上海地下鉄の世博会博物館駅地下街にフーマピックアンドゴーが開店した。事前に専用アプリで注文をしておき、店頭でQRコードをかざして保温ロッカーから受け取るというものだ。朝の忙しい時間帯に、並ぶ必要がなく、温かい朝食が食べらると人気になっていると職業餐飲網が報じた。
地下鉄地下街に朝食専門のフーマが開店
アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が、上海地下鉄駅構内に朝食店を開いた。事前にフーマアプリから注文、同時に決済も行われる。できあがるとロッカーに用意されるので、スマホで開錠をして持っていくというモバイルオーダー&ピックアップ方式で、名前も「フーマPick ’n’ Go」(フーマピックアンドゴー)となっている。注文するのに行列に並ぶ必要がない、食事ができあがるのを待つ必要がないということから、近所の会社に勤める通勤族から好評を得ている。
包子などの中国式軽食からパン、ピザなどの西洋式軽食、豆漿、コーヒーなどの飲料などが販売されている。
このピックアンドゴー店が開店したのは、上海地下鉄13号線の世博会博物館駅に接続した歌斐センター地下2階。地下でそのまま地下鉄駅改札につながっている地下商店街の一角だ。人の流れが多い場所になる。
▲朝方は朝食を取りにきた人、その場で朝食を注文する人などで混雑する。ここで朝食をとって、会社に行って食べる。
中国人にとっては、暖かくなければ食事ではない
最近では徐々に変わりつつあるが、中国人の意識の中では、温かいものでないと食事にはならない。菓子パンは食事ではなくあくまでも軽食。菓子パンで夕飯を済ますというのは、惨めな食事の比喩になる。そのため、コンビニで販売されているオニギリ、サンドイッチなどは、間食にはなるが朝食にはならない。最悪でも、電子レンジで再加熱できてアツアツで提供できるものしか朝食や昼食にはならないのだ。
そのため、いまだに朝方は多くの朝食店、屋台が人気になる。油条(ヨウティアオ=揚げパン)と豆漿(ドウジャン=豆乳スープ)、煎餅(ジエンビン=中国式クレープ)、お粥などが定番で、作りたてのアツアツの食品を提供してくれるからだ。
ピックアンドゴーでは、注文が入ってからその場で作るので、アツアツの食品を提供できる。地下鉄に乗っている間に注文を入れておき、会社にいく前にピックアンドゴーによって、朝食を受け取り、会社などで食べるという人が多い(その場での注文、販売も行っている)。
価格も安い。包子は5元、野菜まん、肉まんも5元、煎餅は8元。平均客単価は12元で、初日には700人の客数があったという。
▲フーマピックアンドゴー店。地下鉄駅に接続した地下街にあり、スマホで朝食を注文しておくと、右側の保温ロッカーに入れておいてくれる。
▲スマホで注文をしておき、アプリが表示するQRコードをスクリーンにかざすと、自分の保温ロッカーが開いて、朝食を取り出せる。
売上も利益も大したことがない朝食店。その狙いはフーマブランドの浸透
客単価12元、客数700人ということは、1日の売上は8400元(約12万6000円)。個人経営の朝食店であればともかく、アリババのような大企業が手を出すべき業態なのだろうか。
アリババがピックアンドゴーで狙っているは、収益ではない。ホワイトカラーの通勤族に、フーマブランドを浸透させることが目的だ。ピックアンドゴーを利用するには、フーマアプリの中から注文をする必要がある。これが狙いなのだ。
通勤族にとって、仕事終わりに地下鉄の中でフーマフレッシュに日用の食材を注文、自宅に帰る時間に合わせて無料配送を頼んでおき、それから夕食を作るというライフスタイルは最高のユーザー体験になるが、まだそれを試していない通勤族がたくさんいる。それを朝食でピックアンドゴーを体験してもらい、フーマアプリをスマホにインストールしてもらうというのが狙いなのだ。
オフィスビルにはモバイルオーダーのカフェ「フーマF2」
また、2年前から「フーマF2」の店舗展開も始めている。F2とはfast(速い)とfreshade(新鮮な)の意味だ。フーマF2はオフィスビル内や近くに展開する通勤族用のフーマフレッシュで、店舗面積は800平米とやや小さく、イートインコーナー、カフェコーナーを充実させたコンビニだ。事前に食事やドリンクを注文しておけば、行ってすぐに食べることができる。
フーマF2は宅配サービスはしていないが、その代わり、ピックアンドゴーコーナーが用意されている。ピックアンドゴーを指定しておくと、食品はロッカーに用意され、自分でスマホで開錠して、持っていくというものだ。今回の上海の朝食店「ピックアンドゴー」は、このフーマF2のピックアンドゴーコーナーを独立させて出店したものになる。
▲以前から展開していたオフィスビル用のフーマF2には、ピックアンドゴーコーナーが用意されていた。これが独立したものがピックアンドゴー店だ。
6つのバリエーション展開で、市場をカバーするフーマ
フーマフレッシュは、フーマ本体だけではカバーしきれないマーケットを取るために、現在6つの業態を展開している。
1)フーマフレッシュ:フーマ本体。4000平米以上の大型店。生鮮食料品、イートイン、宅配サービスがある。
2)フーマmini:300平米から500平米の小型店。郊外、地方都市などに展開をする。
3)フーマ菜市:高級品、輸入品ではなく、日用の食品を中心にした中型店。イートインコーナーはなく、主にフーマの利用をためらう中高年、高齢者をカバーする。
4)フーマ小站:配送のみの倉庫。フーマの半径3km以内の配送地域「フーマ区」に入らない空白地域をカバーするためのもの。消費者が訪れて購入することはできない。
5)フーマF2:800平米程度で、オフィスビル内やオフィス地区に展開。イートインコーナーを充実させ、朝食、昼食、夕食、カフェなどとして利用できる。販売している食品は少なく、特に野菜や果物などはあまりない。通勤族にフーマを知ってもらうための店舗。
6)ピックアンドゴー:地下鉄駅近辺に展開をする朝食店。通勤族にフーマを知ってもらうための店舗。
▲フーマのバリエーション。大都市から住宅地、郊外まで、さまざまなバリエーションを展開して、すべての市場を抑えにきている。
フーマは日用品のプラットフォームになっていく
フーマ本体以外の5つの業態は、それだけで収益を上げるというよりは、フーマのブランドを浸透させることが狙いだ。フーマアプリを開くと、フーマだけでなく、「健康食品」「家具」「輸入食品」「ギフト」「薬品」「生活サービス」などのコーナーが用意され、いずれもフーマアプリの中から注文、決済ができるようになっている。フーマはもはや「新小売スーパー」ではなく、アリペイがお金にまつわるプラットフォームになっているのと同様に、フーマは生活にまつわるプラットフォームになりつつある。