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深夜に賑わう飲食店。地方政府も注目し始めた「夜間経済」

外売(フードデリバリー)が普及をしたことで、深夜に食事を取る人が増えていき、その人たちが深夜営業をしている飲食店に出かけるようになっている。深夜に食事をする習慣が生まれ、夜間経済として地方都市も注目するようになっていると蘭州晩報が報じた。

 

外売の普及で、飲食店も深夜営業

「美団」(メイトワン)「餓了麼」(ウーラマ)などの外売(フードデリバリー)が普及するとともに、夜間経済が厚みを増している。従来は、夜になると店が閉まってしまうので、夜中にお腹が減っても我慢をするしかなかったが、外売アプリを検索すると、深夜まで営業している店が見つかり、料理を注文できるようになり、夜食を食べる人が増えていった。その状況を見て、飲食店が深夜営業を始めるというサイクルで、夜間経済が成立し始めている。

夜間経済が成立をすると、自宅で外売を利用するだけでなく、食事に行きたいと考える人も増え、自然に夜市が成立し始めている。地方政府もこのような動きに敏感に反応し、夜市の整備を始めている。

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▲有奴思の串焼き。深夜帯には味の濃い夜食風の料理がよく売れるという。

 

飲食店の深夜帯の売上が増加している

グルメ案内サービス「口碑」(コウベイ)と外売サービス「ウーラマ」は、「蘭州夜経済ビッグデータ」を公開した。甘粛省蘭州市は、深夜の外売売上がこの1年で50%近くも増加した。

蘭州市の有名なチェーン焼肉店「有奴思」の馬社長は、蘭州晩報の取材に応えた。「深夜2時にもお客様のピークがあります。夜8時のピークに次ぐものです。私たちは4店舗を展開していますが、毎年5月から10月の最盛期には、夕方5時から明朝5時までの営業をすることにしました」。

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蘭州市の飲食店売上は、深夜帯で大きく伸びている。蘭州市政府も注目をして、夜市の整備を始めている。

 

30代男性が中心で伸びている夜間経済

蘭州市の夜間経済は伸びている。口碑の調査によると、夜間消費額の分布は、9時から11時までの間はこの1年で微減をしているのに、11時以降の消費はいずれも伸びている。その主力になっているのは、30代以下の男性だ。深夜まで営業する店が増えたため、深夜に食事をする人が増えている。

しかし、その多くは狭い地域に集中をしていて、半数以上が東方紅広場、正寧路、万達広場などで、この地域は「夜のCBD」(夜のCentral Business District=中心ビジネス地区)と呼ばれている。

有奴思の4店舗のうち、3店舗で外売に対応をしている。しかし、正寧路店は来店客も多く、スタッフの問題から外売には対応できていない。正寧路店は来店客、他の3店舗は外売という体制で、夜間経済に対応しているという。

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▲台湾の夜市は有名だが、中国本土の夜市は夜11時頃に終わるのが一般的だった。治安がらみの規制があるためだが、地方政府ではその規制を外した特区を指定し、深夜経済を成長させようとしている。

 

地方政府も積極的に夜市の整備を始めた

外売が普及をし始めた時、路面店のレストランは打撃を受け、営業状態を悪化させる店も増えていった。外売によって、レストランがなくなってしまうのではないかという不安を口にする人もいた。しかし、夕飯時のピーク時の売上は下がったものの、深夜帯に新たな成長空間を見出すことができた。

ウーラマでも、この深夜経済に注目をしていて、深夜の外売に対応している店を集めて「金城夜市ランキング」を作り、近日中に「深夜半額クーポン」などのプロモーションを行う予定だという。

また、蘭州市政府も「蘭州市発展夜市経済意見」「蘭州市夜市街区改造建設実施案」などを公開し、2020年までに大型夜市街区8カ所、露店を中心にした夜市10カ所を整備し、2万人以上の新たな雇用を創出する計画を進めている。80億元(約1200億円)以上の経済効果をもたらすと試算されている。

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▲人で賑わう焼肉チェーン「有奴思」では、店内に人が入りきれないため、店舗前の歩道にテーブルを置いて対応している。この賑わいが深夜まで続くという。

 

新一級都市、二級都市で進む夜間経済

この夜間経済の減少は、蘭州市だけでなく、杭州市、武漢市、重慶市などの新一級都市、二級都市で同じように起きている。各市政府も夜間経済を促す施策を進めている。

夜市というと、台湾が有名だった。中国の都市にも今まで夜市は存在したが、夜11時前後には終わってしまうものが多かった。北方では冬の夜は寒いということもあるが、主な理由は治安のための規制があったからだ。この夜間経済が始まったことで、中国本土でも、朝までやっている夜市があるのが当たり前になっていくかもしれない。

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▲外売のウーラマ。外売が普及をしたことで深夜にも食事を取る人が増え、次第にデリバリーだけでなく、飲食店にも出かけるようになり深夜経済が生まれてきた。