中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

シャオミーのらくらくホンは音声認識のキーボードいらず

小米(シャオミー)傘下の多親(ドゥオチン)のらくらくホン多親AI電話」がさまざまなメディア、ブロガーから高い評価を受けている。299元(約5000円)という価格もあるが、キーボード入力が苦手な高齢者向けに音声入力の機能を充実させたことが高評価の要因だ。

 

文字入力が苦手な中国人

中国人はキーボード入力が苦手だ。入力方法は、QWERTYキーボードからローマ字によるピンイン(読み)を入力して変換する方法、五筆と呼ばれる漢字の部品を組み合わせて入力する方法、手書き入力などがあるが、いずれも一長一短がある。

ピンイン入力ではまずQWERTYキーボードの配置がわからない。五筆入力では慣れが必要。手書き入力では時間がかかると、いずれの方法も問題がある。

そのため、中国では早くから音声入力が好まれてきた。SNS「WeChat」でも、若い世代はテキストに絵文字などをつけてメッセージをやり取りするが、中高年以上では音声でやり取りをする。一言喋って音声を送信、向こうがそれを聞いたら、音声で返すという声の電報的な使い方をしている。

中国で、高齢者向けの携帯電話をデザインする場合、この文字入力をどうするかは大きなテーマになる。

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▲余計なアプリはほとんど入っていないので、ホーム画面はすっきりしている。ほとんどの機能は音声アシスタント経由で使う。例えば、天気を調べるのに、天気予報アプリを立ち上げて操作するよりも、「明日の天気を教えて」と声で尋ねた方が簡単だという考え方だ。

 

声だけで使いこなせるAI電話

多親AI電話では、音声アシスタント「小愛同学」を搭載し、キーボードはテンキーのみにした(ガラケー方式で文字入力は可能)。小愛同学は小米のスマートスピーカーに搭載されているもので、SiriやGoogleアシスタントと同じように、声で命令する。タイマーを設定したり、カレンダーに予定を入力したり、電話をかけることができる。 さらに、音楽をかけたり、漫才を再生することもできる。

文字入力はテンキーからもできるが、ほとんど使われない。WeChatのメッセージなども音声そのままで送るか、音声でテキスト入力をして送る。

どうしてもテキスト入力が必要なのは、電話帳ぐらいだが、これにも多親助手というアプリが用意されている。電話帳データはクラウド保存されていて、これを他のスマートフォンなどから追加、編集できる機能だ。一般的には、息子などがこの多親助手を使って、親の電話帳を編集する。親は、声で「息子に電話して」「◯◯さんに電話して」「病院に電話して」などという言うだけで電話ができる。SIMカードに保存した電話帳にも対応している。

高齢者一人で設定から利用までさせるのではなく、若い世代のサポートがあること前提に設計されている。

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▲シャオミーの「多親AI電話」。音声アシスタントを使って、声で操作することを基本にしているため、高齢者向けのスマートフォンとして人気になっている。「天気」と聞くと、音声とテキストで答えてくれる。

 

カメラはないが、Bluetoothと赤外線対応で家電リモコンになる

一般的なスマホと比べると、カメラが搭載されてなく、画面が小さいので地図が表示できない、写真は表示できるが、動画の再生は厳しいなどの問題はある。

しかし、その他の機能は充実している。バッテリー待受は15日間、連続通話420分と、週末にでも充電をすればじゅうぶんな設計。

さらにありがたいのが赤外線に対応していて、家電の赤外線リモコンとしても使えることだ。設定の難易度はやや高いが、声でエアコンやテレビを操作することができるようになる。

 

出張族も2台目の電話として使っている

このAI電話は、高齢者向けとして販売されているが、ビジネスマンの出張用にも使われているようだ。なぜなら、SIMカードが2枚装着でき、同時に利用できるからだ。香港や海外に出張するときに、自分のSIMカードの他に現地のSIMカードを入れれば、本国からの電話を受けることもでき、現地でも電話をかけることができるようになる。

バッテリーの持ちもよく、価格も安いため、出張の時に2台目の電話として持っていく人が増えているという。

また、Androidではなく、独自のプラットフォームなので、アプリのダウンロードはできないが、WeChatが利用できるアプリが入っており、WeChatペイのスマホ決済も可能になっている。

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▲意外に好評なのが、ダブルSIMカード対応、ダブル待受対応だ。出張の多いビジネスマンから、仕事用スマホとしても人気があるという。

 

数万大規模で売れていると推測される

販売台数は公開されていないが、小米の直販サイト「小米有品」では、すでに売上が1600万元(約2.6億円)を突破したとアナウンスしている。2G版が199元、4G版が299元なので、購入されているのがすべて4G版だとしても、販売台数は5万台を突破していることになる。1機種で、しかも市場が限定されている製品としては、ヒット商品と呼んでいいだろう。発売は2018年の9月なので、まだ半年でしかない。最近になって話題に上ることが多くなっているため、さらに販売台数は伸びていくと見られている。