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2019年のスマホ決済。公共交通と病院での普及が課題

中国支払清算協会のスマホ決済・ネット決済応用工作委員会は、「2018年スマホ決済利用者調査研究報告」を公開した。これによると、2018年はスマホ決済が地方や中高年まで広がったが、公共交通や病院への普及がまだ課題になっていると雷峰網が報じた。

 

2018年は、地方と中高年にスマホ決済が広がり始めた

中国の「アリペイ」「WeChatペイ」のスマホ決済は、都市部では主流の決済方式であるところまで普及をしている。調査会社Ipos Chinaの統計によると、一級都市の利用者割合は90.4%、二級都市で93.5%、三級都市で92.4%とほぼ普及を完了している。しかし、地方都市や農村ではまだまだで、中国全体の利用者比率は76.9%(2017年)となる。

しかし、2018年は地方都市や農村、また中高年にも広がった。

地域別のスマホ決済利用者割合の2017年と2018年の比較を見ると、地方都市以下での増加が著しい。また、世代別を見ても、31歳以上で伸びている。今まで都市部で急速に普及をしたスマホ決済が、地方や中高年にも急速に普及をしたのが2018年だった。ただし、農村の伸び率はそれでも大きくはなく、今後の課題となっている。

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スマホ決済利用者数の伸び率の変化。直轄市省都などの大都市では普及が完了し、伸び率が低下し始めている。一方、地方都市以下で、伸び率が上昇しているが、まだまだ十分ではない。

 

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スマホ決済利用者数の年齢別の伸び率の変化。30歳以下ではすでに普及が進み、伸び率は低下した。一方で、中高年以上で伸び率が上昇している。

 

不満は「安全性」、不安は「個人情報流出

利用者の不満に対する回答では、「安全性に不安」が高く、しかも2018年になって伸びている。送金が手軽にできることから、電話で送金するように誘導する特殊詐欺が増えており、そこに不安を感じている人が多い。

また、「スマホの速度が遅い」「利用できない場所がある」という不満は相変わらず高いが、2018年では減少して、次第に解決しつつあるようだ。

一方で、「利用限度額が小さい」という不満が目立って伸びており、さまざまな局面でスマホ決済が利用されていることがうかがえる。

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スマホ決済に対する不満。「スマホの速度が遅い」「利用できない場所がある」は減少。一方で「利用限度額が小さい」という不満が大きく増えている。

 

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スマホ決済に対する不安。やはり個人情報の流出を多くの人が心配をしている。個人情報が流出すると、特殊詐欺や理財商品の勧誘などに利用されるからだ。

 

公共料金、チケット、旅費への利用はまだまだこれから

どのような支払いにスマホ決済を使っているかを尋ねると、1位にきたのは理財商品だった。この多くはアリペイの「余額宝」、WeChatペイの「零銭通」などスマホ決済付属の理財商品だ。資金を入れておくだけで自動的に債権をまとめ買いしてくれ、利息がつくというサービスだ。

生活関連の日常消費にスマホ決済を使っているのは当然としても、公共料金や映画のチケット、出張旅費などの利用率はさほど高くない。これは、スマホ決済にまだ対応をしてないケースがあるためで、2019年はこのような場所でスマホ決済が進むことが望まれている。

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スマホ決済を利用している対象。理財商品、生活支出は当然としても、その他の「公共料金」「チケット」「旅費」などはまだまだ利用が限定的だ。

 

公共交通では交通カード、NFCQRコードが三分

地下鉄、バスなどの公共交通でどのような決済方式を使っているかを尋ねたところ、QRコード決済が最も多くなったが、交通カードもまだまだ23.1%いる。これは地域によって、まだスマホ決済に対応していない公共交通があるからだ。

交通カードは持っていかなければならない、忘れたり、落としたりする可能性がある。現金をチャージしなければならない。そういう煩わしさが残っている。スマホであれば、持っていくのは当然、忘れてもすぐに気がつく、ロックがかかっているので悪用される心配がない、チャージをすることも不要。そういった理由から、多くの人がスマホ決済の方が利便性が高いと感じている。

ただし、タッチするだけでいいNFC方式と事前にQRコードを表示しなければならないQRコード方式はほぼ同じ割合で、スマホ決済を二分している。これは、NFCチップが搭載されていない古いスマホがまだまだ使われているからだ。多くの都市で、NFCQRの二本立て対応を進めている。

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▲地下鉄、バスなどの公共交通に乗るときに使う決済方式。交通カード、QRNFCがほぼ均衡している。

 

高速道路では、ナンバー読み取り決済が伸びている

また、高速道路もまだまだスマホ決済が浸透してなく、半数以上がETCを使っている。最も便利なのは、ナンバー読み取りで、徐行して通過するだけで自動的に高速料金が支払われる。ただし、まだまだ対応している料金所がじゅうぶんではない。

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▲高速道路での決済方式。まだ対応している料金所が多くないため、ETCが圧倒的。一方で、ナンバーを読み取り、自動でスマホ決済する方式が増えてきている。

 

病院のスマホ決済が今後の課題になる

スマホ決済に対応してほしい場所を尋ねたところ、「公共交通」「病院」「高速道路」が上位にきた。病院もスマホ決済に対応していないところが多い。病院は、以前から独自の決済システム(電子マネー+診察券)を導入しているところが多く、スマホ決済を導入すると、独自決済システムとの二系統になってしまうことから、意外にスマホ決済が進んでいない。

現在、公共交通に関しては地方都市も続々とスマホ決済への対応が始まっていて、高速道路も料金所の改修が始まっている。2019年は、このような場所でのスマホ決済が進む年になると期待されている。

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スマホ決済を利用できるようにしてほしい場所。公共交通の対応は急速に進んでいるが、病院以下はまだ対応が進んでいない地域が多い。