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道路とバスターミナルに5G。スマート化される成都市の公共バス

成都市では、二環(第2環状高架道路)全線と金沙ターミナルに5G基地局を設置し、バスが5G通信を利用できるようにした。高精度の顔画像がやり取りできることになり、顔認証でバスに乗れる世界が実現すると期待されていると成都発布が報じた。

 

道路とバスターミナルに5Gを敷設

成都市の公共バスを運営する成都公交集団と中国電信は共同して、二環道路と金沙ターミナルに5G基地局を敷設した。乗客は、WiFi経由で5G通信を利用することができるようになった。5G対応スマホを持つ人が増えてくれば、直接5Gによる高速通信を利用することができ、バスの車内でVRなどを楽しむことができるようになる。

国電成都支社によるによると、金沙ターミナルの5階の発着所フロアに4基の5G基地局を設置し、同時に500人が利用できるという。ターミナル内に設置されたモニターでは、成都各地からの5Gによる8K映像のライブ中継が楽しめるようになっている。現在、ターミナル全体に5G信号が行き渡るように増設を進めている。

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▲「hello 5G」をキャッチフレーズにして、成都市を「5Gの都市」にしようと、成都市政府も積極的に5G敷設を支援している。

 

当面の狙いは顔認証決済によるバス乗車

成都公交集団がターミナル、高架道路に5Gを敷設するのは、乗客に対するサービスだけが目的ではない。バス交通をスマート化させることが本来の目的だ。

ひとつはバスに顔認証決済で乗れるようにすること。3D顔認証決済をするには、端末から高精細の画像とデータをクラウドに送信し、クラウド上で認証を行わなければならない。飲食店、地下鉄改札などの固定した場所であれば有線でクラウドに接続をすればいいが、バスのように移動する物体に顔認証決済端末を設置するには、大容量の通信回線が必要になる。5Gによって、移動体でも顔認証決済ができるようになる。

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▲5G基地局が設置された金沙ターミナル。監視カメラ映像で客の流量などを解析し、バスを適宜増発させるなど、人工知能による運行管理を取り入れていく。


長期の狙いは人工知能による運行管理

もうひとつは人工知能による運行管理だ。すでに金沙ターミナルの運行管理室では、AI運行管理が始まっている。

このAI運行管理の目的は2つ。ひとつはバスの乗車人数、下車人数、金沙ターミナルの乗客流量などを、バスの決済端末、監視カメラ映像の画像解析などから把握をし、乗客が多い場合には適宜増発をすることで、過剰な混雑を防ぎ、定時運行を実現するというもの。

もうひとつは金沙ターミナル内の監視カメラで行動解析を行い、バス専用道への立ち入り、柵を越えるなどの異常行動を自動的に発見し、警告を発するというものだ。

定時運行とターミナルの安全管理に人工知能を役立てている。

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乗務員の体調も人工知能が管理

顔認証は、乗客の決済だけでなく、乗務員にも将来的には行われるという。乗務前に顔認証を行い、過剰勤務になっていないかどうかをチェックする。また、運転中の乗務員の映像を分析し、病気の発作などによる異常事態を事前に予測するという。

5G通信が可能であるため、運行管理室から遠隔操作をし、非常時にはバスを路肩に安全に停止させるというようなことができるようになる。

 

成都市が挑戦する「5G都市」

中国は都市間の競争が激しく、どの都市もITの「顔」を持とうとしている。北京の自動運転、上海の人工知能杭州の顔認証決済などは、すでに各都市の「顔」になりつつある。成都市は、バス路線、バスターミナルに中国で最初に5Gを敷設しただけでなく、地下鉄、鉄道の成都東駅や、川沿いの公園地区「夜游錦江」などにも5Gを敷設した。いずれも地下鉄、鉄道駅、公園地区に設置される5Gとしては、中国初となる。

他の都市に先駆けて「初の5G」を並べることで、成都市は5Gという顔を持つことに挑戦しようとしている。

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▲イルミネーションが施された「夜游錦江」公園。ここにも5Gが敷設されていて、遊覧船や川沿いで利用ができるようになっている。