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顔認証搭載のAI観光バスが上海に登場。AIが通訳も

12月18日、百度バイドゥ)と上海新高度旅遊が、世界初となる人工知能観光バスの試験運行を始めた。顔認証で乗車できるだけでなく、主要言語の翻訳機能、観光関連の音声による問い合わせに答える機能などがあると環球網が報じた。

 

顔パスで乗れるAI観光バス

観光バスは、各観光地に寄り、観光をするため、1日に何回も乗り降りをする。長期ツアーでは複数日に渡ることもある。乗車するたびに、スタッフに乗車チケットを見せるのは煩わしく、チケットを紛失してしまう可能性もある。そこで、このAI観光バスでは、顔認証の機能を搭載した。運転手横の場所に、顔認証ユニットが設置され、それに顔を見せるだけで、正規の乗客であることを認証する。チケットは不要となるので、手ぶらで観光を楽しめるようになった。

顔写真の登録は、チケットにプリントされたQRコードスマホで読み込むことで行う。これでWeChatなどのミニプグラムが起動し、顔写真が撮影される。あとは、チケットレスで観光バスに乗ることができる。

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百度と上海新高度旅遊が共同で運行したAI観光バス。現在、伝統的な中国を楽しむコースと近代的な中国楽しむコースの2路線に投入されている。

 

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▲顔認証で正規の乗客であるかどうかを認証する。観光ポイントで何度も乗り降りをする観光バスで、毎回チケットを見せる不便さが解消された。

 

主要10言語の音声を中国に自動翻訳

また、バス内には2台のWiFi接続の翻訳機も2台搭載されている。主要10言語で話しかけると、それを中国語に翻訳してくれる。スタッフが中国語で答えると、乗客が話した言語に翻訳をしてくれる。スタッフとの意思疎通が円滑になる。

また、観光関連の問い合わせも音声で可能になっている。上海の歴史や近くの有名レストランなどの情報を音声で問い合わせると、音声で答えてくれる。

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▲AIユニットは主要10言語の音声を中国語に翻訳をする機能もある。中国人の運転手やガイドと翻訳機を通じてコミュニケーションをとることができる。

 

百度は、人工知能+モビリティーに注力をする

この人工知能は、百度が開発している百度大脳。百度大脳もバージョン3.0になり、自然言語への対応が大幅にアップグレードされ、各業界への応用が始まっている。AI観光バスはその中のひとつとなる。

上海は、金融都市でもあるが、観光都市でもある。旧市街には豫園などの伝統的な中国、外灘では西洋各国の建物が並ぶ近代の中国、浦東地区では高層ビルが並ぶ現代の中国が楽しめる。

現在は、旧市街の1路線、浦東地区の1路線の合計2路線で、AI観光バスを試験運用し、1月には20台のAI観光バスを投入する予定だ。

検索広告の事業が伸び悩んでいる百度も、旅行、教育、環境、安全、監視などの分野に人工知能を応用する開発を進めていて、自動運転車「アポロ」とともに、主力事業に育てていきたい思惑がある。

上海市政府も、外国人による観光を重視しているため、今後、外国人向けのAI観光バスの路線が増えていくことになりそうだ。

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▲AI観光バスが走るルート。旧市街と新開発区を巡る2つのルートがある。1月中にさらに20台のAI観光バスを投入する予定だ。