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観光地の入園に顔認証。顔パス観光地は全国で270カ所以上

中国の主だった観光地270カ所以上で、顔認証入園を導入している。人件費の節約、混雑解消、園内の治安維持、クーポン配信による消費刺激などさまざまなメリットがあると快点秀科技が報じた。

 

観光地に入る身分証明に顔認証が導入

中国の天安門九寨溝、烏鎮といった観光地の多くが、テーマパークのように、チケットを購入しないと中に入れないようになっている。チケット購入するには、身分証やパスポートが必要になる。料金を取ることで、景観を維持する資金を捻出することと、入園者の身元を把握することで観光地内の治安を守るというふたつの目的がある。小さな観光地では、入園料は取らないこともあるが、それでも身分証を提示して、チケットをもらわないと入れないことがほとんどだ。

この入園システムに、顔認証が続々と導入されている。現在では、27の省市自治区の270以上の観光地に導入されている。

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▲事前にスマホで自分の顔を登録しておけば、顔パスでゲートを通過するだけで、入園料が支払われ、中に入ることができる。顔パス観光地は全国で270カ所に達している。

 

各メーカーが顔認証システムを開発

最も広く使われているのが、愛筆智能と深大智能が共同開発した顔認証入園システム。黄果樹、黄山、カナス湖など150以上の観光地で採用されている。テンセントも同様のシステムを開発していて、新疆ウイグル自治区の天山、天池や龍門石窟などで採用されている。その他、アリババ系の飛猪も4つの観光地で採用され、その他のメーカーを採用している観光地が30ほどある。

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▲愛筆智能と深大智能が共同開発した顔認証ゲート。黄山など150以上の観光地で利用されている。このほか、テンセント、アリババも参入している。

 

行列は解消され、偽チケットもなくなる

青島ビール博物館では、今年の5月の連休から顔認証システムを導入した。従来は発券所、入園改札などに人手が必要であり、特にチケット購入の長い列ができることが多かった。このような人手が不要になり、しかも行列を解消することができる。さらに、偽チケット、チケットなし入場、ダフ行為などを防止することができる。

龍門石窟では、2017年からテンセントの顔認証システムを導入している。顔認証を導入した観光地としては中国初だった。1秒で入園処理ができ、混雑の緩和に大きく貢献した。入園者はあらかじめスマホのWeChatミニプログラム「龍門石窟智能刷臉入園」を使って、自分の顔写真をスマホで撮影、「名前」「携帯電話番号」「身分証番号」を入力すると、通行証が生成される。さらに、このミニプログラム内で入園用の電子チケットを購入し、WeChatペイで支払いをすると、通行証が有効となり、入り口の端末に顔を見せるだけで、中に入れるようになる。

観光客だけではなく、中で働くスタッフ、パフォーマーなども顔認証をして入園をする。こうすることで、観光地内でスリや詐欺を働こうとする犯罪者もシャットアウトすることができる。

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福建省福州市の観光スポット「三坊七巷」の旧市街地では、建物の見学をするのに顔認証が使われるだけでなく、ストリートミュージシャンの横に顔認証端末が置かれ、顔を見せてボタンをタップすることで、投げ銭ができる仕組みになっている。

 

入園だけでなく、クーポンやガイドなどの派生サービスも

この顔認証入園は、単なる入園システムにとどまらない。観光地のガイドをスマホを表示にするだけでなく、園内外の飲食店、土産物屋などのクーポン配信、席の予約、顔認証決済や、観光スポットや商店までの歩行ルート案内などさまざまな応用が始まっている。

このような機能をパーソナライズして、その人の趣向に合ったガイドができる「AI観光地」を構築しようとしている。