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投げ売りが止まらない電気自動車EV

電気自動車(EV)を使ったカーシェアリングサービスが不調で、各サービスが資産であるEVの販売を始めている。この影響でEVの中古市場価格が暴落していると第一電動が報じた。

 

相場の半値以下で買える中古電気自動車

EVの安売りが止まらない。中古相場2.3万元程度の康迪K10が8000元、中古相場2万元程度の知豆D1が1万元、中古相場3.1万元から5.8万元程度の北汽新能源EC200が3万元(1万元=約16万円)。2017年発売モデルの多くが新車価格の半分程度になり、2015年発売モデルになると、新車価格の1割を切っているものもある。電気自動車や新エネルギー車の投げ売りが始まっている。

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▲EVカーシェアリング蕃茄出行で使用されていたEV「北汽新能源EC200」は、走行キロ1万km程度のものが半値以下で中古市場に出ている。

 

カーシェア企業が投げ売りを始めている

投げ売りをしているのは、EVを使ったシェアリングサービスを運営している企業。カーシェアに使ったEVなどを低価格で売り出している。カーシェアに使われた車は、一人のオーナーではなく、いろいろな人が乗る。そのため、同じ走行キロであっても、車の状態はよくないことが多い。中古価格はどうしても安くなってしまうのだ。

例えば、2015年5月に発売になった康迪K10は、新車価格が15.08万元(約250万円)。これが政府の補助金を使って4.88万元(約80万円)で購入できた。それが8000元(約13万円)で売られている。しかも、走行キロ数はほとんどゼロで、まとめて1500台が売りに出されている。

2017年8月に発売になった北汽新能源EC200は、新車価格が15.88万元から16.48万元(約270万円)だった。これが政府の補助金を使うと、5.68万元から6.28万元(約104万円)で購入できた。これがシェアリングサービスで1年使われて、走行キロ1万キロ程度のものが3万元(約50万円)で売られている。

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▲康迪K10。フル充電で150kmの走行が可能。

 

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▲北汽新能源EC200。フル充電で162kmの走行が可能。


事業の黒字化が難しく、売り食いが始まった

なぜこんなことになっているのか。ある関係者は「EVのシェアリング業車の8割は今や中古車販売業者になっている」という。理由は「シェアリングビジネスは痩せるばかりで、車を売って少しは太らないとならない」と説明する。つまり、シェアリング事業の黒字化が難しいため、いよいよ資産を売却して売上を確保し始めたということだ。

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▲小魂狗租車のEVも大量に中古市場に流れている。事業の黒字化が難しいため、運転資金を確保するために、資産の売却が始まっている。

 

淘汰が始まっているEVカーシェア

EVシェアリングサービスは無数に登場したが、すでに淘汰の時期に入っている。2017年3月に倒産した友友用車を皮切りに、巴歌出行、途歌は給料の未払いが発生し、易到用車は経営難が伝えられている。多くのシェアリングサービスが資金不足により綱渡り状態の経営になっていて、資産を売却して運転資金を確保しなければならないところに追い込まれている。彼らが最も恐れているのは、投資資金が途絶えることだ。投資家たちが首を振った瞬間に、倒産を免れなくなる。

もちろん、すべてのシェアリングサービスがこうなっているわけではない。複数都市でサービスを展開する企業だけでも30社以上あり、ローカルなものまで含めるとその数は相当なものに登る。このサービスの淘汰が始まっている。

 

中古車市場への影響が大きすぎる

心配されるのは、中古車市場への影響だ。あまりに低価格の投げ売りであるため、この傾向が続くと、一般の中古車市場は太刀打ちすることができなくなってしまう。シェアリングサービスは無限に車を持っているわけではないので、時期が過ぎれば中古車価格も適正なものに戻るだろうが、それを乗り切ることができない中古車業者も出てくることになる。

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▲有車出行のEVも中古市場に流れている。

 

格安中古EVを農村などに流す仕組みが必要

第一電動の筆者である電動汽車観察者は、このような低価格中古車を、農村や地方都市に優先して販売する仕組みが必要だと訴えている。EVに対しては、多くの人がちゃんと使えるのかどうか、充電は煩わしくないのかなど不安を持っている。そのため、最初は中古車を購入し、それから新車に乗り換える人が多いという。

この低価格中古車を、まだ、EVがほとんど普及していない地区に販売をすることができれば、このEV普及にとって難しい事態をEVの普及策に転換することができると提言している。

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