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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

インドでユーチューバーが急増。トップクラスの収入は平均の30倍

インドでショートムービー「Vmate」の発信者が急増している。Vmateの開発元である中国UCWEBが養成担当の女性を派遣し、インド各地でセミナーを開催しているからだ。収入面だけでなく、地位の低かった女性を中心にインド社会をも変えつつあると橋報網が報じた。

 

インドにも登場した稼げるユーチューバー

インドでTik Tok型のショートムービーが流行し始めている。その多くは、中国の網紅(ワンホン)と同じで、ムービー内で紹介した商品のアフィリエイト収入、ムービーに対する投げ銭収入の2つを柱にしている。インドでの1月の平均収入は6000ルピー(約9000円)程度だが、トップクラスの網紅は20万ルピー(約30万円)になるという。

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▲インドの女性たちが発信しているVmateのショートムービー。特に女性の発信が多い。

 

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▲個人商店も発信を始めている。この布地屋は、商品を紹介するムービーを発信し、商売にもいい影響を与えている。

 

インドで網紅を養成する中国女性「高晨」

インドでなぜ急に網紅が登場してきたのか。その背後には、アリババ系のUCWEBの努力がある。UCWEBは、スマートフォン用のUCブラウザーを開発した企業。Android標準のChromeよりも軽快に動くことから、中国を中心としたアジア圏で使われている。そのUCWEBが開発をしたのが、Tik Tok型のショートムービー共有アプリ「Vmate」だった。

UCWEBは、このVmateを普及させるため、大市場であるインドに女性エバンジェリストを送り込んだ。それが高晨(ガオ・チェン)だ。湖北省出身の高晨は、UCWEB社内でVmateチームの「網紅養成係」に任命され、2018年5月にインドに渡り、1年のうち、200日から300日はインドで仕事をしている。約1年の活動で、これまで4000名の網紅を発掘し、育成してきた。

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▲高晨とインドの子どもたち。インドで年間300日活動し、ショートムービーを広め、網紅を養成している。

 

インド各地を巡回し、ショートムービーセミナーを開催

彼女たちのチームは、数名の中国人と30名以上のインド人からなる規模の大きなものだ。数チームに分かれて、インドの都市、農村を巡回し、そこで、ショートムービーセミナーを開催する。どのような題材にしたらいいか、どのような服装にすればいいのか、どうやって撮影すれば見栄えがよくなるのかを教えていく。

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▲高晨のチームが開催しているショートムービーセミナー。網紅として成功すると、高収入が得られるということから、セミナーには多くの人が集まる。

 

網紅の養成は、インド社会にとっても意義のある仕事

高晨によると、インドでショートムービーを普及させる仕事は、インド社会にとっても意義のあることだという。インドは、社会階級と男尊女卑の観念が強く、女性の地位は低い。しかし、家庭の主婦がショートムービーを発信することで、自分の口から意見を言い、しかも自分の手による経済的な報酬も得られ、女性の地位を向上させることに大きく寄与しているという。

コマル・シンは、インドの東北部のありふれた若い主婦だった。友人から教えられてVmateにハマり、自分でもダンスの映像を発信するようになった。しかし、そのダンス映像は部屋の中で、壁を背にしたものばかりだった。高晨がコマルのムービーに注目をして、会った時に部屋の中で撮影する理由を聞くと、本名や住んでいる場所が特定されることを漠然と恐れていた。

高晨は屋外でも場所が特定されない撮影方法を教えた。コマルはそれに従って、村の中や近所の美しい風景、面白い風景の中でダンスをするようになった。これが若い主婦層に受け、すでに190万人のファンを獲得している。収入も夫を超えてしまい、コマルは撮影に忙しくなってしまったので、今では夫が家事を担当しているという。

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▲高晨は、特にインドの女性たちに共感し、ショートムービーで発信することで、インドの女性たちの意識を変え、インド社会を変えられると信じている。

 

インドの社会交流を変えるかもしれないショートムービー

高晨は言う。インドの女性たちは、近所の人としか交流がない。それがショートムービーを共有することで、まったく別の場所にいて、まったく異なる考え方をする人と交流することができるようになった。

中国の社会がSNSやショートムービーによって変わっていったように、インドもSNSとショートムービーが社会を変えていくことになる。そう高晨は信じて、今日もインドの各地を巡回している。