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ヒット家電を連発する小米。雷軍CEOが教える「ヒットの5つのロジック」

スマートフォンで有名になった小米(シャオミー)が好調だ。家電製品に手を広げ、ヒットが生まれている。小米が設立したインキュベーターで、雷軍CEOはヒットには5つのロジックがあると教えていると爆款戦略が報じた。

 

家電がヒットしても「家電は斜陽」発言

小米(シャオミー)がヒット商品を連発している。炊飯器、お掃除ロボットスマートテレビ、エアコン、スマートウォッチ。いずれもデザインをシンプルにして、操作の多くをスマホから行うようにしている。また、小米が開発した人工知能音声アシスタント「小愛同学」により、音声での操作を可能にしている。

デザインがシンプルで価格も手頃。そして使いやすく高機能。都市の若者を中心に小米の家電を選ぶ人が増えている。

ところが、小米の雷軍(レイ・ジュン)CEOは、「家電産業はすでに斜陽。小米は次の事業を探している」と発言している。この雷軍CEOの前向きな姿勢にも根強いファンがいる。小米が携帯電話を専門に開発していた頃は、雷軍がスティーブ・ジョブズばりのプレゼンをしたことから、「中国の偽物ジョブズ」と揶揄されることもあったが、現在ではものづくりメーカーのリーダーとして多くのリスペクトを集めている。

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▲小米がスマートフォンを主力製品としていた頃は、発表会にカジュアルな服装で登場するため、「中国の偽物スティーブ・ジョブズ」と揶揄されることもあったが、現在ではそのようなことを言う人はいない。

 

雷軍CEOが教える「ヒットの5つのロジック」

雷軍CEOは2016年に「小米谷倉エコロジーチェーン学院」を設立した。ここではスタートアップのための公開講座、講義などを行い、インキュベーターとしても機能し、明日の小米を担う若者たちを育成するための機関だ。

ここで雷軍は、ヒット商品を生み出すには5つのロジックがあると若者に教えている。

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スマートフォンの爆発的な人気で知られるようになった小米は、その後、売上低迷に苦しんでいた時期もあった。しかし、ベゼルレススマホで復活、その後、家電製品でもヒット商品を連発している。雷軍CEOの企業家としての手腕に注目が集まっている。

 

消費者の80%を80%満足させる「80・80の法則」

小米は大きな市場にフォーカスしている。大きな市場とは何か。それは80%の消費者が80%満足するという市場だ。

例えば、スマートブレスレットでは、ある人はストップウォッチ機能が欲しいと言い、ある人は電話機能が欲しいと言い、中には音楽の再生機能が欲しいという人までいる。しかし、小米は80・80の法則でふるいをかけて、そのような特殊な機能ではなく、歩数計やアラーム、睡眠トラッキングという誰もが必要とする機能で製品を構成していく。

こうすることで、コストが抑えられ、消費者にとっては使いやすく、同時に多くの人を満足させる製品になる。

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▲ヒット中の「小米手環4」。QRコードを表示して、決済に使える機能もある。169元(約2700円)。

 

生産課題、社会課題を解決する

80・80の法則により、大きな市場を狙うということは、常にレッドオーシャンに参入することになる。ライバルは多い。小米が進出するお掃除ロボット、炊飯器、スマートブレスレット、空気清浄機などにはすでに強力なライバルがたくさんいる。

そこで、そのようなレッドオーシャンに進出するためには、生産課題か社会課題を解決する必要がある。例えば、小米のドクターベイ歯ブラシは、開発担当者がまず世界中の歯ブラシを集めて分析をするところから始めた。その結果、「現在の製造技術はこんなにもレベルが低いのか?」という結論が出て、研究開発が始まった。

毛をどのように配置すべきか、どのような形状の毛を使うべきか、どのような材質で毛を作るべきか。そういう根本からの研究開発を行い、2016年に発売をするとわずか4日で20万本が売れるというヒット商品になり、現在でも売れ続けている。

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▲ドクターベイ電動歯ブラシ。中国人の口腔を研究した中国人のための歯ブラシ。94元(約1500円)。

 

大衆製品は高品質化し、小衆製品は大衆化する

80・80の法則を考えると、何をすべきかがはっきりする。大衆製品は高品質化すべきだし、専門性の高い製品は大衆化をすべきだ。

掃除ロボットは、小米が市場に参入した時、大衆製品とは言えなかった。数万元という高価格でありながら、コードを巻き込んでしまう、騒音がうるさい、きれいに掃除できないとユーザーの体験は良くなかったからだ。

小米は、このような問題を解消した上で、低価格で市場参入した。普通の消費者が安心をして買えるようになり、2016年に参入してから2018年2月には100万台を突破するヒット商品となった。

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▲小米のお掃除ロボットスマホアプリから、部屋の中で掃除をする区域を設定することができる。1699元(約2万7000円)。

 

誠実な価格設定をする

小米の製品はライバル製品と比べて価格が安いため、誤解を受けることもある。なんでこんなに安いのか。ここまで安いということは品質に何か問題があるのではないかと考えてしまう消費者も多い。それでも小米は、「高くても買う人がいるから高くする」という考え方は採用しない。

厳密にコストを計算して、それに5%の利益を乗せた価格設定をする。もし、利益が5%を超えた場合は、合理的な方法によって消費者に還元をする。

谷倉学院から生まれた製品であるモバイルバッテリーを販売した時は、1つ売るごとに小米は8元の損をしていた。しかし、それが売れ始めると、販売会社に対する影響力が強まり、卸価格について談判ができるようになり、わずかだが利益が生まれるようになった。販売会社は高利潤を追求するため、メーカーや販売店の利益をあまり考慮しない。しかし、小米は、大量購入、長期契約を結ぶことで、製造から流通までのすべての利益を最大化しようと考えている。

そのためには、販売チャンネルのすべてを小米が把握しておく必要がある。それで、小米の製品の多くは、直販サイトでの販売になっている。

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▲小米はオンライン直販を主体にしていたが、「小米有品」のECサイトの他、直営店の展開も始めている。

 

製品の次の製品を見通す

製品を企画する時に考えることは、「どのくらいのシェアを握ることができるだろうか?」「課題を解決できているだろうか」「生産方法は最高点に達しているだろうか?」ということだが、次に考えるべきなのは、その製品の発展性だ。

例えば、モバイルバッテリーであれば、それに付属するカバー、LEDライト、扇風機などが考えられる。モバイルバッテリーを購入した人は、この周辺製品も買ってくれる。周辺製品は本体よりも価格が手頃だからだ。

本体が数百万元の売上をもたらしてくれれば、このような周辺製品が数十万元の売上をもたらしてくれる。

小米がいつも考えているのは、「最高の材料を使い製造し、最高のシーンで、最高のユーザー体験をもたらす」ということだ。それが今日の小米の業績に結びついている。