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200都市以上の公共交通が利用可能。WeChatの乗車カードはNFC採用

WeChatのミニプログラム「テンセント乗車カード」が出張族から歓迎されている。NFCを利用するため、交通カード感覚でタッチをするだけで全国200都市以上の地下鉄やバスに乗車できる。スマホ乗車の決定版になりそうだと捜狐が報じた。

 

都市ごとに異なる交通カード

中国でも、日本のSuicaにあたる交通カードがほぼすべての都市で使われている。あらかじめチャージをしておく方式で、市内の地下鉄、バスが利用でき、タクシーの料金を支払える都市も多い。ただし、大きな問題が存在する。それは市交通局が発行主体であるため、他の都市では使えないのだ。日本のSuicaなどの交通カードは相互乗り入れをしているので、日本国内であればほとんどの公共交通で利用することができるが、中国ではそれが進んでいない。一部、都市間で共通化を図っているところもあるが、どこのカードがどこで使えるのか分かりづらい。

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▲WeChatのミニプログラムとして提供される「テンセント乗車カード」。NFCである点が大きく、従来のQRコード方式よりも、素早く改札を通ることができる。

 

QRコードスマホ決済乗車が普及をした

この問題は、出張の多いビジネスマンの間で以前から問題になっていた。他都市に行った場合は、小銭を用意していちいち切符を買って地下鉄に乗らなければならないからだ。交通カードを買ってもいいが、チャージしたお金が無駄になる。

そこで、多くの都市でQRコード対応改札の導入が進んでいる。スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」などで乗車賃を支払えるもので、これであれば、出張先の都市についてから交通カードを買ったり、切符を買ったりしなくても、すぐに乗車できる。

 

スムースではないQRコード乗車

しかし、これにも不満がある。やはりQRコードをかざすというのは、交通カードに比べて手間がかかるということだ。バスに乗る前、改札を通る前に、アプリを起動しておかなければならない。さらに、QRコードの読み取りは速くなったとは言え、微妙な間が必要になる。NFCの交通カードであれば歩きながらタッチすればいい感覚だが、QRコードの場合はいったん立ち止まってかざさないとならない感覚だ。

 

NFC、200都市で使えるテンセント乗車カード

テンセントが運営するWeChatは、全国200都市以上で地下鉄やバスに乗車できるミニプグラム「テンセント乗車カード」をリリースした。これはQRコード方式ではなく、NFCを利用している。そのため、スマホを交通カードと同じ感覚で使って、地下鉄やバスに乗ることができる。出張族からは、「これが欲しかった!」と喜びの声が上がっている。

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▲10元以上チャージしておかないと乗車できないが、チャージはスマホ内でいつでもできる。

 

ようやくNFCスマホ乗車環境が整った

現在、Androidのみ対応で、支払いはポストペイではなく、事前チャージ方式。と言っても、スマホ内で紐づけた決済手段からいつでもチャージができる。専用アプリではなく、WeChatペイのミニプログラム方式での提供なので、WeChatを起動→テンセント乗車カードを表示→改札にタッチという手順が必要だが、ブックマークやショートカットに相当する機能もあり、テンセント乗車カードをホーム画面に追加することもできる。

テンセント乗車カードは、公共交通の新たな決済方式ではなく、以前からあるNFC交通カードの仕組みをそのまま利用している。そのため、交通局側では改札のハードウェア的な改修作業は必要ない。そのため、多くの都市が対応できた。

問題はNFCを利用するという点。スマートフォンNFCがほぼ標準装備されるようになったのは2017年頃で、まだNFC未対応のスマホを使っている人もかなりの数いる。そのためQRコード方式を利用する人も多いが、NFC対応スマホが普及をするにつれ、このテンセント乗車カードの利用率も上がっていくものと予想されている。中国も、ようやく日本の交通カード並みの環境が整った。