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中国を旅する宅配便。配送確認アプリで盛り上がる人たち

11月11日の独身の日セールでは、わずか1日で13.52億個の宅配便が発送され、すべてを配送し終わるまでには1週間以上かかる。なかなか荷物が届かず、配送状況を確認した人たちの間から、荷物が中国全土を旅しているとお祭り騒ぎになっていると観察者が報じた。

 

中国全土を旅する宅配便

11月11日のセールが終わってもなかなか荷物を受け取れない人たちがいる。発送から10日経っても受け取れない人たちが、さすがにネットに不満を表し始めている。

中国の宅配便企業大手は、アプリが充実をしていて、荷物が今どこのあたりを輸送中なのかをほぼリアルタイムで見ることができる。すると、とんでもない遠回りをしているケースがいくつも見つかり、ウェイボーなどのSNSでは、そのような遠回り画像を共有して盛り上がる人たちが現れている。

まるで「白タクで輸送しているようだ」(違法タクシーは、だいたい遠回りをすることになっている)と盛り上がっている。

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▲嘉興市海寧市から発送して、近くの秀洲区に送るのに、なぜか荷物が遠くの方まで行っている。

 

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無錫市から西安市に送るのに、なぜか東北地方をぐるりと一周して遠回りをしている。


集配ルートを固定化することでコスト削減をする宅配企業

なぜ、このような遠回り現象が起きるのか。宅配便企業はコスト削減のためだと説明する。宅配便企業によって異なるが、多くは各省、大都市などに中継点を設け、さらに複数の省をカバーする大規模な仕分けセンターを設けている。荷物は、配送拠点から中継点、仕分けセンターと送られ、送り先の仕分けセンター、中継点、配送拠点と送られていく。

中継点から仕分けセンターの方向が、たまたま送り先から遠ざかる方向のこともあるが、この方が配送コストは低くなるのだと説明している。

配送コストを下げるには、可能な限り、長期にわたって配送路線を固定化することが効果がある。そのため、結果的に遠回りになってしまうこともあるのだという。

特に、南西部は険しい山岳地帯が多く、道路網が発達しているとは言えない。そのため、仕分けセンターは成都市にのみ置いている宅配企業が多い。南西部発着の宅配便が遠回りをしてしま位がちなのは、このためだとも言う。

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天津市から朝陽市までは一直線ならさほど遠くないのに、なぜか蘇州市まで回り道をしている。しかも、表示されている言葉が「現在蘇州市。荷物はどんどん近づいています」というもの。遠ざかっているじゃないかとつっこまれている。

 

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瀋陽から焦作市に送るには、西に向かって一直線に行けばいいのに、なぜか上海まで寄り道をするルートになっている。

 

理解不能なルートを楽しむ人たち

しかし、ネットワーカーたちは、この説明にもそぐわない配送ルート画面を多数発見して、ウェイボーに共有している。

各宅配企業は、個々の例については回答に応じていないが、ネットワーカーたちの間では、配送システムにバグがあるのではないかとか、あるいは単純に配送表示アプリのバグではないかと話し合っている。

ただ、中国人特有ののんきさゆえか、真面目に怒っているような人はいない。みな、この面白い現象を楽しんで盛り上がっている。13億件もの宅配便をトラブルなく処理することは極めて難しい。小さなトラブルは頻発しているものの、大ごとになることなく、なんとか処理できてしまうのは、こんな利用者側のおおらかさがあるからかもしれない。

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▲理解不能な例。今、西安に荷物があって、南に届けるのだが、ルートが不明。険しい山岳地帯で、幹線道路はないはずなのにと話題になっている。

 

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▲これも理解不能。海を渡って運んでいる。