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キャッシュレス決済が遅れているベトナムで、普及をするmomo

FT Confidential Researchは、東南アジア各国のキャッシュレス決済アンケートを行い、その結果を公開した。現金派が最も少ないのはマレーシア、最も現金派が多いのがベトナムだった。しかし、ベトナムではmomoやZaloPayの銀行口座不要のキャッシュレス決済ツールが普及し始めている。

 

キャッシュレスに遅れをとるベトナム。それでも現金派は半分以下

東南アジア諸国は意外にキャッシュレス決済が普及をしている。FT Confidential Researchが各国の都市居住者の「日常消費にもっぱら現金を使っている人」の割合を調べたところ、最低はマレーシアの18%、最高はベトナムの46%となった。ベトナム政府は2020年までに都市での現金使用率を50%以下にする目標を立てていて、その目標は達成できそうだが、東南アジア各国にキャッシュレス決済で遅れをとっていることが明らかになった。


GIỚI THIỆU CÔNG TY MOMO

▲momoのプロモーションビデオ。公共料金などの支払いにも対応している。リーダー、レジなどの装置、銀行口座などが一切不要であることが普及のカギとなった。

 

スマホは普及、しかし銀行口座が普及しない

その大きな理由が、銀行口座の保有率が59%と、周辺国に比べて著しく低いことだ。ベトナム政府も2020年に70%達成を目標にしているが、その目標を達成したとしても周辺諸国よりも低い状況だ。

一方、都市の若者層を中心にスマートフォンの普及は進んでいる。都市部で70%、農村部でも50%程度にはなっている。

この状況の中で、ベトナム政府も「銀行口座がなくても利用できるスマホ決済」を後押ししており、現在急速にスマホ決済が拡大している。

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▲momoは送金先を相手の携帯電話番号で指定するというシンプルな方式だ。

 

ベトナムスマホ決済は、momoとZaloPayが2強

その中でも、もっとも急成長しているスマホ決済がmomoだ。2007年に創業し、2013年にはゴールドマンサックスから575万ドル、2017年にはゴールドマンサックスやスタンダードチャータード銀行などから2800万ドルの資金調達をし、すでに利用者数が1000万人を突破している。

momoは、NFCリーダーなどの装置を必要としない。携帯電話番号を入力して、送金先を指定するというシンプルな方式だ。水道光熱費などもmomoで支払えなど普及している。

momoに続くのが、SNSアプリZaloの決済機能ZaloPayだ。SNSに決済機能がくっついた形のもので、中国のWeChatペイや日本のLINE Payと似たスタイル。利用者は1億人を突破(ベトナムの人口は9000万人程度)しているというが、これはSNS利用者のことで、ペイメント機能の利用者がどのくらいかは不明だが、キャッシュレス決済利用者の約3割程度が利用していると見られる。

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▲ZaloPayは、SNS「Zalo」に付属した決済ツールなので、相手をSNSの中から選択をする。

 

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NFC決済は、サムスンペイが一部普及をしているが、リーダーが必要であるため普及は限定的。

 

銀行口座不要が普及の原動力になった

このようなキャッシュレス決済が普及をしている理由のひとつが「銀行口座不要」というものだ。銀行もスマホを利用してオンラインバンキングを進めて、利用者の利便性を向上させているが、オンラインバンキングには月額利用料が必要など、利用者からは歓迎されていない。

しかし、ベトナム政府は、最終的にこのようなキャッシュレス決済も、銀行口座と紐づけることを義務付ける方針を打ち出しているため、momoもZaloPayも銀行との提携を進めている。ベトナム政府は、単にキャッシュレス決済を普及させるだけでなく、個人ローンや信用スコアなど包括的なフィンテックサービスを成長させるため、銀行口座の普及率を上げることが重点政策だと考えているようだ。

そのためには、銀行側が変わる必要がある。手軽に銀行口座を持てるようにし、モバイルバンキングの手数料を無料に近くする必要がある。ベトナム政府は、2019年第3四半期までに、銀行口座の改革案を提出するよう、ベトナム国家銀行に求めている。この内容次第で、立ち遅れていたベトナムのキャッシュレス決済が急速に普及する可能性がある。

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▲momoは、ポイント還元、割引などのキャンペーンをたびたび行っていて、銀行口座不要ということから、最も普及をしている。