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中関村の栄枯盛衰を見守ってきた聖地「理想国際ビル」

北京のシリコンバレー「中関村」にある理想国際ビルは、百度、新浪、ofoなどが入居し、24時間灯りが消えることがないことから「中関村の宝石」とも呼ばれてきた。理想国際ビルに入居することが成功企業の証となり、中関村の栄枯盛衰を15年にわたって見守ってきたと人物が報じた。

 

「中関村の宝石」理想国際ビル

北京市四環西路58号にある理想国際ビルは、2004年に建設されて以来、北京のシリコンバレー中関村のシンボルであり続けてきた。早くからSNS「ウェイボー」を運営する新浪(シンラン)が入居し、その後、検索サイトを運営する百度バイドゥ)が入居した。さらに、シェアリング自転車のofoが入居し、24時間灯りが消えることのない「中関村の宝石」とも呼ばれた。しかし、現在、この3社はもうここにはいない。

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▲ガラス張りの理想国際ビルは、24時間灯りが絶えないことから「中関村の宝石」とも呼ばれ、中関村の聖地であり続けてきた。

 

成功したスタートアップの証「理想国際ビル」

新しい時代を築いたシェアリング自転車のofoは、2016年に理想国際ビルの10階、11階、15階を借り、成功したスタートアップであることを証明した。北京で起業する若者たちは、いつか事業を大きくして、この理想国際ビルにオフィスを構えることが夢になっているのだ。

ところが2017年末には、資金が不足しているという報道が流れ始め、2018年4月からは、資金や買収に関する観測報道が流れるようになり、ofoはその度に否定をし続けたが、同時に大規模なリストラを行っていった。2018年11月になって、家賃の安いインターネット金融センターに規模を縮小して移転した。ofoの都落ちだった。

このビルを管理する理想集団の毛煥華氏は言う。「理想国際ビルは、起業家の発射台なのです。ここから多くの企業が株式公開をしていきました」。このビルに、失敗をした企業が留まることは許されない。

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▲元ofoのオフィス。もぬけの殻になっている。経営状況が悪化したため、規模を縮小して、家賃の安いオフィスに都落ちした。

 

ビル壁面にロゴを掲げることが成功企業の証になる

2004年4月28日に、理想国際ビルがオープンした時、入居率はすでに60%を超えていた。その中に新浪がいた。新浪は入居すると、すぐにウェイボーなどで急成長をし、それを見て、百度も入居してきた。当時の北京は、まだ高層のオフィスビルが少なく、理想国際ビルは成功者のシンボルになっていった。

このビルでは、4500人が働いていたが、そのうちの3000人は新浪の社員だった。百度は当時まだ数百人規模の企業でしかなく、理想国際ビルの主人は新浪だったのだ。そのため、ビルの壁面には瞳をデザインした新浪のロゴの看板が掲げられた。

その後、mp3プレイヤー「月光宝盒」でサムスンソニーを抑えてトップシェアとなった愛国者が入居して、新浪の隣にロゴを掲げた。

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▲2017年にはofoのロゴが掲げられた。左側は投資会社の「エベレスト」。この2社がこの時の理想国際ビルの主人だった。

 

理想国際ビルが最も輝いた2005年

2005年に百度がナスダック市場に上場をすると、李彦宏CEOは、百度のロゴをビルに掲げることにこだわった。

しかし、管理をする理想集団は、規定では家賃を最も多く支払っている2つの企業しかロゴを掲げられないことになっていると拒否し続けた。交渉回数は数十回に及び、結局規定を改めて、百度のロゴをビルの側面に掲げることで落ち着いた。この理想国際ビルに自社ロゴを掲げるということが、成功した企業の面子にとって極めて重要なことだったのだ。

百度がナスダック市場に上場したことは、理想国際ビルの歴史にとって最も大きな事件だった。このビルから中国で成功した企業だけでなく、世界で成功した企業が誕生したのだ。しかも、一夜にして8人の1兆元級の富豪、50人の1千万元級の富豪、200人の百万元級の富豪が誕生した。理想国際ビルは、北京で最もたくさんの富豪が集まるビルになった。

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▲2005年、百度がナスダック市場に上場した時の記念写真。理想国際ビルは、中央の李彦宏CEOを始めとして、300人近い富豪が働くオフィスビルとなった。

 

成功して巣立った百度、新浪。都落ちする愛国者、ofo

しかし、この時を頂点として、理想国際ビルはその役割を終えていった。事業が拡大し続ける百度は2009年に自社ビルを建設して、理想国際ビルを巣立っていった。愛国者は事業を縮小してオリンピックセンターに転居した。新浪も2016年に自社ビルを建設して巣立っていった。理想国際ビルにロゴを掲げている3社がいずれも去っていった。

これに入れ替わるようにして入居したofoも、すでに退居している(2020年まで契約がある一部のオフィスは残っている)。

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▲事業を拡大する百度、新浪は自社ビルを建設して、理想国際ビルを巣立っていった。写真は北京市の新浪本部ビル。

 

主人不在の理想国際ビル

現在も、理想国際ビルに入居したいという企業は列をなしている。ofoの後には人工知能の商湯科技の入居が決まっている。しかし、今の理想国際ビルにはどの企業のロゴも掲げられていない。このビルの主人がまだ決まっていないからだ。今入居している企業の中からいずれロゴを掲げる企業が生まれ、成功して自社ビルに転居していくことになる。でなければ、ひっそりと都落ちをしていくかのいずれかだ。

理想国際ビルは、中関村のシンボルとして、中関村の栄枯盛衰を見守ってきた。

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