中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

現金拒否の商店も。20代の半数以上が現金を持たない無現金社会

スマホ決済が進む中国では、現金を持たずに外出をするという人が増えている。ところが、今度は「現金の支払いを拒否する」店が現れ始め、現金派が不便をすることになっていると財看見が報じた。

 

現金支払いを拒否する店

中国の2大スマホ決済は「アリペイ」(アリババ)と「WeChatペイ」(テンセント)。この二つにはほとんどの店が対応をしているので、スマートフォンがあれば支払いに困ることはない。急速に現金が消えつつある。

しかし、先走りすぎて、今度は現金の支払いを拒否する店が現れ始めた。アリババが運営する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)は、当初、現金支払いを受け付けなかった。フーマフレッシュは、専用アプリをインストールさせ、そのアプリからの宅配注文を伸ばしたいという戦略を持っている。そのため、アプリを入れることなく、店舗で現金払いをされては困るのだ。そこで、会員専用スーパーという建て付けにして、専用アプリをインストールしないと買い物ができないようにした。

ところが、この手法は、中央銀行から警告を受けることになった。人民元管理法によると、商店は現金支払いを拒否できないことになっている。そこで、フーマフレッシュは、自社の戦略と法律の齟齬を起こさないように面白い方法をとった。現金支払いを希望する客は、レジではなく、インフォメーションカウンターに行かなければならない。そこで、スタッフが専用アプリのインストール方法をガイドし、商品代金分の現金を受け取る。つまり、何がなんでも専用アプリをインストールさせたいのだ。

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▲貴州のあるアウトドアショップでは、堂々と現金拒否を掲示している。法律違反になるが、口頭で現金支払いを拒否されることが増えている。主な理由は「釣り銭が用意できていない」だ。

 

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▲こちらは駐車場の現金拒否。やはり釣り銭の用意ができないことからスマホ決済のみになっている。

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▲中高年の多い下町地区などでは、アリペイやWeChatペイのスマホ決済を拒否し、現金のみの店もあるが、ニュースがわざわざ取り上げるほどの少数でしかない。

 

約1割の人が現金支払いを拒否された経験

金融会社「融360」の調査によると、11.36%の人が「現金支払いを拒否された」経験をしている。年代別に見ると、もっとも高いのは70代の33.33%。高齢者は現金支払いをすることが多いので、拒否されるケースが多いのも当然だ。

面白いのは、現金拒否をされた経験の割合は25歳から35歳の若い世代も意外に高いことだ。その理由の分析はなされていないが、若い世代は行動範囲が広く、新しい店にも積極的に入っていくため、現金拒否に遭遇する機会が多くなるのではないか。40代以上になると、行動範囲が狭くなり、知っている店でしか消費をしなくなる傾向があるので、現金拒否に会う機会も少なくなるのではないかと推測される。

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▲現金支払いを拒否された経験を尋ねた問いに対する回答。法律上、商店は現金支払いを拒否できないことになっているが、それでも約1割の人が現金拒否を経験している。

 

70代でも「必ず現金を持つ」現金派は少数派になっている

外出時に現金を持っていくかどうかの問いには、「必ず持つ」という人の割合は18.23%にしかすぎなくなっている。年代別で見ると、見事に若い世代ほど現金を持たないようになっている。20代の半分以上は、外出時に現金を持っていかない。60代でも、22.58%の人が現金を持ち歩かないと答えている。

人民元管理法で現金の支払いを受け入れなければならないのは、あくまでも商店であり、自動販売機や駐車場などの無人決済の世界では、急速に現金不可が増えている。

一般の商店でも、個人商店などでは釣り銭を用意する煩わしさから、現金で支払おうとすると、「スマホで支払えないのか?」と言われることが増えている。一方で、逆に「スマホ決済を拒否。現金のみ」という店もある。多くの場合、下町で近所の人だけがくるような食堂などだ。

 

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▲外出時に現金を持っていくかの問いに対する回答では、20代は半数以上の人が現金を持っていない。70代を含めたどの世代でも「現金を必ず持っていく」現金派は少数派になっている。

 

無現金社会に向かって走り始めている中国

現金で支払うか、スマホ決済で支払うかは、習慣によるところが大きい。20代が突出した「現金を持たない」割合が大きいのは、お金を稼ぐようになった時にはすでにスマホ決済が普及していたことが大きい。

また注目すべきは60代の回答だ。60代であっても、現金を必ず持ち歩く人の割合は、40%弱であり少数派になっている。70代でさえ、「現金をまったく持たない」人は0%だが、それでも「現金を必ず持つ人」は40%強にすぎない。若い世代ほど無現金派であることは当然なので、年月とともに無現金派の割合は急速に上昇していくことになる。中国は「無現金社会」に向かって走り始めている。

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▲ドアに利用可能な決済方法が列挙されている。「現金、クレジットカード、アリペイ、WeChatペイ、夫を働かせる。顔認証支払いには対応してません」。

 

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▲こちらのレストランにもドアに利用可能な決済方法が列挙されている。多くのレストランでは会計時に「アリペイ、WeChatペイ、銀聯、現金。いずれでお支払いになりますか?」と尋ねられることが多くなった。なお、中国人のいう「クレジットカード」は銀聯カードのことであり、VISAやMasterといった国際的カードブランドには対応していないことも多いので注意する必要がある。