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ドローン配送に営業許可。無人カートとドローンによる自動配送時代始まる

中国で、区域を限定して試みられていたドローンによる飲食の出前配送が正式に許可された。営業許可を得たアントワークは、無人カートとドローンを組み合わせた自動配送ネットワークの構築を始めると物流信息化が報じた。

 

アントワークのドローンが正式に営業許可取得

中国民用航空局は、迅蟻(アントワーク)傘下の杭州送吧物流科技に対して、「特定類無人機試験運行批准書」と「無人機物流配送経営許可」を交付した。これにより、アントワークのドローンが、本格的に物流配送を行えることになる。

アントワークはすでに2万回以上のドローン配送の実績を持っている。当初は、中国郵政や、宅配企業の菜鳥、蘇寧、中通などと協働して、交通の不便な山地や農村などの物流配送の試験運行を行っていた。しかし、2017年から、場所を農村から都市に変えて、杭州市の西郊外に開発されたスタートアップパーク「夢想小鎮」内で、スターバックスのコーヒーやケンタッキーの食べ物を近隣にドローン配送するという試験運行を行っていた。

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杭州市夢想小鎮で行われている試験運行。スターバックスやケンタッキーの商品を配送している。

 

杭州市には5カ所のドローン発着場が配備済み

アントワークは、杭州市にすでに5つのドローン発着場の整備が終わり、ピーク時には同時に8台のドローンが飛行して、飲食物の配送を行っている。あくまでも特定地域に限定した「試験営業」だったが、民用航空局から正式な営業許可を得たことで、大々的に展開ができることになる。アントワークでは、3年から5年のスパンで、中国100都市に展開をすることを計画している。

すでにアリペイやWeChatペイのミニプログラム「送吧空運」を利用すると、ケンタッキーの飲食品を注文することができ、配送エリアであれば、ドローン配送してくれるようになっている。配送料は現在無料になっている。

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▲アントワークのドローン発着基地。すでに杭州市には5カ所配備され、8台のドローンがファストフードの商品を配送している。

 

ドローンではなく、末端物流配送の課題を解決することが目的

アントワークがユニークなのは「私たちはドローンの企業ではない」と言っていることだ。末端物流配送の課題を解決する会社で、ドローンというツールが優れているので採用しているという考え方だ。

そのため、ドローンだけですべての配送を行おうとは考えていない。ドローンは、どれだけ安全性を確保しても、墜落して地上の建築物に損害を与える、最悪の場合は人的被害を与えるというリスクが拭いきれない。アントワークは、このリスクを克服するまでに苦労をしている。

夢想小鎮でも、ドローン配送のルーツは、極力運河上空を飛行するように設定している。万が一墜落をしても、人的な被害を与えないためだ。

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▲中国ではドローン配送が激しい競争になっている。その中で、アントワークがいち早く正式営業を始めることになった。「5Gロボット運力ネットワーク白書」(中国移動、アントワーク)より引用。

 

アントワークが構想する全自動配送ネットワーク

アントワークが構想しているのは、ADNET(Autonomous Delivery Network、全自動リアルタイム配送ネットワーク)の構築だ。これは無人カートとドローンを組み合わせる配送ネットワークだ。

これにより、5km圏内を10分配送、30km圏内を45分配送を実現する。アントワークの試算によると、5km配送1回の配送コストは7.59元であり、2021年には量産化などにより3.33元まで下げられるという。

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▲アントワークが描くADNET(自動配送ネットワーク)。無人カートとドローンを組み合わせて、人の介在をゼロにする自動配送ネットワークを構築していく。

 

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▲アントワークでは、無人カートとドローンを組み合わせて、自動化配送ネットワークを構築することを目指している。ドローン発着基地には、無人カートが格納されていて、荷物の受け渡しも自動で行われる。

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無人カート・ドローン・無人カート」による自動配送

ADNETでは、消費者が商店に注文をすると、商店は商品を無人カートに乗せる。この無人カートは最寄りのドローン発着場に行き、発着場で自動的にドローンに商品を積み替える。ドローンは、消費者の最寄りの発着場まで運搬し、そこからは再び無人カートで配送するというものだ。

アントワークは、ドローン配送で有名になった企業だが、末端物流のすべてをドローンで行うというのではなく、安全性や効率を考えて、さまざまなリソースを組み合わせて無人配送を実現することを目指している。この現実的な戦略が、各方面から注目を浴びている。

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