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文字を脳から直接入力する脳波タイピング。1文字あたり0.413秒の世界新記録

北京で開催された世界ロボット大会で、脳波を使って文字を入力する速さを競うコンテンストが開催された。優勝したのは、天津大学の大学院生で、1文字あたりの入力に0.413秒しかかからないという世界新記録を樹立したと新京報が報じた。

 

脳波入力のコンテストの記録は1文字あたり0.413秒

中国北京市では、2015年から世界ロボット大会が開催されている。中国科学技術協会、工信部、北京市政府などが主催をするもので、今年2019年で第5回目の開催となる。2019世界ロボット大会は、北京市大興区にある亦創国際会展センターで行われた。

このE館では、脳から直接文字入力をするコンテンストが開催され、天津大学の学生、魏斯文が、毎分691.55ビットの成績で優勝をした。これは英文を入力した場合、1文字あたり0.413秒に換算できるという。

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▲コンテストで優勝してインタビューを受ける魏斯文さん。天津大学の大学院生で、今回1文字あたり0.413秒という記録を出した。

 

タイピング入力よりも速い脳波入力

このコンテンストには、3名の選手が出場し、45種類の文字と記号を脳波を使って入力するというトライを4回ずつ繰り返した。3名による4回ずつのトライ、合計12回の中で、最も好成績を挙げたのが、天津大学神経工学の修士2年生の魏斯文だった。毎分691.55ビットというもので、2位の成績は他の選手による451.99ビットというものだった。

この毎分691.55ビットは、英文字入力に換算すると1文字あたり0.413秒になる。一般的に英文は1分100文字が「速いタイピング」の目安になっている。これは1文字あたり0.6秒になるので、手でタイピングするよりも速く、脳波タイピングができたことになる。

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▲世界ロボット大会で開催された脳波タイピングコンテストのスコアボード。出場選手は3人だけだったが、それでも手による入力を上回るタイピング速度の記録が出た。

 

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▲出場した3選手。2位、3位は、手入力よりも遅い速度しか記録することができなかった。

 

文字ごとに異なる明滅周期と脳波をシンクロさせる

入力方法は、頭皮に直接触れる電極をつけ、目の前の文字パネルを見る。この文字パネルの各文字は、すべての文字が異なる周期で明滅をしている。ここで、選手は入力したい文字に意識を集中させる。その文字の明滅周期と脳波の周期が一致した時に、その文字が入力されたということになる。

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▲入力時の様子。パネル上の文字はそれぞれ異なる周期で明滅している。選手が入力したい文字に意識を集中させると、脳波がその文字の明滅周期にシンクロをする。これで文字が入力できる。

 

本選は2000名が参加、40名が決勝に進出

ただし、この脳波タイピングは誰にでもできるというものではないようだ。脳波タイピングのシステムを開発した精華大学医学院西部医学工学の高小榕教授によると、脳波タイピングコンテストはすでに3回目の開催となるという。今回もすでにコンテストが開催されていて、2000名余りが参加をし、40名が決勝に進んだ。

今回の世界ロボット大会に出場した3人は、いずれも決勝進出者で、今回は世界記録を出すためのコンテストだったという。

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▲同じ会場で、電動車椅子を脳波でコントロールするシステムの展示も行われ、多くの人が体験をした。

 

入力速度よりも創造力トレーニングや医療への応用

専門家によると、手よりも速くタイピングすること自体に大きな意味はないが、この仕組みは人の注意力、創造力、記憶力などを鍛えることに応用ができるとしている。また、医療関係者はALSなどの難病患者とのコミュニケーションを取る方法として期待ができるという。

このようなコンテンストは、現在のところ、世界ロボット大会のみで行われているため、1文字あたり0.413秒という成績が、現在のところ、世界新記録ということになる。