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行列をリピーターに転換する。中国茶カフェ「喜茶」のスマホ注文活用

中国で「行列ができるカフェ」として人気の「喜茶」(HEY TEA、ヘイティー)がWeChatミニプラグラム「喜茶GO」をリリースした。このミニプログラムを使うと、スマホから注文、決済することができ、行列に並ぶことなくドリンクを購入できる。喜茶は行列を戦略的に活用していると科技新角が報じた。

 

4時間行列するのは当たり前。大人気の中国茶カフェ「喜茶」

喜茶は、中国に現在106店舗を展開する中国茶カフェ。岩塩入りのクリームチーズを中国紅茶に入れた斬新なドリンクで大人気となった。夏には、中国茶にふんだんにフルーツを入れたドリンクを提供するなど、伝統的な中国紅茶を現代的にアレンジすることで若い女性を中心に人気となっている。

また、カップやペーパーバッグ、店内インテリアなどもしゃれていて、いわゆる「インスタ映え」することを狙っていて、その人気はSNSで拡散し、どの店舗でも行列ができる状態になっている。

人気は過熱気味で、平日でも2時間ほど並ぶのは当たり前、休日には4時間並ぶとか、最高で7時間並んだという話まである。

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▲喜茶に並ぶ行列。平日でも2時間、休日には4時間ほど並ぶのが当たり前になっている。

 

認知度を上げるフェーズでは行列は大きな力となる

飲食店にとって、行列は両刃の剣だ。認知度を上げる初期段階では、行列はどんなプロモーションよりも効果がある。近くを通る人に注目をしてもらえるし、行列そのものがSNSで拡散して話題になる。さらに、人はその価値を人に伝える時には、獲得コストが高ければ高いほど、本来価値よりも高く伝える傾向がある。つまり、獲得したものがただの水であっても、行列に2時間並んで獲得したものであれば、人には特別な水であるかのように伝えるのだ。

飲食店は行列を演出することで、「一度味わってみたい」と考える一見客を次から次へと引き寄せることができる。

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▲喜茶のドリンクは、見た目にもインスタ映えをする。フルーツたっぷりの中国茶は、湿気の高い中国の夏場に飲むと素晴らしく美味しい。いずれも今までに飲んだことのない味を実現している。

 

リピートフェーズでは行列はマイナス要因でしかない

しかし、リピーターが生まれる定着期になると、行列はマイナス効果をもたらす。簡単なことで、ただ紅茶を飲んで休みたいだけに2時間もの行列という獲得コストをかけるのは馬鹿らしいと誰もが思うようになる。何回か利用すれば、その商品の価値も自分の中で評価できていているので、商品価値と獲得コストを天秤にかけて、別の選択をしてしまう人が出始める。

そのうち、別の流行カフェが登場し、人々はそちらに流れていくようになり、こうなるとどうやっても客を引き戻すことができなくなる。

飲食店は、行列ができるというのは初期段階での成功には違いないが、すぐにどうやってこの行列を効率よくリピーターに転換をしていくのかを考えないと、ある日突然行列が消えて、閑古鳥が鳴くことになりかねない。

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▲喜茶のペーパーバッグ。軽妙なイラストがあしらわれ、ただのペーパーバッグなのにグッズとしての人気もある。

 

行列をリピーターに転換する秘策は

科技新角が、平日昼間の正午ごろに、北京三里屯黒金店、北京朝陽大悦城店に行ってみると、だいたい150人程度の行列ができていて、待ち時間は2時間前後だった。喜茶のカウンターでは、1分間に4杯から5杯のドリンクを作ることができる。テイクアウトの客は、1人で何杯も注文をし、平均2杯程度注文すると、150人で2時間待ちというのは計算が合う。

しかし、「長い行列が人気の証」と喜んでばかりはいられない。すでにメディアは、喜茶の長い行列を、人気というよりは「奇異な現象」として扱い始め、若い女性はなぜそこまで熱中するのかと、やや否定的なニュアンスを入れて報道し始めている。また、ネットの掲示板などでは、男性を中心に「ばかばかしくて並んでいられない」という声や、「行列はやらせ」説までもっともらしく語られるようになっている。

喜茶は明らかに、行列をリピーターに転換しなければならない時期を迎えている。

しかし、スタッフを増やして行列を減らすことは難しい。調理スタッフを倍にしても、製造能力が倍になるだけ。2時間待ちが1時間待ちになるだけにすぎない。

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▲喜茶のメニュー。岩塩クリームチーズを紅茶に入れたオリジナルドリンクが大人気となった。価格も30元以内とコーヒーよりも安目。

 

スマホ注文を導入することで、リピート率は3倍に

そこで、喜茶は今年の5月から「喜茶GO」というWeChat用のミニプログラムを提供している。スマートフォンから、注文、決済、出前、予約などができるというもので、先にスマートフォンで注文をしておけば、行列に並ぶことなく、ドリンクを受け取ることができる。

リリース後わずか1ヶ月で、50万人以上の人が利用し、喜茶全体のリピート率は2倍以上に伸びた。一度飲んで気に入ったけど、もう一度あの行列に並ぶのは嫌だという人がミニプログラムに飛びついたのだ。

半年たった今では、利用者数は累積500万人。リピート率もリリース後1ヶ月の3倍にさらに伸びている。1日平均18.5万人が利用している。

世界のどこでも「行列のできる」カフェ、ドーナツ店、アイスクリーム店というのが登場し、わずか数年で跡形もなく消えていく現象は珍しくない。喜茶も当初はそのような一時的な流行と見る向きもあった。しかし、最も適切な時期にミニプログラムを活用してスマホ注文を導入することで、リピーターを作り始めている。喜茶は一時的な流行では終わらない中国茶カフェになるかもしれない。

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