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中国人の運転は荒っぽいのか?いちばん荒いのは上海人

日本人から見ると、中国人の運転は荒っぽく見える。実際のところどうなのか。斑馬智行は、スマートナビゲーションシステムから得られたビッグデータを分析し、「2018運転行為報告」を公開した。これによると、最も運転が荒いのは上海人であることが明らかになったと城市戦争が報じた。

 

中国人の荒っぽい運転を見える化した「2018運転行為報告」

中国人の運転は荒っぽい。というよりめちゃくちゃというイメージを抱いている人は多いはず。確かに、クラクションを頻繁に鳴らし、割り込みをし、反対車線を逆走したり、歩道を走るなどというのも当たり前、歩行者は青信号で横断歩道を渡る時ですら気を抜けないというイメージがある。しかし、ここ5年か10年ほどで、運転マナーは驚くほど改善されてきた。それでも日本人の感覚では、まだまだ荒っぽいと感じることだろう。

実際、中国人の運転は荒っぽいのか。斑馬智行が「2018運転行為報告」を公開した。この中で、各都市別にどのような運転をしているのかが明らかになった。

 

スマホとナビが連動する斑馬智行のシステム

斑馬智行は、アリババと上海汽車による合弁会社で、自動車のスマートシステムを開発している。簡単に言えば、スマートフォン対応のカーナビのようなシステムだ。スマホアプリで、ルート検索などを行なっておくと、クラウド経由でその情報が自動車内のカーナビに保存されている。スマホがスマートキーになるので、ドアをアンロックし、スタートボタンを押してエンジンをかけると、先ほどスマホで検索したルートがすでに設定されている。ルート検索は、もちろん渋滞情報を加味したものになる。

これだけでなく、加速度センサーが内蔵されているので、急加速や急ブレーキなどの運転行動も記録される。さらに、駐車場などの周辺検索や自動車保険などの機能もあり、自動車所有のすべてのプラットフォーム化を狙っている。つまり、斑馬智行は、スマートシステムから得られる加速度センサーデータから、利用者がどのような運転行動を知ることができる。それをまとめたのが、「2018運転行為報告」だ。

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▲斑馬智行のスマートシステム。車載ナビとスマホが連動をする。事前にスマホで目的地を設定しておくと、その情報が車載ナビに転送されるなど、利便性も高い。加速度センサーが内蔵され、運転行動も取得されている。

 

上海人は年間1231回の急ブレーキを踏む

上海人は、急加速が平均で年に439回もあり、全国平均の149.68%になっている。さらに、急ブレーキの回数も1231回、速度超過も330回と高く、運転が荒いことがわかる。ひとつの理由は、上海が大都市であり、生活のリズムが早いことだ。しかし、意外にも上海は道路状況が整っている。高架の高速が発達し、下道も広く車線数が多い。そのため、スピードを出しやすいという前提があることを忘れてはいけないとしている。

同じ規模の都市である北京は、急加速229回、急ブレーキ977回、速度超過134回と、上海よりは低い。北京人も生活のリズムは早いが、北京は道路状況がよくなく、常に渋滞をしていることが大きく影響している。

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▲連休になると高速道路はこのありさまになる。市内も朝夕のラッシュ時には渋滞が激しい。荒っぽい運転をしようにもできないという事情が北京にはある。上海も事情は似ているが、市街地が郊外まで広がり、道路事情がよくなっているため、荒っぽい運転になっていると思われる。

 

渋滞の北京は移動距離が少ない。チベットは移動距離が長い

北京人は、年の平均移動距離が1万1132kmと統計の対象となっている都市の中で最も少ない。やはり北京では渋滞が激しいため、さらには市内中心部に入れるナンバー制限などをしているため、自動車を使わなくても済む時は公共交通を使うのだと思われる。

移動距離が最も高かったのは、チベット。次が海南島だった。両者とも風光明媚なリゾート地であり、公共交通は乏しいため、自動車を使う機会が多いのだと思われる。

 

坂の街重慶では急右左折が多い

急右左折を最もするのは重慶の1294回だった。重慶は長江に山地が迫った坂の多い街で、道路もうねっている。そのため、急右左折が多いのではないかと思われる。急ブレーキが最も多かったのは、チベットの1416回だった。これは上海の1231回を上回っている。これはカモシカなどの野生動物が、道路に現れることが多いことが関係しているという。

一方で、急加速、急ブレーキ、急右左折が最も少ないのは山東省だった。山東省は平野が多く、さらには大都市が少ないので、渋滞もなく、生活リズムがゆっくりであるため、マナーのいい運転ができているのではないかと思われる。

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▲車にスマートフォンをつけて、ナビがわりにしている人は多い。スマホでも、急ブレーキや急発進などの危険な運転行動を把握することができるため、運転行動で掛け金が変化していく自動車保険が普及しようとしている。

 

運転行動と自動車保険のスコアが連動するようになっている

急ブレーキなどの基準が報告書では定義されていないので、単純に比較をすることはできないが、上海人は、約30kmごとに1回急加速をし、約44kmごとに1回急右左折をし、約40kmごとに速度超過をし、約10kmごとに急ブレーキをしていることになる。

しかも、これは斑馬智行のスマートシステムを利用している人のデータなのだから、統計の対象となっている人の運転マナーは、一般の運転手よりもいいはずだと推測できる。それで、10kmに1回急ブレーキというのは、日本人から見ると、やはり運転が荒いと言ってもいいだろう。

しかし、このような詳細なデータが公開されているということが重要だ。斑馬智行以外にも、運転行動データを取得するスマートシステムはいくつも登場していて、普及が始まっている。その多くは、自動車保険の掛け金の算出に利用するためだ。つまり、運転の荒い人の掛け金を高くし、マナーのいい人の掛け金を安くすることで、自動車保険の公平な負担を実現しようとするもの。さらに、事故時には加速度センサーデータや映像データから、事故状況を精密に再現することができ、過失割合を正確に計算することができる。

斑馬智行では、利用者の運転マナーを個別に評価し、フィードバックすることもやっていて、これも運転マナーをよくしていくことに寄与している。中国人の運転マナーは、良心や道徳ではなく、データや賭け金により改善されていくことになるだろう。