中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アリババ独身の日セール「2684億元」は捏造数字か。ネットで騒ぎに

今年で11年目となるアリババの11月11日の独身の日セールは、1日での売上が2684億元(約4.17兆円)という驚異的な成績をあげた。しかし、ネットでこの数字が捏造ではないかという疑いが起きている。なぜなら、4月の段階で、2689億元という予測を出し、ほぼ的中させていたネット民がいるからだ。アリババのECサイト「Tmall」も否定のコメントを出すなど騒ぎになっているとシリコンバレー分析獅が報じた。

 

半年前にセール売上高を予測し、的中させていた

問題となったのは、尹立慶という名前のネット民で、2019年4月24日に「タオバオ2009年から2018年の独身の日セールデータの捏造」という名称で、SNS「ウェイボー」に発表された文章。

このときはさほど注目されていなかったが、尹立慶はこの中で、2019年の独身の日セールの1日での売上額を2676.37億元または2689.00億元と予測をし、11月11日の独身の日セールでの売上額が、2684億元と的中したことから、にわかに注目をされ、大きな騒ぎとなった。現在、元の発言は削除されてしまっている。

f:id:tamakino:20191113103707j:plain

▲2019年の独身の日セール1日での売上は2684億元(約4.17兆円)という驚異的な数字。しかし、この数字を半年前に予測していた人がいた。

 

過去の売上高から回帰式を計算。あまりにきれいにすぎる適合率

この尹立慶というネット民は、以前からさまざまなセールスデータの分析を行い、洞察や予測を発表している人物。

そのひとつとして、過去10年の独身の日セールの当日1日分の売上額を分析し、2019年の売上予測をしようとした。手法はごく一般的なもので、過去の売上額をプロットして、回帰式を計算しただけのことだ。

しかし、多項式曲線で近似をすると、平均の適合率が99.94%を超えてしまった。つまり、あまりにもきれいに近似できてしまい、人工的すぎると感じたのだ。

ここから、二次多項式曲線で予測した2019年の売上を2676.37億元、三次多項式で予測した売上を2689.00億元と発表し、11月11日になってみると、ほぼ予測通りの売上になった。

ここから、11月11日にリアルタイムで表示される「現在の売上額」は、リアルなものではなく、捏造された数字なのではないかとネットで騒ぎになった。

f:id:tamakino:20191113103711j:plain

▲半年前は話題にならなかったが、予測が的中したことで、4月24日に発信された尹立慶の発言がにわかに注目を浴びている。

 

f:id:tamakino:20191113103704p:plain

▲過去の独身の日セールの1日での売上高。これをプロットしていくと、きわめてきれいに近似ができることは確かだ。

 

アリババは反論。そもそも捏造する必要がない

捏造数字だと指摘されたアリババ「Tmall」はすぐに反応して、ネットのデマに過ぎないと否定をしている。リアルタイム表示される売上額の数字は、世界中のメディアが見ているもので、捏造の入り込む余地がないというもの。また、そもそもTmallは数字を捏造する必要がないということを訴えている。さらに、このようなデマに対して法的な手段を取る手続きに入っているともしている。さまざまなデータから予測をするのは自由だが、このような企業を侮辱するような予測はされないことを希望すると述べている。

 

問題になった文章中の「ジャック・マーは詐欺師」

Tmallは、このコメントの中で、問題の尹立慶の過去の発言を引用して、デマであることを訴えている。しかし、これがまたネット民をざわつかせることにになった。

過去の発言とは2015年のもので、同じ手法で、アマゾン中国の過去の売上データから2014年のアマゾン中国の売上高を177.49億元または195.30億元と予測をし、実際の売上額177.87億元をほぼ的中させた。

この時の文章と、今回の文章がほぼ同じフォーマットで、アマゾンをTmall、ジェフ・ベゾスをジャック・マーに置き換えたことを除けば、90%文章が一致をするというのだ。

しかし、アマゾンの売上高も、独身の日セールの売上高も的中させているのは事実。問題は、売上高は捏造であり、「ベゾス/ジャック・マーは、詐欺師で、世界の人々を10年も騙し続けてきた」と書かれた部分。

f:id:tamakino:20191113103718p:plain

▲尹立慶の発言。着眼点は面白いのに、「ジャック・マーは詐欺師であり、世界の人を10年も騙してきた」と語っているところが、アリババの反発を招いた。

 

経済メディアはデータテクノロジーの精度があがっていると解説

ネットでは、せっかく着眼点がよく、面白い文章なのに、企業トップを詐欺師呼ばわりしていることが残念だという声が多い。

また、経済メディアなども多くは、売上高数字が捏造である可能性は極めて低いが、回帰多項式にきれいにハマるのは紛れもない事実で、売上がコントロールされていると解説している。

もはや11月11日の独身の日セールは、消費者の消費意欲が高まって買い物をする日ではなくなっている。過去の購入データに基づいて、適切なクーポンを配信をするため、消費者は「欲しい」というよりも、「他の日に買うよりもずっと得になるから」という理由で買うことが多くなっている。いわゆる日本で言う「駆け込み需要」を1日に集中させるセールのような具合になっている。

そのため、各カテゴリーで、売上目標を設定し、そこから逆算して、過去のデータを分析し、クーポン戦略が練られていく。捏造ではないものの、需要予測がきわめて正確にでき、かつクーポン配信で精密に消費行動をコントロールできるようになっていると解説している。

アリババは、それだけ、精密なデータ分析ができるようになっているということなのだ。アリババのダニエル・チャンCEOは、各所でこう述べている。「アリババはもはやIT企業ではない。データテクノロジー企業なのだ」と。

f:id:tamakino:20191113103658p:plain

▲過去の1日での売上高をプロットし、多項式曲線で近似してみると、確かに気持ち悪いほど近似される。あまりにきれいすぎて、目を疑うことは確かだ。