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6万人が整然と規制退場したアリババ年会。その秘密はブレスレット

杭州市オリンピックスポーツセンターで開催されたアリババ年会には6万人が参加をした。この6万人が整然と規制退場したのには、アリババが開発したスマートブレスレットがあったと技術小能手が報じた。

 

巨大施設の悩みは規制退場問題

アリババの20周年記念年会が、2019年9月11日に、浙江省杭州市の杭州オリンピックスポーツセンターで開催された。6万人のアリババ社員、関係者が集まり、ジャック・マー会長の勇退が発表され、また、この日はジャック・マーの誕生日でもあったため、お祝いのイベントが催された。

ところで、話題になっているのが、この6万人の参加者が、どうやって帰ったかだ。大型イベント施設が続々と誕生する中国で、退場の問題が次第にクローズアップされている。我先に帰ろうとするので、ボトルネックになる出入り口付近で渋滞をしてしまい、かえって退場するのに時間がかかるという状況が生まれている。

ブロックごとに退場させる規制退場も行われているが、そのことを理解していない人や、理解していても先に帰りたいという人が多数いて、規制退場がうまく進まない。国家的イベントでは、無数の警官やスタッフが通路に並ぶので、規制退場もスムーズだが、民間のイベントではスタッフにも限りがあり、イベント主催者は苦労をしている。

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杭州市オリンピックスポーツセンター。徒歩圏内に3路線の地下鉄駅があるが、それでもイベント終了後は周辺が混雑をする。大型施設が続々誕生する中国で、規制退場の問題がクローズアップされている。

 

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▲年会では、創業者のジャック・マーがロックバンドのボーカルとなって、曲を披露した。

 

スムースな規制退場が話題になったアリババの年会

アリババの20周年記念年会では、6万人がイベントの最後までいて、しかもスムースに規制退場が進んだ。普通であれば、スポーツセンター周辺や隣接地下鉄駅などは混乱するところが、整然としていたという。いくら参加者がアリババの社員ばかりだからといって、6万人もの人をどうやってスムースに規制退場させたのかと話題になっているのだ。

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▲スマートブレスレットには、心拍センサー、加速度センサー、マイクなども搭載され、観客がどのように盛り上がっているのかというデータも収集された。

 

6万人の参加者に配布されたスマートブレスレット

その秘密は、入場時に全員に配布されたスマートブレスレットにある。102個のLEDが搭載されたこのスマートブレスレットの裏には、QRコードが付けられている。このQRコードをアリペイやタオバオアプリからスキャンをすると、このブレスレットと自分の個人情報が紐づけられる。すると、自分の座席番号が表示をされるので、自分の席を見つけて座る。

イベントが終わると、このブレスレットが一斉に赤色になる。そして、緑色になった人がだけが退場できる。これで規制退場がスムースに進んだ。自分が退場していいのかどうかわからず迷う人は出ないし、まだ退場できないのに勝手に帰ろうとすると人は、ブレスレットが赤く光っているので、目立ってしまい、すぐに発覚をしてしまう。

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▲イベント終了後、規制退場対象者のブレスレットは緑色になる。赤の人は待っていなければならない。各ブロックの担当者が「ブレスレットが、緑色は退場。赤は待機」というパネルで誘導する。抜け駆けをして帰ろうとしても、ブレスレットが赤いのですぐに発覚し、制止されることになる。

 

イベントの演出にも使われるブレスレット

このスマートブレスレットは、18周年記念年会から使われ、徐々に進化をしてきた。単に、LEDが光るだけでなく、心拍数センサー、3軸ジャイロ、3軸加速度センサー、マイクが搭載されている。また、発光はWiFiにより、リモート制御可能になっている。

イベントではこのような機能を活かした使い方も行われた。ジャック・マーの誕生を祝うコーナーでは、全員が腕を掲げて、ブレスレットをステージ側に向けると、大きな人文字で「誕生日おめでとう」の文字が客席から浮かび上がる。

また、環境保全チャレンジのコーナーでは、腕を掲げて左右に振る。動きに合わせて、LEDの色が変色をしていく。全員で腕を振った量を測定して、それが多ければ多いほど、アリババが多くの植樹資金を寄付をするというものだ。

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▲年会の当日は、ジャック・マーの誕生日であったため、スマートブレスレットを使って、「お誕生日おめでとう」の人文字が描かれた。

 

センサーで観客の盛り上がり度を測定

さらに、加速度センサー、マイク、心拍数などのデータから、観客がどのような姿勢(座っていたか立っていたか)、興奮しているか、声を上げているかなどが分析できる。このようなデータは、イベントの各局面ごとに分析され、どのような出し物が好評だったのかを分析し、次回以降の演出に活かしていくという。

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▲スマートブレスレット。イベント中はイルミネーションとしても利用される。

 

会場の通信設備のハードルは高い

技術的に注目されたのは、ブレスレットよりも、会場に設置された通信設備だ。6万個ものIoT機器とリアルタイム通信をしなければならない。ブレスレットのデータは、3秒に1度、クラウドサーバーに送られる。上方向の通信には、冗長性を排除したUDP(ユーザーデータプロトコル、信頼性は劣るがシンプルなプロトコル)を使うなどの工夫はしているが、アンテナの配備、サーバーの準備など、技術的な課題はかなりハードルが高い。アリクラウドでは、この技術開発にかなりの時間を割いて、実現したという。

ネットでは、このシステムを販売して、他のイベントでも使えるようにしてほしいという声があがっている。