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アリペイのお年玉機能で、白菜を3時間で売り切る男

アリペイの紅包(ホンバオ)=お年玉機能を賢く利用して、白菜を3時間で売り切った男が話題になっている。ネットでは「それは気づかなかった!」と絶賛の声が上がっていると観察者が報じた。

 

お年玉くじ感覚の送金機能「紅包」

中国スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」には紅包というお年玉機能がある。これは個人間の送金機能だが、一定範囲の額、総額などを指定して送るもので、実際いくらになるかはわからないというものだ。くじ引きのような楽しさがある。

この紅包は、小売にも利用されている。店舗などで、紅包用のQRコード掲示しておき、消費者がスキャンをすると、一定額の範囲でお年玉がもらえる。紅包キャンペーンをすることで、消費者を来店させることができ、お年玉がもらえることで気をよくして買い物をしてもらおうというものだ。

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▲白菜を3つ当てた奥様。この笑顔。現金やポイント還元のプロモーションにはない楽しさがある。

 

紅包を利用して、白菜2トンを3時間で売り切る

この紅包の原資は、当然ながら商店が支払うが、年末や春節などの特別な時期には、アリババがその原資を持つキャンペーンを実施することがある。商店が専用サイトから申請をし、審査を通ると、商店はお金を出すことなく、消費者に紅包を配ることができるようになる。

この制度を利用して、白菜2トンをわずか3時間で売り切った男性が、浙江電視台の6チャンネルの番組「1818黄金眼」で取り上げられて話題になった。

この男性は、農村から白菜をトラックに積んで、北京の下町で売っている。それが紅包を利用して、わずか3時間で売り切った。

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▲赤い横断幕には「お金がいらない白菜」と書いてあり、下町の多くの人が興味本位で群がった。

 

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▲ユニークなキャンペーンをおもついた店主。紅包を利用して、無料で白菜を配り、利益もあげた。

 

無料の白菜に大行列が

この男性は、「お金のいらない白菜」という横断幕を掲げ、無料で白菜が買えると大声で呼びかけた。列に並んだ人は、まずこの男性の紅包用のQRコードをスキャンするように指示される。すると、さまざまな金額の紅包があたる。その額に応じて、買える白菜の数が決まり、今度はこの男性のQRコードをスキャンしてもらい、あたった金額をすべて支払ってもらい、それに応じた数の白菜を渡すというものだ。

紅包は最終的にアリババが負担をするので、男性の出費はない。買う人は、紅包であたった額を男性に渡すだけなので出費はない。それで白菜がもらえる。

2トンの白菜は、いつもであれば1日そこで売ってもなかなか売り切ることができない。今回は「無料の白菜」ということなので、行列ができ、わずか3時間で売り切れてしまい、男性は5000元(約7万9000円)の売上をあげた。

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▲無料の白菜を求めて、並ぶ人たち。

 

店主、消費者、アリババの全員が得をする

ネットでは「これは気づかなかった!」と称賛の声が寄せられている。男性はいつもより短時間で売り切ることができ、利益もあげた。買う方は実質無料で白菜を手に入れることができる。アリババは損をしたかというとそうでもない。下町の中高年はスマートフォンも持っているし、アリペイも使っているが、使用頻度は高くなく、日常の買い物は現金を使うことも多い。そういう人たちに、アリペイを使ってもらうことで、利用者の拡大につながる。さらに、このことが話題になって、全国に拡散したことで、日常の買い物にもアリペイを使う人が増えるだろう。アリババとしても損はないと言っているネットワーカーが多い。


商家狂喊“不要钱”顾客扫码免费送白菜 三小时赚五千多

▲この男性のキャンペーンは、テレビ番組で取り上げられて大きな話題になった。消費者の多くが「無料の白菜」に対して、「本当なの?嘘なの?」と尋ねている。

 

批判的な意見もあるが、多くの人は楽しんでいる

一方で否定的な意見もある。紅包のこのような使い方は、規約違反ではないかと言っている人もいる。本来、紅包で得たお金は、その商店で使うかどうかは消費者の自由。このように白菜を買うためだけに目的を限定するのは規約に反するのではないかという意見だ。

また、紅包を受け取ると、自動的に花唄が開通してしまうことを問題にしている人もいる。花唄とは分割払いやリボ払いに相当する機能で、花唄を使って支払いをすると相応の利子が必要になる。そのため、必要のない人は花唄の機能そのものを開通させることなくアリペイを使っている。今回、白菜を買ったような下町の中高年は、紅包を受け取ると、花唄が自動的に開通してしまうことをわかっているのだろうかと疑問を投げかけている人もいる。

しかし、このような規約違反や花唄の問題を指摘する人は少数派で、多くの人がこの男性のアイディアを面白がっている。アリババも、現在のところ、規約に違反しているかどうかなどについて、特にコメントはしていない。

 

ポイント還元策が限界に達している

それどころか、今では紅包によるプロモーション効果に疑問が持たれるようになっている。以前は物珍しさから、紅包のQRコードをスキャンする人は多かったが、最近ではわずか数元をもらうためにスキャンする人は減りつつあり、その程度で消費意欲が増すとは考えづらくなっていると言われるようになっている。

その観点から、数元を渡す紅包よりも、こうした商品を渡した方が、話題にもなり、消費者に受けるのではないか。紅包キャンペーンも新たな方式を考えるべき時期にきているのではないかと論じているメディアもある。

今後、このような「モノが当たる」キャンペーンが増えていくかもしれない。