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あまりにも売れなさすぎる!サムスンの中国市場撤退の日も近い

中国でサムスンスマートフォンが売れない。売れていないどころか、あまりの売れていないっぷりがネットでの話題になるほどだ。サムスンは、中国市場での販売方法やプロモーションなどを積極的に改善せず、すでに中国市場を放棄しているのではないかと老徐敲機が報じた。

 

中国であまりにも売れないサムスンスマホ

中国市場でのサムスンの存在感がほとんど消えかかっている。サムスンは今年2019年7月に全世界で、新型スマートフォンGlaxy S10+、Galaxy S10、Galaxy A30を発売したが、このうちのA30の中国でのネット予約がふるわない。ふるわないどころか、売れないにもほどがあると話題になっている。

中国の大手ECサイト「京東商城」のサムスン店では、A30の予約が366台。アリババのTmallのサムスン旗艦店では340台。蘇寧易購では10台と、スマートフォンの予約数としては桁数が2つも3つも小さい。売れ行きが悪いといったレベルではなく、まったく売れていないといってもいい状況だ。

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▲Tmallでの予約数はわずか340件。

 

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▲京東での予約数は336件。

 

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▲蘇寧易購での予約数は、なんと10件だった。

 

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▲ネットで拡散しているあるECサイトの画像では、予約数が0件になっている。

 

嫌韓感情の影響は小さい

なぜサムスンスマホがここまで売れないのか。2016年7月、韓国は朝鮮半島有事に備えて、THAADミサイル(弾道弾迎撃ミサイル)の配備を行なった。これに対して、脅威となる中国とロシアは激しく非難。中国メディアの環球時報は「韓国の保守主義者はキムチばかり食べて頭がおかしくなったのか」という差別的とも言える異例の表現をした。中国政府も韓国からの輸入規制、韓国企業の営業阻止など厳しい報復措置を行い、特にロッテのお菓子は検疫時に廃棄処分にされたり、中国人の間でもロッテマートに対する不買運動が行われたりした。

だからと言って、中国人が嫌韓だったり、韓国製品を嫌っているわけではない。多くの人が「韓国という国はあまり好きではない」とは言うものの、積極的に韓国を嫌っている人は少数派のようだ。ましてや、だからサムスンスマホは買わないという人はごく少数であると思われる。

 

サムスンの中国市場でのシェアは1%

サムスンは、グローバル市場では今でもトップを独走している。ところが中国市場では、サムスンのシェアはもはや1%にしかすぎない。存在しないも同然になってきている。中国人に尋ねてみると、多くの人が「そう言えば、最近サムスンスマホ使っている人を見なくなった。昔は人気あったのにね」という答えが判で押したように返ってくる。サムスンを嫌うというよりも、視野に入っていない感じなのだ。

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▲中国市場でのスマートフォンシェア。ファーウェイ、vivoOPPOといった国産メーカーが上位に並び、サムスンのシェアは1%。アップルも苦戦をしている。Counterpointの速報より作成。

 

サムスンのライバルはアップルではなく、中国メーカーだった

サムスンは、世界市場ではともかく、中国市場ではポジション取りに失敗をしている。iPhoneが中国や日本で人気になっている時期、サムスンは「iPhoneと引けを取らない」高級機種であるという触れ込みで、プロモーションを行っていた。iPhoneと肩を並べるスマホであるということを印象付けたかったのだろう。

しかし、ハードウェア面はともかく、UI/UXといった使いやすさの点ではiPhoneの優位性を崩すことができなかった。そうしている間に、ファーウェイがサムスン並み、あるいはそれ以上に性能を上げてきた。サムスンのエントリーモデルもvivoOPPOと比べて、性能価格比の点で同一か、負けている状況となった。

サムスンは、中国市場においては、ライバルはアップルではなく、中国メーカーだったのだ。中国のスマホユーザーたちは、新機種を考えるとき、価格性能比などを考えていくと、自然に中国メーカーになってしまい、サムスンは選択肢に入ってこなくなった。これが最も大きな理由だ。


Samsung makes Fun of Apple#5(You will hate Apple after seeing this)

サムスンは、iPhoneとの比較広告を盛んに行なっていた。映像としては面白いものの、サムスンの真のライバルは中国メーカーだった。

 

中国、日本よりも欧州、インドに力を入れるサムスン

しかも、サムスンも中国市場と日本市場には力を入れていないように見える。iPhoneが比較的弱い欧州市場や、廉価版がよく売れるインド、東南アジア市場に力を入れているようだ。

この予約数が少なすぎるという惨憺たるありさまが生まれたのには、理由が2つある。ひとつはA30というGalaxyのエントリーモデルであること。S10などのハイスペック機であればともかく、性能を落としたエントリーモデルは、ファーウェイ、vivoOPPOなどに対する競争力はゼロに等しい。誰もが同じ性能か、やや上回る性能の中国スマホを選ぶ。

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▲世界市場でのスマートフォンシェア。サムスンが1位であることは変わりないが、ファーウェイがアップルを制して2位に上がってきている。アップルは新機種が発売される第3四半期に1位または2位に上がるが、平常時は第3位のメーカーになっている。Counterpointの速報より作成。

 

予約料金が必要な販売方法が打撃に

もうひとつは販売方法だ。予約をするには100元(約1500円)を即時支払う必要があるという予約金制度をサムスンは中国市場で行なっている。発売後に決済をするときは、その予約金が繰り入れらるので、最終的に負担は0元であるとはいうものの、煩わしさを感じる。予約をキャンセルした場合は、2週間程度で返金してもらえるというものの、その手続きなどを考えるとやはり煩わしい。

このため、サムスンスマホを買う人の多くが、ECサイトを使わずに、店舗で直接購入するようになっている。そのため、今回のECサイトの予約数が惨憺たるものになった。しかし、都市部の若者の多くは、スマートフォンECサイトで買うことが当たり前になっている。その結果、中国市場でのサムスンのシェアは1%にまで落ち込んでしまった。多くの統計で、「その他」に繰り入れられる日も遠くないと思われる。

すでにサムスンは、中国での製造工場の閉鎖を決め、スマホ生産では中国からの撤退を決めている。中国向けスマホを生産していた拠点であり、今後は他国で生産したスマホを中国で販売することになるが、販売からも撤退する日のカウントダウンが始まっていると見られている。一時期は、中国で大人気だったサムスンも、あっという間に落日を迎える。中国市場の厳しさを感じざるを得ない。