中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ネット消費をリードするZ世代のキーワードは「ものぐさ」「自宅」「アイドル」

中国の調査会社QuestMobileは、「QuestMobile中国携帯電話インターネット2018年度大報告」を公開した。これによると、24歳以下の「Z世代」と呼ばれる世代が3割を超え、ネット消費を牽引している。Z世代のキーワードは「ものぐさ」「自宅」「アイドル」だと分析している。

 

中国ネットは過去4回の爆発的成長期を経てきた

調査会社QuestMobileが公開した「QuestMobile中国携帯電話インターネット2018年度大報告」によると、2018年末でネット利用者数が11.3億人に達した。2018年の1年間で、約4600万人増えたことになる。

1人が平均して1日にネットを341.2分(約5.7時間)にもなり、2017年末から63分増加した。

中国のインターネットは、過去4回の爆発的な成長期を経てきている。第1波は1999年のPCの普及。第2波は2004年のPC版のSNSの普及(百度テンセントQQなど)。第3波は2014年のECの普及(アリババ、京東など)。そして、第4波が2018年のモバイルとの融合だ。この波のたびに、一気にインターネット利用者を増やしてきた。特に第4波では、スマホからのモバイルインターネットユーザーの伸びがめざましく、ネットアクセスの95%以上はすでにスマホからになっている。

 

アプリではなく、ミニプログラムが主流になりつつある

これに大きく貢献したのが、テンセントWeChatのミニプログラムだ。ミニプログラムは、WeChatのアプリ内アプリで、ファストフードや列車予約などのミニプログラムが利用できる。インストールをする必要はなく、検索をして見つけるか、ブックマークをしておくことで利用できる。その利便性から利用者が急増し、各サービス提供企業はこぞってこのミニプログラムを公開している。

MAU(月間アクティブユーザー数)が500万人以上の、よく使われているミニプログラムは、2018年6月に133件だったものが、同年12月には209件に急増している。これによりWeChatの利用時間も、1日80分だったものが、85.8分に伸びている。

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▲WeChatペイ、アリペイなどのスマホ決済にはミニプログラムの機能がある。アプリを入れておかなくても、簡単にアプリと同様の機能があるミニプログラムを起動できる。多くがそのままスマホ決済まで行える。

 

Z世代がネット商品を牽引している

このようなインターネットの成長を支えているのが、24歳以下の若者世代で、「Z世代」と呼ばれる。これはワールドワイドなマーケティング用語で、1960-1974年生まれまでを「X世代」、1975-1994年生まれまでを「Y世代」と呼び、1995年以降の世代を「Z世代」と呼ぶ。

この世代は、全ネット利用者の3割超にすぎないが、ネット利用とネット商品の中心的な存在になっている。

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▲ファッション傾向も世代によって大きく違っている。80年代生まれは「快適」、90年代生まれは「美しい」、Z世代は「自由」がキーワードになっている。iResearch「95年代生まれ、流行消費報告」より。

 

Z世代の「ものぐさ消費」

このZ世代の特徴は、「ものぐさ」「自宅志向」「アイドル」の3つだ。ものぐさとは、家事などの仕事を委託してしまうこと。「飲食」では外売(出前)、宅配スーパーを利用し、ファストフードを好む。また、薬の宅配、代理購入、荷物の引き取りなどの代行サービスを使い、自分では外を出歩かない傾向にある。また、家電修理、引っ越し、清掃なども代行サービスを利用し、自分ではしない傾向が出てきている。一方で、自分の体に対するサービスを好み、美容院、美容整体、ネイル、マッサージなどを好む。

このような「ものぐさ消費」をするユーザーの年齢別構成を見ていると、Z世代が半分近くになり、Z世代がものぐさ消費を牽引していることがわかる。

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▲外売サービスなどの「ものぐさ消費」をする世代別割合。半数近くがZ世代で、ネット消費の中心になっていることがわかる。

 

急変している娯楽の嗜好

娯楽面では、圧倒的に自宅で楽しめるものを志向する。「ゲーム」「アニメ」「動画共有サイト」「小説」だ。ゲームの世界では、典型的なスマホゲームであるカジュアルゲームは影を潜め、eSport的なMOBA(Multiuser Online Battle Arena)、シューティング(一人称視点、三人称視点)、MMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game)などに移っている。

また、動画は、中国全体ではTik Tokなどのショートムービーに移っているが、Z世代は、それに加えて、「弾幕」と呼ばれるニコニコ動画的な映像に大量の字幕が表示されるタイプの共有サイトを楽しんでいる。人気なのは「鬼畜」と呼ばれる残虐性の強いアニメ、海外の音楽や映画のセリフを無理やり中国語として聞く「空耳」、ネットミーム動画をいじるパロディ動画などだ。特に、肥料会社「金坷垃」のCM映像は、そもそもがネットから拾った人物写真をキャラクターにしたり、CMの内容もむちゃくちゃであるため、ネット民に大受けをし、大量のパロディ動画が共有されている。

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▲Z世代の娯楽傾向。「遊ぶ」と答えた全体平均を100とした場合のZ世代の回答率。ゲーム関連が上位にきており、MOBA、シューティングゲームなどを「やる」「見る」が娯楽の中心になっている。

 

https://www.bilibili.com/video/av32924885/

▲典型的な中国の鬼畜映像。鬼畜といっても残虐なだけではなく、暴力表現などの規制を気にせず作られた映像程度の意味だ。ニコニコ動画の方式が中国でも人気で、弾幕と呼ばれる。

 

▲中国で人気の肥料会社「金坷垃」のCM。アメリカ人が肥料を運んでいると、アフリカ人と日本人が立ちふさがって、肥料を譲ってほしいと頼む内容。3人とも怪しげな中国語を使っているところが爆笑なのだという。また、トラックに描かれた米国人は、金坷垃とはまったく関係のないネットのフリー素材。アメリカ・サンディエゴと謳っているが、金坷垃は米国との関係はまったくない。あらゆることがいい加減すぎて、ネットユーザーの間でネタ映像として人気になっている。

 

アイドルを起点に拡大するZ世代消費

Z世代に対して、アイドルが大きな影響力を持ち始めている。韓流アイドルだけでなく、最近では中華圏の男性アイドル、女性アイドルも人気で、ほぼ全員が個人的なウェイボーやTik Tokのアカウントで情報発信をしている。このようなアイドルが、企業から契約に基づいて商品の宣伝をすることもあるし、個人的に自分の好きな商品を紹介することもある。このような商品が売れている。アイドルが、インフルエンサーとしても機能し始めている。

Z世代にどのようなアイドル消費の経験があるかを尋ねたところ、実際にイベント参加などをした経験がある人は少数であるものの、アイドル周辺の商品を購入した経験がある人の割合が高いことがわかった。多くのアイドルがすでにインフルエンサーとしても活動している。

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▲Z世代のアイドル関連消費の経験割合。アイドルへの投票、イベント参加などの直接のアイドル消費をしている人は多くないものの、公式グッズの購入やアイドルが勧める商品の購入は多くの人が経験している。アイドルがインフルエンサーとして機能している。

 

Z世代の消費性向が中国社会の主流になっていく

Z世代は、高校生、大学生、新社会人であり、10年後には社会活動の中心的な存在になっていく。その時に、アイドルではなく、より大人のインフルエンサーを志向している可能性はあるが、「ものぐさ消費」「自宅志向」「インフルエンサー消費」という傾向は続くと考えるのが妥当だ。中国のネット消費は、この3つのキーワードがますます存在感を増していくことになる。