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居場所を見つけた無人コンビニ。鉄道駅、空港で24時間営業

急速に普及をして、急速に消えていった中国の無人コンビニ。しかし、その無人コンビニがうってつけの居場所を見つけた。鉄道駅と空港だ。さらに無人レストランも開店し、24時間眠らない鉄道駅と空港で利用者から好評を得ているとUR資訊が報じた。

 

壮大な社会実験を経て見つけた「駅と空港」

この2年ほど、大きな話題になり続けた無人コンビニも、次第に話題に上らなくなくなり、街中で見かけることも珍しくなった。壮大な社会実験を経て、結局、無人コンビニはオフィスビルの中など限定された場所で、「大型の自動販売機」感覚で利用するものという結論に落ち着いたようだ。

しかし、昨年末から鉄道駅や空港に無人コンビニが登場し始めている。無人コンビニは新たな居場所を発見したかもしれない。なぜなら、中国の大規模な空港、鉄道駅は24時間動いているが、レストランや売店のような施設は夜11時、12時には閉店してしまうからだ。無人コンビニであれば24時間営業が可能になり、乗客の利便性が上がる。

 

フフホト駅に無人コンビニが登場

2018年12月28日、内モンゴル自治区のフフホト駅に、無人コンビニが開店した。京東(ジンドン)の無人コンビニ「X無人スーパー」だ。店舗面積は100平米で、コンビニとしてはゆったりしている。利用するには事前に専用アプリをインストールし、アカウントを作成しておく必要がある。入店するには、入り口のQRコードを読み取るだけで顔認証される。商品はそのまま自分のバッグに入れて、出口のゲートを通るだけで、電子タグが認識され、決済が自動的に行われる。

店内には、休憩スペースなどもあり、無料で閲覧できる図書なども備えられている。

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内モンゴル自治区のフフホト駅に開店した京東の無人コンビニ「X無人スーパー」。24時間眠らない駅で、24時間営業ができる無人コンビニが好評だ。

 

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▲「X無人スーパー」の中には、無料休憩スペースもある。パソコンなども用意され、ビジネスマンにも好評だ。

 

上海虹橋空港無人コンビニ、青島北駅には無人レストランも

1月21日には、上海虹橋空港に雲拿科技の無人コンビニが開店した。「アリペイ」「WeChatペイ」などのスマホ決済のQRコードをかざして入店ゲートを通り、そのまま出口のゲートを通れば決済が自動的に行われる。こちらは電子タグではなく、店内カメラによる映像処理で、どの客がどの商品を手に取ったかを捕捉する。

さらに、青島北駅には無人レストランが登場した。電子レンジで加熱した料理が主体だが、10数種類のメニューが用意され、各メニューとも300食以上の在庫を持つことができ、1日2000食の販売を見込んでいる。

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▲上海虹橋空港の国内線第2ターミナルに開店した「雲拿無人コンビニ」。こちらの営業時間は、ターミナルの営業時間に合わせて朝7時から夜9時までになっている。

 

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▲「雲拿無人コンビニ」では、スマホ決済のQRコードをゲートにかざして入店する。

 

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▲「雲拿無人コンビニ」では、商品は勝手に持っていっていい。画像解析により自動的に決済が行われる。

 

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▲青島北駅にオープンした無人レストラン。パネルで料理を選び、スマホ決済する。

 

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▲注文した料理は、ロッカーから出てくる。レストランが混雑、閉店している時にも温かい食事が取れると好評だ。

 

あのBingoBoxも杭州空港に開店

また、2018年6月には杭州空港に無人コンビニ「BingoBox」がオープンしている。BingoBoxは、無人コンビニという分野に先鞭をつけたスタートアップで、2017年に上海に1号店を出し、1年以内に5000店舗に拡大をすると宣言した。しかし、ユーザー体験の悪さから苦戦をし、現在もまだ営業をしている店舗はあるものの、話題に上ることは少なくなっていた。

しかし、杭州空港の店舗は違い、多くの利用客がある。飛行機の中での飲料、お菓子、杭州みやげなどがよく売れているという。営業時間は始発便から最終便までのターミナル時間に合わせているが、他の店舗は早朝、深夜は営業していないところが多いからだ。

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杭州空港にも無人コンビニのパイオニア「BingoBox」がオープンしている。

 

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▲飛行機の中で食べる菓子類や飲料、また杭州特産のお土産などがよく売れている。

 

有人コンビニに負ける無人コンビニ。「24時間営業」が生き残りの鍵

街中の無人コンビニの問題点は、有人コンビニよりもユーザー体験が悪かったことだ。入店するのにいちいち認証をしなければならない。普通のコンビニであれば、認証などしなくても入ることができる。レジでの決済もスマホ決済が普及をしているので、有人レジでも面倒ではなく、むしろ無人コンビニでは自分で商品を認識させなければならない分、余計に手間がかかる。多くの人が、無人コンビニと有人コンビニが並んでいたら、有人コンビニの方を選ぶ。

しかし、24時間営業の空港や駅などでは無人コンビニが活きてくる。多くの施設が夜11時、12時には閉店してしまい、深夜や早朝には自動販売機程度しか使えなくなる。そのような場所では、低コストで24時間営業できる無人コンビニは意味がある施設になる。

京東は鉄道駅、雲拿科技は空港に無人コンビニを展開していく計画を発表している。特に雲拿科技は、中国だけでなく、米国、日本、韓国に2019年中に300店舗を展開するとしている。