中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国独自の衛星測位システム「北斗」が運用開始。GPSはもういらない

中国独自の衛星測位システム「北斗」(BeiDou navigation satellite System=BDS)が、全世界で測位できる能力を獲得し、運用を開始した。本来は2020年に予定されていたが、前倒しで、中国独自の測位システムが完成したことになると前沿哨所が報じた。

 

米国、ロシアに続く第3の衛星測位システム

測位システムはGPSだけではない。ロシアはグロナスをすでに運用しており、EUも独自にガリレオを構築中だ。完成した測位システムとしては、GPS、グロナスに続く第3の測位システムとなる。

BDSは、5機の高度3.6万kmの静止軌道衛星と30機の高度2万kmの傾斜軌道衛星を組み合わせて、測位を行う。北斗プロジェクトは1994年から始まっており、2000年には北斗1プロジェクト「青銅」で4機の衛星(2機は予備)を打ち上げ、2007年から開始された北斗2プロジェクト「ダイアモンド」では2017年までに23機の衛星が打ち上げられた。2017年から始まった北斗3プロジェクト「王者」では2018年までに43機の衛星が打ち上げられ、全世界での測位が可能になった。

本来は2020年までに計画の完了が予定されていたが、大きく前倒しされて実現されることになった。中国としては、米国のGPSに頼る必要がなくなるわけで、米中貿易摩擦と大きく関係していると思われる。

f:id:tamakino:20190619104334j:plain

▲中央電視台で放映された北斗BDS衛星の開発風景。部品なども中国産を採用し、国産化率はほぼ100%になる。

 

屈辱の銀河号事件から始まった北斗プロジェクト

この北斗プロジェクトが始まったのには、1993年7月に起きた銀河号事件が大きく影響していると言われる。天津からイランに向けて出発した中国の貨物船「銀河号」に、当時、湾岸戦争の最中であった米国政府は、CIAからの情報として、この貨物船に化学兵器の原料が積載され、イランに密輸をしようとしていると主張した。

1990年からすでに民間用のGPSの精度は意図的に落とされていたが、GPSにはさらに特定の衛星に誤差ノイズを加え、特定地域で測位が行えなくする機能がある。中国政府側の主張によると、公海上の銀河号がいる海域に対して、GPSが無効化されたため、銀河号は航行することができず、公海上に停止するしかなかったという。

そこを米国の2隻の軍艦と、5機の垂直ヘリに包囲され、強制的に臨検が行われた。33日間に渡って銀河号は航行することができず、積載されていた628個のコンテナすべてが調べられたが、出てきたものは文房具や工作道具、機械部品、染料などで、化学兵器の原料となるものは出てこなかった。

米国はこの件について、賠償はおろか、謝罪もしていない。この翌年から北斗プロジェクトが開始された。現在の米中貿易摩擦でも「銀河号の屈辱を忘れるな」という言葉が関係者の口から出てきているという。


北斗独创布局覆盖全球,GPS卡脖子已失效,美国最担心的事情发生

▲北斗BDSの全世界での運用が開始されたことを伝えるネットニュース。米国によるGPSジャミングの影響を受けなくなると解説されている。

 

すでに8割近いスマホがBDSに対応

多くのメディアが「GPSのジャミングはもう意味がなくなった」「米国が最も心配していたことが起きた」と刺激的なタイトルで報道している。

2019年1月から3月までに、申請された測位可能なスマートフォン116モデルのうち、すでに82モデルがBDSに対応している。今後、中国産のスマホのほとんどがGPSとBDSの両対応になると見られている。中国はますます独自路線を走ることになる。

GPS BoT お子様の現在地や行動履歴を教えてくれるAIみまもりサービス

GPS BoT お子様の現在地や行動履歴を教えてくれるAIみまもりサービス