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ブロックチェーン電子領収書。深圳地下鉄も対応へ

深圳市で、ブロックチェーン技術を使った電子レシート、電子領収書が広がっている。その電子領収書が深圳地下鉄にまで対応して、ビジネスパーソンから歓迎されていると移動支付網が報じた。

 

経費申請に必要な電子領収書をスマホに送信

深圳市の街中消費では、ほとんどがスマホ決済で行われるようになっている。しかし、問題は紙の領収書だ。ある程度の規模の商店では、スマホ決済をしても紙のレシートを発行してくれるが、アリペイやWeChatペイアプリの中に利用履歴が出るので、多くの人は必要としていない。

一方で、会社の経費で食事をした場合、公共交通を利用した場合には、経費申請をするためにレシートや領収書が必要になる。

地下鉄の場合、領収書をもらうにはいったん有人の窓口に行かなければならない。それが面倒で、多くの人が自分のスマホ決済などで乗ってしまい、領収書をもらわず、経費申請をしていなかったが、わずか2元か3元のこととは言え、釈然としないものを感じていた人は多かった。

それが、深圳地鉄MTR港鉄といった鉄道機関、乗車決済システムのテンセント乗車コード、ブロックチェーン技術を開発するテンセントブロックチェーン、電子レシートシステムを開発したテンセント金融科技などが共同して、地下鉄の領収書をスマホから取得できるようにした。

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▲地下鉄の電子領収書。自動的にブロックチェーン記録との照合が行われ、会社の経理などに転送をすると、この領収書は消える。コピーは保存できるが、ブロックチェーンで所有者の管理もされているため、原本ではなくなる。

 

ブロックチェーン技術で、領収書を管理する

この電子領収書が発行できるのは、WeChatのミニプログラム「テンセント乗車コード」で地下鉄に乗車をした場合。発行の方法は何通りかあるが、乗車後に自分のスマホで乗車履歴を選び、発行するだけだ。テンセント乗車コードは、決済は自動的にWeChatペイから行われる。

この電子レシートを会社の経理に転送して経費精算をする。会社の経理は税務申告時に税務署にこの電子レシートを転送する。

この電子レシートは、発行から転送までのすべてがブロックチェーンで管理されていて、現在の所有者がすぐに分かる仕組みになっている。そのため、真正な電子レシートはこの世に1通しか存在しないため、複製をして多重申請する、偽造するなどという不正行為ができない。

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▲電子領収書の発行方法は3種類あるが、いずれも、要は決済履歴から項目を選んで、発行をするだけだ。「2秒でブロックチェーン電子領収書が発行」だという。

 

国が推進するブロックチェーン電子領収書

ブロックチェーン電子レシート、電子領収書は、国家税務総局が推進しているもので、深圳市税務局はすぐに対応をし、地元企業であるテンセントのもつブロックチェーン技術を採用することにした。2018年5月24日に、深圳市税務局とテンセントは「スマートタックスイノベーションラボ」を設立、ここでブロックチェーン電子領収書システムが開発された。

2018年8月10日には、早くも深圳市の国貿旋転レストランで電子領収書システムが採用された。それ以来、深圳市では電子領収書が急速に広がっている。金融、小売、飲食、ホテル、駐車場などで、具体的には招商銀行ウォルマート、百果園、深圳北駅、その他WeChatペイに対応している商店で導入されている。

現在、導入している商店は1000軒を超え、発行枚数は100万枚を超え、発行額面金額は13.3億元(約216億円)に達している。

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▲飲食店などで発行される電子領収書。見た目は紙の領収書と同じ形式で、紙領収書との整合を図っている。しかし、左上のQRコード、右上のハッシュコードを使うと、ブロックチェーンの記録と照合することができるようになっている。

 

領収書発行の手間も大幅に削減できる

今回、深圳地下鉄が対応したことで、電子領収書の普及にさらに弾みがつくと期待されている。深圳地下鉄では、テンセント乗車コードを利用する乗客が、1日に160万人あり、紙の領収書の発行枚数も1日16万枚に達していた。ブロックチェーン電子領収書システムが使えるようになり、1日17万枚の発行がされると見込まれている。

紙の領収書を発行するには、3分ほどの時間がかかる。合計で1日8500時間の人件費が節約でき、なおかつ紙のレシート発行コストも不要になるので、深圳地下鉄は毎年40万元(約650万円)の節約になると見込まれている。

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▲現在、地下鉄の電子領収書に対応しているのは、テンセント乗車コードを使って乗車した場合のみ。NFC方式のテンセント乗車カードも今後、電子領収書に対応すると見られている。

 

スマホ決済は入り口にすぎない。その先で何をするかが問われる

乗客にとっては、面倒な手間をかけずに領収書が取得でき、会社に経費申請をすることができたり、税務申告に利用することができる。商店側では、紙のレシート、領収書を発行するコストが節約できる。税務署では、税務申告書類の整理の手間が減り、なおかつ虚偽の申告による脱税が大きく減少すると期待されている。

移動支付網は、スマホ決済は「入口」にすぎないと言う。現金を電子に置き換えるキャッシュレス化だけでは大きな意味はない。決済履歴をデータ化することで、そこからどんなサービスを構築し、生活や業務をどのように効率化していくが重要なのだと言う。キャッシュレス決済はゴールではなく、ICT社会への入り口にすぎないのだ。

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