中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

低所得者、地方に照準を定めた第3のEC「拼多多」

第3のEC「拼多多」(ピンドォドォ)はなぜ価格が安いのか。そう問われた創業者の(ホアンジェン)CEOは、一言で「中間広告費がないから」とだけ答えた。これこそが拼多多の安さの秘密だと財経頭条が報じた。

 

それぞれに性格が異なる3つの中国EC

中国のECは「アリババ(Tmall+タオバオ)」「京東」(ジンドン)、「拼多多」(ピンドォドォ)が3強だ。

この3サービスは、それぞれに性格が異なっている。京東は全国に140カ所の物流センターを持ち、在庫を持つ。アマゾンに近いビジネスモデル。アリババは、TmallではBtoC、タオバオではCtoCのマッチングをするだけで、物流センターもなければ在庫も持たない。日本で言えば、楽天市場に近いビジネスモデル。

第3の拼多多は、とにかく価格を安くして、地方都市や農村に浸透をしている。いわゆる激安ECだ。販売されるものは、トイレットペーパーや洗剤、普段着などの日用品で、百円均一ショップや雑貨スーパーに並んでいる商品が中心。

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▲拼多多アプリ。アリババのようなクールなルックスではなく、テンセントのようなスクエアなルックスでもない。中国伝統の赤をあしらった賑やか、時としてうるさいデザインを採用をしている。しかし、これが拼多多の目指す「地方」「低所得者」には楽しく賑やかに移り、購買意欲が刺激される。

 

輸入品の扱いも始まり、日本にとっても無視できなくなった拼多多

拼多多は、2015年9月に創業し、それからわずか3年で米ナスダック市場に上場を果たしている。現在、会員数は4億人を超え、現在も成長中だ。超低価格商品が中心であったため、日本の商品サプライヤーは参入が難しく、日本で話題になることは少なかったが、拼多多は現在、輸入品を専門に扱う拼多多国際をスタートさせている。日本企業にとっても、無視できない存在になってきた。

 

最初から低所得者層と地方都市に狙いを定めた拼多多

拼多多は激安が売りになっているため、参加商店がいわゆる「偽物」「粗悪品」を出品する事態が続き、都市生活者からは「貧乏人のEC」とバカにされることも多かった。経営コンサルタントなどの間でも、購買力の小さい地方都市や農村に焦点を当てたECビジネスはうまくいかないという意見が多かった。

しかし、CEOは、最初から地方都市と農村に焦点を当てて、ビジネスを組み立てていた。一人一人の購買力は確かに小さく、価格が高くてアリババや京東を利用することができない。しかし、ECでの買い物を楽しんでみたいし、スマートフォンは持っているという人が地方にはたくさんいるのだ。

杭州市の出身で、浙江大学を卒業後、ウィスコンシン大学に留学。卒業後、エンジニアとしてグーグルに入社する。中国グーグルのオフィスの立ち上げに参加するために帰国し、その後、ゲーム関連とEC関連のスタートアップを起業。拼多多は3つ目の起業となり、これが大成功した。

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▲拼多多創業者のCEO。グーグル出身者で、常識からはうまくいかないと否定された地方、低所得者を焦点に当てた拼多多で、創業後わずか3年で、ナスダック上場を果たした。

 

お得に買うには商品をSNSでアピールする必要がある

は、拼多多のビジネスモデルを「コストコ+ディズニーランド」だと言っている。利用者はまず自分が買いたい商品をSNS「WeChat」でアピールをする。それに賛同した人が共同購入をする。共同購入者を集めれば集めるほど価格が安くなっていき、最大90%オフにまでなる。

従来のまとめ買いサイトと異なるのは、知り合いを集めたり、ただ共同購入者が増えるのを待っているだけでなく、自分で不特定多数の人に商品をアピールして、積極的に共同購入者を集める必要があることだ。そのためには、ただ商品を示すだけではなく、その商品のよさやどんなメリットがあるのかを訴え、人を惹きつける必要がある。そういう影響力を持った人ほど安く買える仕組みになっている。

つまり、小さなインフルエンサーである必要があり、自分の影響力が次第に強まっていくことが、単なる共同購入を超えた、消費者の楽しみになっている。安く買えたというお得感だけでなく、自分の努力や工夫が実る達成感も同時に感じられる仕組みになっている。

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▲ほぼ毎日セールが行われていて、日用品のほとんどは10元(160円以下)。品質についてはそれなりだが、超お買い得商品を見つけることが楽しみのひとつになっている。日本の100圴一ショップに近い感覚だ。

 

広告費が捻出できない弱小メーカーが出品をする

このため広告を打つことができない規模の商店、メーカーが多く参加をしている。主体となっているのは、地方の弱小メーカーだ。アリババや京東に納品をするには、数量面、価格面で難しく、ECの潮流から取り残されようとしていた中小メーカーが拼多多によって生き延びる道が与えられた。価格設定さえうまく行えば、あとは拼多多の利用者が宣伝をしてくれ、大量の購入者をまとめてくれるのだ。

単なる激安ECというだけでなく、発展する中国で取り残されつつあった地方の消費者と地方の中小メーカーに居場所を与えた功績も大きい。

販売側は低コストで大量の商品を販売することができ、消費者側は楽しみにながら激安商品を手にすることができる。消費というプロセスから、無駄なものをすべて削ぎ落として、再構築したようなビジネスモデルだ。

売れ筋の商品は10元から20元程度の激安商品だが、次第に家電製品や化粧品などの値の張る商品も売れるようになってきている。

アリババ、京東に次ぐ、第3のEC、ダークホースとして無視できない存在に成長してきている。

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