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中国で横行する課金返金詐欺に悩まされるアップル

中国でアップルのiPhoneなどのiOSバイスゲームで、代理返金ビジネスが問題になっている。ECサイトタオバオ」、SNS「WeChat」で客を募り、客に変わってゲーム課金をアップルから返金させる。その10%から40%を手数料として受け取るというビジネスだ。アップルの手厚い消費者保護ポリシーを悪用したビジネスで、各方面から問題視されていると中国新聞網が報じた。

 

課金を返金してもらうグレーなビジネス

ECサイトタオバオ」などを検索すると、「アップル代理返金」という商品が大量に見つかる。WeChatなどで連絡をすると、iOSバイスのゲームなどを購入またはゲーム内課金したお金を、利用者に代わって、アップルと返金交渉をしてくれるというものだ。

すでに購入したゲームのアイテムなどは消えずにそのまま利用することができるため、利用をする人が後を絶たない。もちろん、アップルに対して不正な行為であり、アップルから訴えられる可能性はある。しかし、法的に違法だと断定するわけにもいかず、グレーなビジネスとして広がり、無視できなくなっている。

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▲返金詐欺の広告は、建前上は「iOSの問題解決します」という文言が使われる。1元で購入すると、先方から連絡が来て、返金交渉をしてくれる。

 

消費者保護ポリシーの抜け穴を利用する

App Storeなどで購入したアプリ、あるいはアプリ内課金の返金は、アップルは原則として認めていない。しかし、一切認めないというのは消費者保護の観点から問題がある。そこで、利用者が直接交渉をして、正当な理由があると認めた場合は、アップルが返金をする。

正当な理由とは「購入したのにダウンロードできない。あるいはダウンロードに常識外の時間がかかる」「アプリを起動したが、App Storeでの紹介とあまりに異なる内容だった」などのアプリ側の問題や、最近増えているのが「子どもが勝手に購入ボタンを押してしまった」などだ。

 

返金をしてもらっても、課金したアイテムは消えない

もちろん、アップル側も言われたら必ず返金するというわけではなく、該当するApple IDの履歴を確認する。購入と返金を何度も繰り返している場合、明らかに利用していないと思われるApple IDなどの場合は、返金を拒否する。

アップルは返金をしても、いちいち該当のアプリ運営元に連絡をするようなことはしていないようだ。購入課金、アプリ課金は、3ヶ月ごと(契約によって異なる)の支払い時期に、アプリ運営元に送金される。この時の明細に、返金分の記載があるのみだ。そのため、アプリ運営元は返金が発生したことは支払いサイトが回ってこないと知ることができない。そのため、返金をしたユーザーのアイテムを消去するなどの措置をとることができない。

このことを悪用すると、ゲームアプリのアイテムを購入し、使い切った時点でアップルに返金請求をすると、タダでアイテムを利用することができてしまう。

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▲ゲームのアイテムを購入し、それを割引販売。自分はアップルから返金してもらうという流れができあがっている。この広告では、6480個のダイアモンド(ゲーム内のアイテム)は648元だが、435元で販売されている。

 

手数料は20%から40%。支払わないと個人情報が売られる

しかし、一般のユーザーは、そもそも返金申請ができることを知らないし、返金をしたらアイテムなどは当然消えてしまうと思っている。代理返金業者は、このような隙をついて、ユーザーに代わって、アップルのサポートに電話をし、返金をさせる。

ただし、必ず返金ができるとは限らない。何度も返金をしているユーザーの場合は、アップルから拒否をされる。そのため、このビジネスは「返金できなかったら無料」になっている。また、どのような理由で返金申請をすれば通りやすいかなど、ある程度のノウハウもあるようで、代理返金ビジネスをするためのノウハウ集を情報商材として販売している業者もいる。

報酬は一般的には返金額の20%から40%程度。返金の難易度に応じて報酬は違ってくる。返金に成功すると、ユーザーの銀行口座やスマホ決済口座にアップルから入金がある。そこから規定の報酬を支払ってもらう。

当然ながら、報酬を払わずに逃げ回ってしまうユーザーもいる。その場合、業者はどうするのか。「基本的には放置です。元手がかかる商売ではないので、報酬を支払ってもらえなくても大きな損害にはなりません。それに一度返金をしてしまったApple IDは、次の返金の難易度があがるので、もういいお客ではなくなるのです。代理返金をするときに、Apple IDや個人情報、相手が教えてくれればパスワードなどを聞き出しますので、それを業者に売却して終わりです」。

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▲返金の方法を伝授する情報商材も販売されている。初級が1988元(約3万2000円)で購入できるそうだ。


養殖をしたApple IDを売り、返金させる業者も

このような代理返金業者は、「Apple IDの養殖」も手がけている。一度、返金をしてしまうと次の返金は難しくなり、あまりしつこくすると、アップルはそのApple IDを凍結してしまうことがある。そうなると、新しいApple IDを作成しなければ、iPhoneなどが事実上使えなくなってしまう。新しいApple IDには、それまで購入したアプリ、アイテムは引き継げない。

そこで、代理返金業者は、養殖したApple IDの販売もしている。この養殖をしたApple IDを使って、ゲームやアイテムを購入。遊んだところで、返金をしてもらい、また新しい養殖Apple IDを購入する。

アップルは返金申請があったときに、そのApple IDの履歴を確認する。つい最近作成したApple IDや、以前作成したとしても長期間動きがまったくないApple IDは、不審なApple IDとして、申請内容に矛盾があるとすぐに「問題のあるApple ID」として一時凍結をしてしまう。

そのため、Apple IDの養殖は、実際のiOSバイス上で作成をし、スクリプトによって、あたかも普通の人が使っているかのような動作をさせて、正常なユーザーであると偽装をするのだという。

こうして、養殖Apple IDが売れると、そのデバイスを中古市場に売り払い、やはり中古市場から別のデバイスを購入して、新しいApple IDの養殖を始める。同じデバイスでいくつものApple IDを養殖すると、Apple IDはデバイス本体の情報と紐づけをするため、アップルから不審なApple IDであることが察知されてしまうのだ。

 

iPhoneの売れ行きは不振でも、App Storeの売上は伸びている

中国でもiPhoneの販売台数は下落気味だが、一方でApp Storeの売上は伸び続けている。中国の法律では、アップルが事前に「一切の返金を認めない」と告知してあるのであれば返金を受けなくても問題はない。しかし、アップルは消費者の利便性を考え、寛容な運用を行っている。これを悪用して、代理返金ビジネスが広がるとアップルとしても対策をせざるを得なくなり、返金審査を厳格化しなければならなくなる。そうなると、結局、損をするのは消費者なのだと専門家は警告をしている。しかし、「代理返金」の広告は一向に減る様子はない。

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