小米の「小米電視4」がヒット商品になり、小米がテレビシェアランキングを独走している。その理由は、音声でほとんどの操作ができるスマートテレビであるからだと科技小解が報じた。
中国テレビ市場でトップに躍り出た小米
「4Kテレビ」という新しいセールスポイントがあるのに、中国のテレビ市場に活気がない。テレビという大画面よりもスマホやタブレットという小画面で映像を見る習慣が定着をしたからだ。映画や連続ドラマという長尺ものの映像を見るよりも、Tik Tokや動画共有サイトのショートムービーを見る習慣が定着したからだ。
そのようなテレビ市場で、小米(シャオミー)が2019年になって、オンライン売上ランキングのトップに躍り出た。2018年は前年比300%を超える成長をし、2018年第4四半期には300万台を売り上げた。小米は原則、直販サイト「小米有品」での販売のみなので、これは驚異的だ。
調査会社「北京中怡康時代市場研究」による調査結果では、2019年になってオンラインの売上では小米がトップを走り続けている(小米はオンライン販売が基本。昨年から小米直販店も展開し始めた)。
▲2019年4月のテレビ販売台数シェア(オンライン売上)。2019年になって小米が独走している。
超薄型のDIY可能壁掛テレビ「小米電視4」
小米は2013年からテレビの製造販売を始めているが、なかなか軌道に乗らなかった。それが突如、昨年の第4四半期になってシェアが伸び始めた。新製品「小米電視4」がヒットしたからだ。
ひとつはフラグシップの75インチモデル(8999元)が厚み11.4mmという超薄型で重量が35.1kgと軽く、簡単な設置工事で壁掛けテレビが実現できることがある。4か所のフックを壁に埋め込めばいいだけなので、DIYでも十分できるし、購入時に壁掛け設置工事(190元)を同時に注文することもできる。
▲小米電視4の75インチでも厚みは11.4mm。DIYでも壁掛工事ができる。
▲小米電視4。価格も手頃で、スマートテレビの決定版としてヒットしている。
音声だけでほぼすべての操作ができる「小愛同学」
しかし、小米電視4が売れている理由は、その操作のしやすさにある。小米が独自に開発をしたPatchwallと呼ばれるパネル形式のインタフェース、数字ボタンが消えたリモコン。さらにAI音声アシスタント「小愛同学」(同級生の愛ちゃん)により、音声だけでの操作が可能になっている点だ。
「テレビをつけて」「テレビを消して」などだけでなく、「1時間後にテレビを消して」「朝7時にテレビをつけて」なども可能。さらに、「ヒーローものの映画を探して」と言って、リストが表示されたら、そこから「◯◯という女優が出演しているものは?」「無料で見られるものは?」と音声でどんどん絞り込んでいくことができる。また、視聴中にも「30秒早送り」「5分巻き戻して」「54分12秒までジャンプ」という命令も可能。
小米電視4にはブルートゥースが搭載されていて、小米のIoT家電のコントロールセンターにもなる。テレビリモコンから「お掃除ロボットを動かして」「リビングの明かりを暗くして」などの操作も可能。
▲小愛同学は、小米が開発した人工知能。テレビだけでなく、小米製のスマホやスマートスピーカーにも搭載されている。
▲小米電視4付属のリモコン。どこかで見たようなデザインだが、十字キーぐらいしか使わない。ほとんどの操作は音声でできるようになっている。
チャンネル数が多く、番組表感覚が薄い中国のテレビ事情
中国でのテレビ事情は、日本とは大きく違う。日本はテレビをつけると番組表を表示して、そこから番組を選ぶという感覚だが、中国では番組表を見るよりも、とりあえずつけてみて見たい番組を探すか、番組予告でチャンネルと時間を知り、見ることが多い。
地上波インフラが貧弱であった中国都市部では、アンテナによる受信に問題があることが多く、多くの人がケーブルテレビを使っていた。また、地方では地上波が届かない地域が多いため、パラボラアンテナを使い衛星放送を受信するのが基本になっている。
このためチャンネル数が異常に多い。地域によって異なるが、少なくとも30チャンネル、多くの場合50チャンネルほどが見られる。しかも、放送時間がよくわからない。日本の場合、連続ドラマの放送は、撮影をしながら、毎週同じ時間に放送するのが普通だ。しかし、中国では1クール分をあらかじめ撮影して、それからテレビ局に販売をする。テレビ局では、視聴率を稼ぐため、毎日3話ずつ毎日放送するなどというやり方をする。それが終わると、別のチャンネルでやはりまとめて放送される。
チャンネルではなく、番組志向の中国
かといって、DVDやハードディスクに録画をするというのもあまり主流にならなかった。なぜなら、近所のお店で驚くほど安い値段で、ドラマや映画のDVDが販売されているからだ。多くの場合、違法コピーで、これを買ってきて、自宅で楽しむということが多かった。
つまり、日本のようにチャンネル志向ではなく、見たい番組を見る番組志向だったのだ。
これがケーブルテレビがブロードバンドに変わり、番組DVDが映像配信サービスに変わった。
小米電視4を起動すると、番組表ではなく、過去の視聴履歴から分析された番組、ドラマ、映画などのリコメンド一覧が表示される。この中からリモコンで選んで、見たい番組を見るというスタイルだ。
中国のテレビ習慣は、そもそもスマートテレビのスタイルに親和性があった。
▲小米が開発したインタフェース「Patchwall」。番組表が表示されるのではなく、テレビをつけるとおすすめの番組が表示される。これを声で検索して番組を選んでいく。本格的なスマートテレビになっている。
PatchWall - Mi TV Artificial Intelligence System
本格的なスマートテレビ時の時代に入った
小米では、小米電視4の購入者に向けて、小米の動画配信サービス「小米映像会員」(年498元)と中国で人気のある動画配信サービス「愛奇芸」(年198元)のふたつのサービスをまとめて年249元で見られる優待特典をつけている。
ライブのテレビ放送は、ライブ放送アプリがプリインストールされているので、無料で見ることができる。
小米電視4を購入すると、もはやケーブルテレビの加入も必要なく、インターネットに接続して、年249元(約3900円)の映像サービスを利用するだけでほぼ見たいものは賄えるようになっている。
ある意味、スマートテレビの完成形が登場してきたと言える。これが小米電視4が売れている理由だ。ただし、スマートテレビが人気になる背景に、そもそも中国人の視聴スタイルが番組志向というスマートテレビ向けの習慣があったことが大きい。
このヒットにより、他メーカーもスマートテレビを強く意識した製品を投入してくるものと思われる。
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