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独身の日セールで、アリババはいくら儲けたのか。ジャック・マー「赤字です」。ネット民「940億円!」

アリババだけで、2648億元(約4.1兆円)の売上をあげた今年2019年独身の日セール。その後のインタビュー取材で、創業者のジャック・マーが「アリババはまったく儲けていない。皆さんを楽しませるためにやっている」と発言して、話題になっている。アリババを称賛する人もいれば、そんなわけはないとジャック・マーの発言を疑う人までさまざまだと自冉が報じた。

 

独身の日セールは、アリババは赤字?

2019年11月11日のアリババの独身の日セールは、アリババのECサイト「Tmall」の売上が2648億元という過去最高を記録した。この日1日で、12.92億個の宅配便が発送された。

その後、アリババの創業者ジャック・マーは、中国第2位のECサイトでありアリババのライバルである「京東」の創業者、劉強東(リウ・チャンドン)とともに、中央電視台財経チャンネルの取材を受けた。その中で、独身の日セールについても語っている。

「実際のところ、11月11日のセールでは、私たちアリババは利益は出ていないのです。まったく儲けていません」

「11月11日のセールは、消費者のみなさんに楽しんでもらうためのもの、販売業者のみなさんに喜んでもらうためのもので、私たちにとっては技術をアップグレードし、組織とスキルをアップグレードするためのものです。ですので、毎年、11月11日には、大幅に技術をアップグレードしています。物流技術、決済技術、プラットフォーム技術などです」。

「実際のところ、11月11日はアリババにとってはものすごく疲れる日です。物流関係者も疲れるし、エンジニアも疲れるし、アリペイ関係者も疲れるし…」。

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▲2019年の11月11日独身の日セールは、2684億元という新記録になった。これはアリババのTmallだけの売上で、他のECサイトの多くが同日にセールを行う。もはや「独身の日」という言い方は廃れ、「購物狂歓節」と呼ばれるようになっている。

 

手数料収入は80億元、しかしキャンペーン費用は100億元

ネットでは、ジャック・マーの発言の「11月11日独身の日セールで、アリババはまったく儲けていない」という部分について、議論が起きている。アリババを称賛する声もあれば、実はしっかりと儲けているとする声もある。

アリババは2つのECサイトを持っている。ひとつはCtoC型EC「タオバオ」、もうひとつがBtoC型EC「Tmall」だ。タオバオは、出店料は無料、販売手数料も無料。しかし、それではアリババはマネタイズができないので、出店料などを徴収する代わりに、販売キャンペーンなどのサポートをする「タオバオ商城」を開設した。この「タオバオ商城」が2012年に「天猫(Tmall)」と改名され、独身の日セールにより、中国最大のECサイトに成長した。

Tmallでは、販売された商品の売上の0.5%から8%が手数料となり、アリババの収入になる。この手数料額は、契約によって異なるため、仮に平均して3%だとして計算をすると、2648億元×3%=約80億元(約1250億円)になる。これがアリババの利益だ。

一方で、アリババは独身の日のために、さまざまな広告をし、クーポンを発行し、さらに著名人を出演させるイベントを行う。これに100億元(約1500億円)はかかっていると言われる。

つまり、100億元を投資して、利益は80億元。赤字であり、確かにジャック・マーの「儲けていない」言葉はほんとうだということがわかる。

 

業者による広告出稿費や関連企業の売上がある

しかし、鋭いネット民たちは、販売業者も広告を出したり、クーポンを発行していると指摘する。独身の日セールには、どの販売業者も大々的に広告を打つ。Tmall内に広告を出せば、当然アリババの収入となる。さらにアリババは宅配企業「菜鳥」、クラウドサービス「アリクラウド」、動画共有サイト「優酷」「Tmall TV」などを傘下に置いている。11月11日前後には、このようなサービスの利用も増え、広告収入も大幅に増えることになる。

 

アリババの営業収入は年末に跳ねる

アリババの四半期レポートから、2015年からの営業収入をプロットしてみると、毎年第4四半期(10月ー12月)には、営業収入が跳ね上がることがわかる。

2018年第4四半期の営業収入は約1172億元で、次の2019年第1四半期の営業収入は935億元と、減少している。これは、当然ながら独身の日セールによる影響だ。一方で、純利益も約51億元減少している。ここから、2018年の独身の日セールの利益貢献率は50億元近くあったと推定できる。つまり、アリババは、独身の日セールによって50億元程度は儲けていたのではないかと推測することができると、ネット民たちは指摘している。

2019年の独身の日セールの売上は、昨年から26%も増えた。ということは、今年の独身の日セールで、60億元(約940億円)程度は儲けたと皮算用することができる。

確かに、ジャック・マーの言う通り、独身の日セール単体では設けていない。しかし、関連事業でしっかりと利益を確保しているようだ。

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▲アリババの近年の営業収入をグラフにすると、第4四半期が必ず跳ねている。純利益も同じで、第4四半期から翌年の第1四半期は50億元ほど減少する。つまり、独身の日セールによって50億程度儲けているではないかとネット民は推定している。