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広州地下鉄が顔認証改札を導入。長い処理時間を解消する工夫とは

広州地下鉄に顔認証改札が導入された。しかし、顔認証改札は処理時間が2秒もかかる。そこで、地下鉄で行われている保安検査と改札を合体させた。保安検査+改札の合計時間は以前よりも短くなると新浪科技が報じた。

 

広州地下鉄に顔認証改札が導入

広東省広州市の地下鉄3号線の広州タワー駅、21号線の天河智慧城駅に、顔認証改札が導入された。事前に専用アプリに顔を登録しておくことで、スマートフォンや交通カードを出すことなく、改札を通れることになる。

他の駅には顔認証改札が導入されていないが、他駅で降りる場合は、専用アプリを使って、QRコードNFCなどを使ったスマホ決済で改札を出ることになる。

この顔認証自動改札は、他の駅にも順次導入されていくため、近い将来、地下鉄に乗るのに、スマホや交通カードも必要なくなる。

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広州地下鉄に導入された顔認証改札装置。処理時間は2秒とされていて、従来のチケット、交通カード、QR乗車コードよりも長くなる。

 

認証に2秒かかる顔認証改札で、滞留させない工夫

顔認証改札は、スマホや交通カードが不要になるという利便性の高いものだが、ひとつ大きな問題は、顔認証に約2秒という長い時間がかかることだ。実際の改札での2秒は長い。

そこで、4月に顔認証改札が導入された山東省済南市では、顔認証改札の手前の床にガイドペイントをし、乗客がほぼまっすぐ改札に歩くように工夫をした。乗客が顔認証改札に近づき始めた時点でスポット光を照射し、顔認証を始める。このため、改札に到達した時には、ほぼ顔認証が終わっている。済南地下鉄では、改札の通過に必要な時間は0.5秒程度と説明しているが、実際に使っている映像を見る限り、立ち止まることなく、歩いて通過できている感覚だ。

しかし、ラッシュ時に行列ができた場合などは、処理時間が伸びてしまうなどの問題が残されている。

 

顔認証改札は、処理能力を上げることが目的ではない

済南地下鉄では、顔認証改札の1分あたりの通過人数は、30名から40名としている。日本のSuica自動改札の設置基準は、1分あたり45名で、ラッシュ時には実質的に50名を超える人が通過している。

つまり、顔認証改札は、混雑をする駅で処理能力を上げるためではなく、むしろ乗降客の少ない駅で、乗客の利便性を上げ、駅員の負担を減らす目的で導入されている。特に交通カードが使われなくなれば、チャージ機などを減らすことができ、トラブル時の対応スタッフも減らすことができる。

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▲済南地下鉄では、床にガイドラインを表示し、乗客が改札に対して自然にまっすぐアプローチする工夫をしている。2mほど手前の時点で、スポット光の照射を行い、乗客が改札に到達した時点で、認証処理がほぼ終わっている。

 

中国の地下鉄で混雑をするのは保安検査

では、広州市地下鉄は、何を目的として顔認証改札を導入していくのだろうか。目的は乗客の利便性と安全の確保だという。

中国の地下鉄は、大部分の都市で、改札に入る前に保安検査を受ける必要がある。その厳しさは、都市によって異なり、また時期によっても異なる(大きなイベントがあると厳しくなる)が、一般的には、手に持っているバッグを、空港などでも使われているX線装置に通す。また、自分も金属探知機のあるゲートを通る、あるいはスタッフが金属探知機で体をスキャンするということもある。

そのため、ラッシュ時にはこの安全検査が混雑をする。安全検査が終わってから改札に向かうことになるので、改札が混雑をするということはあまりない。そのため、日本のように改札通過時間を極限まで短くしていく必要は強くはないのだ(ただし、出る時の改札は混雑をし、渋滞が起きる)。

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▲保安検査と改札を同時に行うことで、改札+保安検査の合計時間は短くなる。また、顔認証改札であれば、身分も把握できることになり、安全性にも寄与できる。

 

保安検査と改札をまとめることで、利便性を向上

広州地下鉄は、この保安検査と顔認証改札を融合して、ひとつにまとめる試みを行なっている。乗客は、荷物をまずX線装置に置き、隣の顔認証改札を通る。この時に、同時に金属探知ゲートも通過をし、ポケットにも危険物がないことを確認する。改札を通ったら、X線装置から荷物を受け取って、駅構内に入るという手順だ。

改札の通過時間だけを見たら、決して短縮はされていないが、保安検査と改札通過の合計時間を考えると、かなり短くなる。顔認証をするということは、当局側は実名を含めた乗客の身分を知ることができ、安全性も向上する。

広州地下鉄は、顔認証改札を、乗客の利便性と安全確保を両立させる工夫をしている。