中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

今さらながらに普及が始まった中国の自動販売機はマーケティング装置

中国でコンビニの24時間営業が厳しくなり、それを補うものとして自動販売機の普及が始まっている。しかし、販売よりもテストマーケティングに使うケースが多いとデジタル科技的星空が報じた。

 

コンビニの補完として注目されている自動販売

中国でも人手不足から、コンビニの24時間営業の維持が難しくなっている。南京市のセブンイレブンでは、一部の店舗で24時間営業をやめ、朝7時から夜10時までの営業に改めている。

これを補うのが、中国で次々とスタートアップが登場した無人コンビニだが、特定の場所を除いて利用が進まない。そもそも店内に入るのに認証が必要という点が煩わしく、そこしかなければともかく、普通の有人コンビニがあればそちらを利用してしまう。そこで、より手軽な販売方法として、注目され始めたのが自動販売機だ。

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▲街中に増えてきた自動販売機。コンビニの24時間営業が難しくなり、スマホ決済が普及したことで、中国でもようやく自動販売機が本格普及を始めている。

 

自動販売機には大きな成長空間が残されている

約500万台の自動販売機があり、年間売上600億ドル(約6.5兆円)、1台平均で1日23人が利用するという自動販売機大国の日本人からしてみると、「今さら」なのだが、中国では今さら自動販売機が本格普及の兆しを見せている。

米国の自動販売機とコンビニの比率は30:1。2017年の中国のコンビニ店舗数は10.6万軒なので、米国並みに自動販売機が普及すると考えると、自動販売機は318万台になる。しかし、2017年の中国の自動販売機数は46万台で、318万台の14%程度。自動販売機にはまだまだ大きな成長空間があると投資家たちも注目をしている。

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▲地下鉄駅内に飲料の自動販売機が設置されるのはもはや普通のことになった。硬貨や紙幣ではなく、スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」で購入できる。

 

スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」が自動販売機普及のきっかけに

中国では2000年前後から、日本や韓国から自動販売機を輸入して、中国用に改造した自動販売機が、地下鉄駅などに置かれるようになった。しかし、利用はほとんど伸びなかった。

当時の中国は、製造コストのかかる硬貨の流通量が極端に少なく、少額であっても紙幣を使うのが一般的だった。その紙幣も新札への交換があまり行われないので、破れたり汚れたりしていることが多かった。

つまり、自動販売機を使いたくても硬貨を持っていない、あるいは紙幣対応であってもうまく認識してくれないということが多かったのだ。

これが変えたのが、2012年頃から普及をしたスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」だ。現在登場している自動販売機は、スマホ決済で購入できるというのが当たり前になっている。

人手不足と人件費の高騰で、従来は「人よりも機械の方が高くついた」が、現在では「人よりも機械の方が安く済む」時代になったことも大きい。2019年は一気に自動販売機の普及が進む年になるとみられている。

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▲中国の公衆トイレには紙が置かれていないことが多い。その代わりに、紙の自動販売機が昔から設置をされていた。これも今はスマホ決済に対応している。

 

注目されているのは「化粧品」「薬品」「避妊具」

しかし、自動販売機の使い方は日本と中国では少し異なっている。日本の自動販売機は飲料が中心で、「今すぐ消費したいものを、買う手間を最小限にする」利便性が主目的になっているが、中国の場合は自動販売機はもうひとつの販売チャンネルであり、露出することによって商品を記憶してもらう広告のひとつだと考えられている。

そのため、飲料だけでなく、さまざまな商品が自動販売機を利用している。その中でも注目されているのが「化粧品」「薬品」「避妊具」の3つだ。

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▲コンビニの横に設置されている薬の自動販売機。深夜に薬を必要とする人がいるため、売れ行きは好調だという。

 

ゲーム性のある自動販売機「口紅格子機」

特に今ブームになっているのが、「口紅格子機」と呼ばれるものだ。昨2018年中国版Tik Tokでインフルエンサーたちが盛んに動画を共有したことで若者の間でブームになっている。

自動販売機の中にさまざまな商品が入っていて、価格もそれぞれ異なっている。中央の液晶画面では簡単なゲームができるようになっている。1回2元程度でこのゲームに挑戦し、成功すると100元以上する化粧品や玩具などの商品がもらえるというものだ。

日本のクレーンゲームの中国版という感覚だが、化粧品ブランドが積極的にプロモーションに利用している。化粧品というのは新製品をいきなり大量生産することは難しい。同じ製品でも口紅の色のようにバリエーションが多く、売れるかどうかもわからない。さらには消費者の肌に合わないなどの問題が生じるリスクもある。

そこで、まずは小ロットの生産をし、Tik Tokなどでプロモーション、その後「限定品」として口紅格子機に出品をする。そこで、どの程度の消費者がその商品を狙い、いくら使ったかなどのデータを取り、テストマーケティングを行うのだ。その結果によって大ロット生産を始め、小売店を通じての販売を始めるなどの工夫をしている。

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▲口紅格子機。主に化粧品が販売される。販売チャンネルというよりも、新製品のテストマーケティングのデータを取るために使われることが多い。

 


挑战火红的口红机 !原来那么容易| 香蕉牛奶BananaMilkyTV

▲中国でブームになっている口紅格子機。ゲームに挑戦して、成功すると、口紅などの化粧品という高額商品が景品としてもらえる。どのような景品を狙う人が多いのか、マーケティングデータが取得されている。

 

夜間に利用の多い「薬」と「避妊具」

薬品の自動販売機も増えている。中国では病院に行くのは敷居が高く、ちょっとした病気であれば漢方薬の店に行き、漢方薬を処方してもらうというのが一般的だった。それがコンビニやドラッグストアの登場で、自分で西洋式の薬を買うという習慣が生まれてきた。多くの人が寝る前に薬を飲みたがるため、意外に薬需要は夜が多い。そのため、薬品の自動販売機は売れ行きがいいのだという。

また避妊具の自動販売機も好調だ。避妊具は薬局やドラッグストア、コンビニなどでも販売されているが、やはり対面で購入するのはなんとなく恥ずかしい。そのため自動販売機が適している。

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▲中国の自動販売機は、販売だけでなく、ゲーム性があったり、マーケティングデータを取得するために利用されている。

 

アジア圏に輸出される大量の中国式自動販売

中国の自動販売機は、「販売機」ではなく、口紅格子機のように広告やマーケティングを含めたメディアに進化しようとしている。そこで重要になるのが設置戦略だ。その商品のマーケティング戦略に合わせて、重点地区に展開するのか、開拓したい地区に展開するのか、大都市か地方都市か、閉鎖空間か開放空間かなどを考えるコンサルティングも重要になってくる。

すでに自動販売機を製造するスタートアップが無数に登場しているが、ただ製造だけをして販売をするスタートアップは少ない。どこも、消費者の利用データを取り、コンサルティングまで行う。

すでに自動販売機メーカーはアジア圏を中心に輸出も始めている。2015年にすでに自動販売機の輸出台数は9699.1万台に達していたが、2017年には1億4976.6台にまで増加している。

同じ自動販売機でも、日本の自動販売機と中国の自動販売機は考え方が少し違う。中国国内、アジア圏で中国式自動販売機が広まろうとしている。

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