中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

EC時代でも生き残るしぶとい3つの業種

ECが発達した中国では、昔ながらの個人商店が消えていっている。大都市ではすぐに再開発されてショッピングモールになってしまうが、地方ではシャッターが閉じたままのシャッター商店街のような場所も生まれている。しかし、その中でも生き残るしぶとい3つの業種があると天天快報が報じた。

 

シャッター商店街でも生き残るしぶとい業種

日本でも各地に存在するシャッター商店街中小企業庁平成27年度に行った「商店街実態調査」によると、空き店舗率は平均で13.17%、さらにチェーン店舗の割合が7.3%。現在の状況については、「繁栄している」2.2%、「繁栄の兆しがある」3.1%に対して、「衰退している」35.3%、「衰退の恐れがある」31.6%となっている。活気のある商店街は約5%、6割以上が衰退を感じている商店街ということになる。

ところが生き残っているしぶとい業種がある。食堂、居酒屋、床屋、美容室、マッサージ店という自分の体を持っていかなければならないサービス。クリーニングのようにネット化が難しいサービス。仏花を扱う花屋、処方箋薬局などお寺や病院といった施設と共存する小売業などだ。

 

中国でもシャッター街が生まれている

中国でも、ECが急速に普及をしたため、街中の個人商店が次第に衰退している。最近ではアリババが「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)とスーパーとECを融合した生鮮食料サービスを始めたため、街中の八百屋、果物屋、肉屋、魚屋といった生鮮食料品店も影響を受け始めていると言われる。

その中で、天天快報は、ECの影響を受けず、しぶとく生き残っている3つの業種を紹介している。

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▲100円ショップなどで販売される日用品の大規模問屋街、浙江省義烏市もシャッター街が現れ始めている。ECの普及により、オンラインで取引できるようになってきたからだ。

 

理髪店:ECでは買えない散髪サービス

日本と同じ理由で、理髪店もしぶとく生き残っている。ただし、理髪店同士の競争はあるという。以前は、シャンプーをして、カット、ドライヤー、髭剃り、眉毛剃りなどサービスを多くしていくのが流行だったが、現在は、自分好みの髪型に仕上げてくれる理髪店が人気で、その地域ごと、世代ごとに人気の理容師がいる。また、一人の理容師が1日に対応できる客数には限界があるため、人気店になれば経営は安定しているという。

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▲伝統的な床屋もしぶとく生き残っている。路上で床屋を開くケースもけっこうある。写真は、老人などに対する感謝イベント。無料で散髪サービスを提供している。

 

マッサージ店:うまくいかないECの派遣サービス

マッサージもECで注文して、自宅などに派遣するサービスがある。しかし、あまり使われていない。マッサージを受けるには、固い寝台や足湯を入れる大きな桶などが必要で、このようなものを持参して訪問すると、どうしてもコストがかかり、価格が高くなる。近所にあるのであれば、自分で行って、そこで店主や知り合いと世間話をする方を多くの人が好んでいる。

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▲地方にある足裏マッサージ店。こんな店でもけっこうお客はくる。多くのマッサージ師が中学を卒業してすぐに修行をするので、技術レベルが高いからだ。

 

酒タバコ店:ネットで話題になる「謎の店」

中国旅行をされた時に、店内が金ぴかに光っている酒とタバコが置いてある店を見たことがある人も多いはず。この酒タバコ店は、中国の若者にとっても謎の店のようで、ネットでしばしば「客がいるところを見たことがないのに、どうしてつぶれないの?」と話題になる。

この酒とタバコは贈答品なのだ。結婚式、中秋、春節といった時に、酒とタバコを送り合う習慣がいまだに残っている。多くの店が中秋と春節の売上が、全体の6割程度なのだという。また、レストラン、企業の贈答品などの固定客をつかんでいる店も多い。

贈答品中心なので、多くの人が割引については厳しい要求をしない。ほぼ定価に近い価格で販売できるため、利益率は高い。一般客がまったくこなくても、経営には影響しないのだ。

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▲赤と金色でピカピカ光っている酒タバコ店。中国の若いネット民からも「なんでつぶれないの?」と不思議がられている。贈答品需要があるため、一般客はこなくてもいいのだ。

 

店舗を構え、存在を認識してもらうことが大切

このようなビジネスであれば、店舗すら不要のような気がするが、「あそこにお店がある」ということを知ってもらうことで、大口客をつかむことができる。お客は入らなくても、人通りの多い場所に出店し、窓を大きくし、ドアも透明にし、赤や金ぴかの商品を並べて目立つことが重要なのだ。

最近では、スーパーやECでも酒タバコは買える。しかも、酒タバコ店よりも安く買える。しかし、割引で安く買ったものを人に贈るというのは、中国人にとって、相手をバカにしていることにつながってしまう。そのため、高くても昔からある酒タバコ店で購入する。

中国はどこの都市でも、猛烈な勢いでショッピングモールが建設されている。勢いのある杭州市では、2019年中に20カ所のショッピンモールがオープンする予定だ。すでにモール同士の競争になっていて、人気がない廃墟のようにしか思えないモールも見られるようになっている。

日本でも進行している個人商店の消滅も、中国では倍速で進んでいる。