中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

郵便配達は無人カートで。仙桃市で、郵便配達の営業運用が始まる

中国郵政が、湖北省仙桃市で郵便の配達を無人カートで行っている。現在は、官公庁など、郵便量の多い配達先を巡回する固定路線を走っているが、その間は公道を走行する。問題点を洗い出し、次第に他の配送先、他都市に展開していく予定だと人民網湖北が報じた。

 

5年以内に宅配の無人化が始まる

中国で、郵便、小包の無人配送車の運用が始まっている。中国では、宅配を絡めた消費者向けサービスが拡大している。通常のECに加えて、野菜や肉を宅配してくれる新小売スーパー、生鮮EC。さらに、料理を届けてくれるフードデリバリー外売。外売は料理だけでなく、薬品、コンビニ商品など扱い品目を拡大している。今まで、自分で足を運んで、商品を買ったり、食事に行ったりしなければならなかったものが、自宅に届けてもらえるようになり、このような新しいライフスタイルは「ものぐさ消費」とか「ものぐさ経済」とまで呼ばれるようになっている。

このようなものぐさ経済でネックとなるのが、宅配だ。宅配業務は人がやらなければならず、年々人件費が高騰して、ものぐさ経済関連企業の経営を圧迫している。しかし、それでもこの分野には新規参入が相次いでいる。それは多くの専門家が、中国は5年以内に無人配送時代が始まると見ているからだ。

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▲外売企業「ウーラマ」の配達の様子。現在は人が配送しているが、5年以内に無人配送へと切り替わっていくと見られている。

 

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▲中国郵政が開発した無人配送カート。時速は15kmで、200kgの郵便物と、30個の小包を配達できる。

 

無人配送にいちばん乗りになったのは中国郵政

すでに無人配送は始まっている。新石器科技などを始めとする複数の企業が、無人配送車の量産を始めていて、大学や企業のキャンパス内、マンションの敷地内などでの配送に使われるようになっている。走る宅配ボックスの感覚だ。問題は、この無人配送車が、いつ公道を走るようになり、集積ステーションと自宅を直接無人配送車で繋ぐかだった。企業間で、荷物を運搬するのに無人配送車が使われている例はあるが、あくまでも固定路線を走り、試験運用という建前だった。

本格的に無人配送時代に進むには、「公道を」「非固定路線を」「営業運行」することが大きなステップになる。

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▲試験走行中の無人配送カート。10日間の試験運用では問題が出なかったため、現在は営業運用になっている。

 

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▲出動する無人カート。配達が終わると、自分で駐車場まで戻ってくる。

 

地方都市で始まった無人配送の営業運用

そこに最初に手をつけたのは、中国郵政(中国の郵便事業を行う国営企業)だった。2019年9月2日から、湖北省仙桃市で、10日間の試験運用が始まり、大きな問題がなかったため、そのまま営業運用に入った。

この中国郵政が開発した無人配送車は、全長2m、幅0.8m、高さ1.5m。最高速度は時速15km。200kgの郵便と、30個の小包を一度に運搬することができる。人や障害物を自動判別し、停止または回避し、交通信号も認識し、交通ルールを遵守して走行する。防水構造になっているので、雨の日も配送ができる。配送先は限定されているが、すべての配送先に郵便物があるわけではないので、最適な配送ルートを自分で考えて走行する。

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▲郵便物をセットする中国郵政職員。配送準備、受け取りなどすべてはスマホアプリから行う。

 

受取人は路上でQRコード認証で開錠

受取人に対しては、到着10分前に合成音声による電話をかけ、同時に受け取り番号を記載したショートメッセージを送る。受取人は、路上で無人配送車を待ち、到着したら、無人配送車に描かれているQRコードスマホで読み取り、受け取り番号を入力すると、自分の郵便が入っているドアが開く。

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▲受取人には事前にスマホに合成音声による電話とSMSが送られてくる。受け取る時はQRコードをスキャンし、SMSで送られてきた受取番号を入力すると、自分の郵便物が入ったドアが開錠する。

 

「公道を」「非固定路線で」「営業運行」する無人カート

自宅のポストに入れてくれるわけではなく、路上で待っていなければならないなど、利便性の点ではまだまだ改善の余地があるが、現在は仙桃市政府を中心とした行政施設への郵便配送を主体に運用されている。このような施設は、郵便物の量も多く、郵便物に対応するスタッフが常駐しているからだ。

この営業運用の結果を見て、次第に企業や個人にも配送範囲を広げていく予定だ。また、仙桃市での運用状況を見て、他の都市にも広げていく。拡大がどのぐらいのペースで進むのかはまだ不明だが、初めて「公道を」「非固定路線を」「営業運行」

する無人配送車が登場したことは大きい。民間企業も、これに刺激を受けて、無人配送の運行競争が始まっていく可能性がある。