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台湾のスマホ決済が大幅に進展。30歳前後の年齢階級では75.5%が利用経験あり

台湾の資策会産業情報研究所(MIC)は、台湾のスマホ決済に関する調査結果を、自社のMICフォーラムで公表した。これによると、2019年上半期のスマホ決済利用者は、26歳から35歳で75.5%にのぼることが明らかになった。

 

若い世代では75.5%がスマホ決済利用経験あり

台湾台北市の資策会産業情報研究所(MIC)は、自社が開催する第31回MICフォーラムで、台湾のスマートフォン決済に関する調査結果を公表した。2019年4月に、有効回答数534件の無作為抽出アンケート調査に基づくもの。過去3ヶ月以内にスマホ決済を使用した人を「スマホ決済ユーザー」として定義をしている。

これによると、スマホ決済の認知率は96.6%になり、誰もがスマホ決済を知っているという状態になった。

使用経験割合は、各年齢階級ともに2018年上半期から増加をしているが、その中でも26歳から35歳の階級の伸びが著しく、この世代では75.5%の人がスマホ決済の使用経験がある。

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▲資策会産業情報研究所が主催するMICフォーラム。アナリストの発表によると、25歳から35歳のスマホ決済利用率が急速に上昇しているという。理由は、利用可能な店舗が増えたことと、還元などの優待キャンペーンだ。

 

日本とキャッシュレス状況がよく似ている台湾

台湾のキャッシュレス決済事情は、日本と状況がよく似ている。2015年の段階で、キャッシュレス決済比率は26%と日本をわずかに上回っている程度。台湾政府は2020年までに52%、2025年までに90%に引き上げる政策を進めている。

キャッシュレス決済の中心になっているのはクレジットカードである点も日本と同じ。さらに少額決済では、日本のSuicaと同じような交通カード「悠遊カード」での街中決済も進み始めている。これも日本とよく似ている。

一方で、台湾は観光立国であり、海外の決済システムの導入も観光地を中心に進んでいる。Apple Pay、Google Pay、Samsung Payなどだ。また、日本のLINE Payは観光客用という感覚を超えて、地元の台湾市民も使い始めている。さらに、中国のアリペイ、WeChatペイに対応している店舗も増えている。

さらにスーパー、コンビニなどが消費者の囲い込みを目的として、独自のキャッシュレス決済を採用している点も日本とよく似ていて、このような業者は低コストでキャッシュレス決済を実現できるQRコードを利用している。このような企業系のスマホ決済は、優待クーポンやポイント還元などを積極的に行なっている。

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▲台湾のスマホ決済も乱立をしている。消費者は優待キャンペーンなどによって、次々と新しい決済手段を試している段階。それにより、スマホ決済利用率が上がってきている。

 

キャッシュレス決済と電子レシートをセットにして推進

スマホ決済の種類は主だったものを数えても20種類以上はあり、乱立状態になっている点も日本と同じだ。

ただし、日本と違う点が2つある。ひとつは、政府が主導した「台湾Pay」があることだ。ほとんどの銀行が参加したQRコード決済だが、クレジットカード、デビットカードの発行も可能で、将来はNFC決済にも対応する予定。要は、政府と銀行が主導した標準のキャッシュレス決済になる。このような政府主導のサービスの場合、加盟店が広がらない、優待が貧弱などの問題が起こりそうだが、今のところ加盟店も増え、優待も多いことから、利用者は順調に増えているという。

もうひとつは電子レシートの政策を進めている点だ。キャッシュレス決済をした場合は、原則電子レシートにし、消費者は自動的に家計簿などが作成でき、税務申告や企業への経費精算などでも使えるようになる。政府としては、市民や企業の税務関連の負担を減らし、同時に税金を公平にしっかりと徴収できる仕組みを構築中だ。

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台北市で最も有名な小籠包の名店「鼎泰豊」(ディンタイフォン)。秘伝の薄皮小籠包は、他の店では真似ができない技術。このような気軽に美味しいものが食べられる飲食店の多くが「現金オンリー」であることが多い。ショッピングモールに入っている店舗、飲食店はほぼキャッシュレスに対応している。

 

クレジットカードが主流のものの、QRコードNFCも伸びてきている

クレジットカード、スマホ決済のいずれを積極的に利用するかという質問では、クレジットカードが1位だったが、スマホ決済と答えた消費者も27.2%に達している。

スマホ決済でよく使われる方式の上位5位は「LINE Pay」「街口」「Apple Pay」「Google Pay」「台湾Pay」になった。

台湾のスマホユーザーのうち、NFC対応機種を使っている人は7割程度で、現状ではQRコード決済を使う人が多い(LINE Pay、街口、台湾Pay)。QRコード決済を使う人は87.5%だが、NFC決済(Apple Pay、Google Pay)を使う人は60.2%だった。また、クレジットカードは73.4%。デビットカード電子マネーは53.3%だった(複数回答あり)。

3ヶ月以内に11回以上スマホ決済を利用した「積極的ユーザー」の割合は、スマホ決済を利用する人の22.3%だった。利用金額は97.5%の人が平均で1000台湾ドル以下だが、1000台湾ドル以上の高額決済に使う人も増えている。昨2018年上半期では40.8%だったが、2019年上半期では49.2%になった。

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▲台湾でポピュラーなQRコードスマホ決済の「街口」(ジエコウ)。優待や還元のキャンペーンで、利用者が増える傾向は日本よりも強いという。

 

新しい決済には手を出して見る傾向がある台湾ユーザー

資策会産業情報研究所のアナリストによると、台湾のスマホ決済ユーザーには、大挙して移動する習性があるという。あるスマホ決済が話題になるとそこに殺到するが、別のスマホ決済が話題になるとそちらに大挙して移動する。これがスマホ決済の乱立する要因のひとつになっているという。

スマホ決済利用者の22%が、特定のスマホ決済を削除、停止した経験があるという。その理由は「利用できる店舗が少ない」(45.7%)、「優待が物足りない」(44.3%)、「システムが安定していない」(27.1%)となった。

今後も、加盟店の数と優待で、各キャッシュレス決済は競争をしていくことになり、利用されるキャッシュレス決済の順位も変動していく可能性がある。

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▲通常のスマホ決済の他にも、スーパーやコンビニなどが独自展開をするQRコードスマホ決済もある。還元率は一般のスマホ決済よりも高いので、小売系スマホ決済も併用してかなり使われている。