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独身の日セールの荷物が受け取れない!宅配便業者は大混乱

独身の日セールでは、13億個以上の宅配便が1日で発送される。この荷物を各戸に配達するだけでも大仕事だ。そこで、支柱に代理受取所ができている。日本のコンビニ受取りと似た仕組みだが、案の定、たいへんな混乱ぶりになっていると中国新聞網が報じた。

 

代理受取所を作り、宅配効率を上げる

今年の独身の日セールも、数々の記録を更新する盛況ぶりだった。国家郵政局の発表によると、11月11日だけで全国の宅配便受付は13.52億件に達し、昨年よりも25.12%増加した。宅配企業が期間中処理した宅配便件数も1日平均4.16億件となり、これも昨年よりも25.68%増加した。13.52億件は日本の宅配便件数の約4ヶ月分にあたる。それが1日で発生するのだ。

大きな問題は、戸別配送だ。13.52億個の荷物を各家庭に届けなければならない。そのすべてが受取人が在宅で、すんなり受け取れるとは限らない。大量の再配達が発生をすれば、人手で行っている戸別配送はパンクしてしまう。

そこで、スマート宅配ボックスと代理受取所が普及をした。スマート宅配ボックスは、地下鉄の駅構内や大規模マンション内などにある宅配ボックススマートフォンで解錠して自分の荷物を受け取る。代理受取所は、店舗や場合によっては道端に開設された受取所で、スタッフが管理をして、そこに受け取りに行く。日本のコンビニ受取に近い。さらに、最近では不在でも自宅のドア前に勝手に置かれていくことも増えているという。

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▲学校内に設けられた代理受取所。管理者がいて、受取人はここに荷物を取りに行く。

 

勝手に代理受取所扱いにされるトラブルが続出

しかし、中国の「宅配暫定条例」によると、宅配物は受取人の自宅、または代理受取人が、対面で受け取らなければならないことになっている。宅配ボックスや代理受取所を利用する場合は、事前に受取人の承諾が必要になっている。このため、さまざまなトラブルが起き始めている。

王さんは、日頃からECサイトで買い物をするのが好きだったが、11月6日、家でスマホを使って、配送状況を確かめたところ、まだ届いていない荷物がすでに受け取りになっていることを発見した。自分のマンションの近くにある洗車場が代理受取所になっていて、そこに配送済みということになっていた。その洗車場に配達されたのはこれが初めてではなかった。事前の連絡もない。「私はその日ずっと家にいたのです。もし、私がスマホで確認しなければ、私の荷物が洗車場にあることに気がつかなかったと思います」。

王さんが宅配会社に問い合わせをすると、今後荷物はすべてその洗車場に配達されると通告された。「でも、その洗車場まで歩いて取りに行かなければなりませんし、洗車場には3段の棚があり、そこ荷物は放置され、管理する人もいません。誰でも勝手に持っていける状態になっていて、もし荷物がなくなったら、責任は誰が取ってくれるのでしょうか?」と、王さんは怒っている。

しかも、その洗車場は午後8時に閉まってしまい、それ以降は荷物が受け取れないのだ。

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▲独身の日セール期間中は、街中にも臨時の代理受取所ができる。荷物の扱いは雑。管理者がこの場を離れることもあり、荷物が紛失、破損したというトラブルは相当数起きているものと推測される。

 

商品をキャンセルしても、荷物が送られてくる

北京の潘家園に住む孟さんは、別のトラブルに遭遇している。11月11日の独身の日セールの売り上げは毎年増え続けているが、ひとつの要因は、どの業者も返品やキャンセルを無料で受け付けるようになっていることがある。

例えば、洋服を買う場合、サイズがよくわからない場合は、大中小すべてを注文して、サイズが合うもの以外は返品する。

また、セールには大量のクーポンが配布され、その多くが「1000元を買い物をしたら、200元割引」など、一定額以上利用すると割引が適用されるパターンが多い。このため、必要のないものまで購入し、クーポン適用額にした上で割引を利用し、不要なものはキャンセルしてしまうというやり方も広がり始めている。

孟さんもこうしていくつかの商品を発送前にキャンセルしたが、その荷物が近所の代理受取所に連絡なしで届けられてしまった。不要な商品なのに、わざわざ受け取りに行って、それから返品の手続きをしなければならなくなってしまった。

代理受取所やドアの前に放置をして、荷物が紛失したというトラブルも起きている。

 

荷物の数は、宅配配達員の能力の限界を超えている

しかし、宅配会社は宅配会社で、言い分はある。ある宅配企業が匿名で北京青年報の取材に応えた。「今は多くのマンションが、外部の人間は入れないようになっています。また、駐車場も整備されてなかったり、満車だったりすることがあり、配達員はマンション前に配送者を停車して、受取人に連絡をして、取りに来てもらわなけれなりません。電話をしても、昼間は仕事中で、電話に出ない方が多いのです」。

円通宅配の配達員が北京青年報の取材に応えた。「11月11日の独身の日直後は、配達する荷物が大量に増加します。私たちも大幅に残業をして配達をしている状況です。電話をしても連絡が取れない場合は、近くの代理受取所に配達をしないと、仕事が回っていかないのです」。

しかし、この配達員は、北京青年報の記者に小声で、普段でも、エレベーターのない6階以上の配達だと、連絡なしで代理受取所に配送してしまうこともあると語った。

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▲地方ではこんな雑貨屋が代理受取所になる。店の営業時間が終わってしまうと、受け取れなくなる。

 

電話連絡も宅配配達員には大きな負担になっている

宅配ボックスや代理受取所に配達する場合でも、事前に連絡をすればいいのではないかと思う方が多いはずだ。しかし、宅配配達員は普段はだいたい100個程度の荷物を配達し、独身の日セール期間はそれが3倍の300個程度になる。電話をするのに1分かかるとすると、300個では300分=5時間を電話に費やさなければならなくなるのだ。

独身の日セールはいろいろな面で限界にきている。大量のクーポン配布で、25%が返品されるという見方もある。事前に宅配ボックスや代理受取所を指定する場合は、宅配料金を割り引く制度も始まっているが、ECサイトでは送料無料が基本になっているので、わざわざ代理受取所を指定してくれる購入者はごくわずかだ。

10年目を迎えた独身の日セール。すでに「事前にこっそりと値上げをして、それを割引いて値下げ率が大きいように見せているだけで、実質的には大して安くない」と冷ややかな目で見る人たちも現れ始めている。

華やかな記録更新の報道とともに、否定的な報道も増え始めている。独身の日セールは変わらなければならない時期にきている。

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▲最も安心できるのは、街中にあるスマート宅配ボックスなのだが、期限をすぎると料金が発生するため、避ける消費者も多い。