱えている。しかし、ITエンジニアの数は世界一多い。これはなぜなのか。

そもそもインドは人口が多い国だ。13.24億人もいる。その中で、ITエンジニアは人口の0.2%、270万人になる。しかし、識字率が50%に満たない国で、この数は異常ともいえる。中国は識字率が99%だが、ITエンジニアの割合は0.14%、200万人程度なのだ。

f:id:tamakino:20200116113148j:plain

▲グーグルの新しいCEO、サンダー・ピチャイ氏もインド人留学生で、卒業後、そのままグーグルに入社した。米国ではインド人のエンジニア、起業家が目立つようになってきている。Wikipediahttps://en.wikipedia.org/wiki/Sundar_Pichai)より引用。

 

英語が準公用語であることからアウトソース大国に

インドは、200年に渡り英国の植民地だった。インド英語と呼ばれながらも、英語が準公用語であるため、ITエンジニアの仕事がしやすい。プログラミング言語の多くは英語ベースであり、仕事のやり取りも英語を使うからだ。

このおかげで、インドはIT産業のアウトソース大国となった。現在、世界のITアウトソース市場の60%をインドが占めている。インドでは、プログラミングが手っ取り早く、高収入を得る職業になっている。そのため、ITエンジニアの比率が高いのだ。

 

企業が独自に教育制度を整備

しかも、インドの人材育成の仕組みは、先進国とは違っている。先進国では、学校、コミュニティスクール、専門学校など、教育機関でスキルを身に付ける。あるいは書籍やネット教材も豊富なので、独学をすることも可能だ。

しかし、インドではそのような教育リソースは多くない。そこで、企業内で学習ができる仕組みができあがっている。もちろん、業務に必要なスキルだけを身につけるため、それが教育として質が高いかどうかは別として、必要なスキルを短時間で誰でも身につけられる環境になっている。ITエンジニアとして、広い知識を身につけてさらに上級エンジニアになりたいと考える人は、キャリアを戦略的に変えながら必要な知識を身につけていく。

 

共通試験がないために、大学が独自の人材選抜が可能

また、最近では優秀な工学系の大学も増えてきて、米シリコンバレーに人材を供給する拠点となっている。

しかし、受験制度はまだ整っていないために、日本のセンター試験、中国の高考、米国のSATのような共通試験が存在しない。入学試験の内容は、各大学に任されている。これが突出した人材を採用することに寄与をしている。平均点が高い人材ではなく、特定の分野に突出した人材を入学させ、養成することができるからだ。

f:id:tamakino:20200116113143p:plain

▲米国留学生の数は、中国人が1位だが、インド人も2位になっている。しかも、インドはまだIT産業が大きくはないため、多くの留学生が卒業後も帰国せずに、米国に留まり、職を得るという。

 

米国に留まることが多いインド人留学生

米国国際教育研究所(IIE)の統計によると、2018年から2019年の米国への留学生が最も多いのは中国で、インドは第2位となっている。

しかし、卒業後、中国人留学生はかなりの部分が中国に帰国をするのに対して、インド人はほとんど帰国せずに米国に留まるという。中国はすでにテック企業が成長してきて、帰国をしても仕事があるが、インドの場合、帰国をしてしまうと仕事を見つけることがまだ難しい。そのため、米国のテック企業でそのまま働いたり、意欲のある人は米国で起業することを考える。

このような理由で、米国のテック企業にはインド人が増えている。