中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

指紋認証、顔認証の次は骨伝導声紋認証?

ロック解除や決済時に必要なパスワード入力は、現在、ほとんど使われなくなり、指紋認証や顔認証になっている。しかし、いずれの方法も一長一短があり、決定版とも言えない。その状況の中で、ファーウェイは骨伝導声紋認証という新しい方式をMate 20 Proに搭載したと鵬鵬領創が報じた。

 

決して万能ではない顔認証

スマートフォンをロック解除するときに、以前は指紋認証だったがものが、現在は顔認証が主流になろうとしている。しかし、顔認証にはなかなか使いづらい場面もあり、評判は今ひとつよくないようだ。

例えば、寝そべっているときに顔認証でロック解除しようとするとうまくいかないことがある。寝た状態で上を向いていると、顔の肉が重力によって下り、容貌が変化するため、顔認証にはじかれてしまうことがある。また、寝そべっている状態というのは寝室など、照度が足らない状況であることが多く、これも顔認証のじゃまとなる。

また、デスクの上に置いているスマートフォンをそのままロック解除したい時もうまくいかないことがある。顔認証をするには、インサイドカメラと顔を正対させる必要があるからだ。

そのような問題がある上に、セキュリティ面も安全とは言えない。現実にそこまでやる人がいるかという問題はあるが、立体の顔模型を3Dプリンターで作成することで、顔認証は突破できてしまう。

 

頭蓋骨を伝わる音声声紋でロック解除をする

ファーウェイは、Mate 20 Proやサブブランドの栄耀Magic 2などで骨伝導声紋認証という新しいロック解除方法を導入した。

骨伝導声紋とは、自分の声が頭蓋骨に共鳴をした声紋。自分の声を聞く時には、空気を伝わる自分の声と、骨伝導による自分の声がミックスされて聞こえる。しかし、テープレコーダーに録音した自分の声は空気伝導のみによる声なので、違和感を感じる。

骨伝導声紋認証は、この骨伝導声紋を、ワイヤレスイヤホンで拾って、声紋認証をしてロック解除する。

f:id:tamakino:20190128140026j:plain

▲Mate 20 Proで骨伝導声紋認証Bone Voice IDを利用するには、ファーウェイのワイヤレスイヤホンFreebuds 2 Proか、栄耀ブランドのFlyPodsが必要になる。イヤホンをつけた状態で、アプリ名を呼ぶと、スマホのロックが解除されて、そのアプリが起動する。認証と音声命令が同時に行える。

 

認証と音声命令が同時に行える

この骨伝導声紋認証の優れたところは、声による認証なので、ロック解除と同時に指示を出せることだ。Magic 2では、「アリペイ」「WeChatペイ」などと声に出すことで、ロック解除と同時に決済アプリが起動する。その他のアプリも対応しているものは、音声で操作をしたり、音声でテキスト入力をすることができる。

もうひとつはセキュリティ面が優れていることだ。対象者の骨伝導声紋を記録することは簡単ではない。ワイヤレスイヤホンからスマートフォンへの通信を傍受するぐらいしか方法はなく、現実的には難しい。

f:id:tamakino:20190128140036j:plain

▲栄耀ブランドのFlyPods Proの広告。骨伝導声紋認証と声によるスマホ操作の2つの機能をウリにしている。

 

イヤホンをつけていないと利用できないのが最大の難点

欠点としては、ワイヤレスイヤホンをつけていないと利用できないという点で、ここがいちばんのネックになる。

「いちいち声を出すのは面倒、恥ずかしい」という人も多いかもしれないが、これは慣れの問題であるし、レジなどの場面では、どのみちレジスタッフに「アリペイ」「WeChatペイ」などの決済の種類名を告げる必要があるのだから、ついでにロック解除してQRコードを表示してくれる機能は、それなりに歓迎されそうだ。

また、宅配便の配達スタッフなどは、音声でロック解除をし、業務アプリを操作し、そのまま音声でテキストメッセージを送ったり、電話をかけたりできるため、需要は決して小さくはない。片耳だけのインカムタイプのイヤホンが登場すれば、業務利用も進みそうだ。

この骨伝導声紋認証が、ロック解除の主流になることはないだろうが、認証方式のひとつとしては利用価値は高そうだ。

f:id:tamakino:20190128140030g:plain

▲Mate 20 Proは、ワイヤレス充電規格Qiに対応をしている。本体をワイヤレス充電できるだけでなく、本体をモバイルバッテリーとして他のデバイスにワイヤレス給電する機能がある。ワイヤレスイヤホンもMate 20 Proからワイヤレス充電することができる。fly