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農民が発明した立体交差の構造が特許取得。通行量10倍の意外な発想

江蘇省徐州市の農民、伊江西さんが発明した立体交差の構造が話題を呼んでいる。交通信号はなく、通行量は数倍から10倍になる。すでに中国の特許も取得し、ネット民からは1日も早く実現してほしいと声が上がっていると車輪的生活が報じた。

 

バイパスとのインターチェンジが渋滞の原因になっている

中国の都市の交通は限界に達している。自動車の数が多すぎて、渋滞が当たり前になっている。

典型的な都市の道路の構造は、東西、南北という縦横に大きな通りが走り、それを何重にも環状バイパスが取り巻くというもの。環状バイバスの信号は極力減らし、少しでも車の流れをよくしようと工夫をしている。

しかし、問題はこのバイパスとのインターチェンジだ。バイパスから一般道に入る車、一般道からバイパスに入る車が車列をなし、これが原因でバイパス、一般道の渋滞の原因となっている。

 

北京市にある摩訶不思議な道路標識の謎

北京市には不思議な道路標識がある。まるで、ドイツの焼き菓子「プレッツェル」か、Macのコマンドマークのように見える。これは立体交差で右折をする時に、直接側道を右折するのではなく、3回ないしは5回ターンをしてから右折しろということを示している(中国は右側通行)。

実際、北京市の西直門立体交差では、7時から20時までは、黄色いラインのように3回ターンをしないと右折ができない。カーナビがないと、途中で自分がどちらに向いているのかわからなくなってしまうそうだ。

本来は、赤いラインのように右折をすれば簡単なのだが、通行量が多いときは、右折待ちの車が列をなし、横方向の一般道まで並ぶ。これが一般道の渋滞の原因となってしまう。

黄色いラインのように遠回りさせることで、車列を側道で吸収することで、渋滞を起こさないようにする工夫だ。

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北京市にある不思議な交通標識。西二環インターチェンジから、環状バイパスに入るには、5回のループを経て、右折して入らなければならない。流入線を長くすることで、渋滞による行列を吸収しようという苦肉の策だ。

 

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▲最も渋滞の多い西直門立体交差の通行図。西(左側)から走ってきて、環状バイパスに入り、南(下側)に行きたい時、本来なら赤い線に沿って右折をすればいいはず。しかし、渋滞の列が東西方向の道路にも及び、激しい渋滞となるため、7時から20時の間は、黄色い線に従って右折をしなければならない。

 

直進2層、ラウンドバウト1層の3層構造の立体交差

このような状況で、徐州市の農民、伊江西さんが考案した立体交差が話題になっている。信号もなく、通行可能量は通常の立体交差の数倍から10倍というもの。

この立体交差は3層になっている。まず、東西、南北の直線道路で2層。基本的に直進をする。右左折をしたい人は、側道を登って、最上層のラウンドバウトに行き、ここで右折、左折を行う。

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▲最上階はラウンドバウトになっている。右左折したい車はすべてこのラウンドバウトを使う。

 

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▲下の2層は、東西方向の道路と南北方向の道路の直進のみ。右左折したい人は3層のラウンドバウトに上がる。

 

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▲この立体交差は、東西、南北の直線道路が2層になっていて、右左折する人は3層目のラウンドバウトに上がる。信号がないので流れがよくなり、交通量は数倍から10倍になると見られている。

 

必要な用地は少なく、建設費も嵩まない

すでに特許も取得してある。専門家によると、この新考案の立体交差は一見構造が複雑で、建設費がかさみそうだが、既存の立体交差も側道の構造が複雑であるため、比較をすると建設費は一般の立体交差とそう変わらないのではないかという。

また、既存の立体交差は側道を建設するために、交差点付近の用地をかなり使うことになるが、この新考案の立体交差は、道路以外の用地を必要としない点も優れている。

ネット民からは、すぐにでも実現すべきだという称賛の声が上がっている。中国にこのような立体交差が登場する日がやってくるかもしれない。

▲伊江西さんが発明した立体交差を報道するニュース番組。構造がCGでわかりやすく説明してある。