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アリペイの返済日はなぜ毎月9日なのか?

QRコード方式スマホ決済「アリペイ」には、ツケ払い、リボ払いに相当する機能「花唄」がある。借金をして「先消費、後払い」を可能にする仕組みで、翌9日までに返済をすれば、利子手数料はかからない。この花唄の返済日はなぜ9日に固定されているのか。藍汪叽嗨が解説した。

 

入れておくだけで利息がつく余額宝

中国で普及するQRコード方式のスマホ決済「アリペイ」と「WeChatペイ」。現金を持つことなく、スマートフォンさえあればほとんどの店で支払いができる利便性により急速に普及をした。しかし、スマホ決済が普及をしたのは、決済の利便性だけではない。

大きいのは余額宝(ユアバオ)というサービスだ。資金をこの余額宝に預けておくだけで、4%程度の利息がついてくる。利息は日々変動し、以前は6%を超えている時もあった。中身はMMF(公社債投信)で、個人で直接銀行で買った場合は、金額が小さいのでたいした利息にならないが、運営するアリババ系列の天弘基金という証券会社が余額宝の資金をまとめて銀行に再投資するため、高い利息を得ることができる。天弘基金は銀行から得る利息と、余額宝に支払う利息の差額から利益を得ている。利用者にとっては、入れておくだけでお金が増えていく財布のようなもので、これがアリペイを使う魅力のひとつになっている。

 

クレジット機能が利用できる花唄

もうひとつは、やはりアリババ傘下のアントフィナンシャルが運営する花唄(ホワベイ)だ。これはクレジットカード機能のようなものだ。支払いや買い物をするときに、アリペイの残額から払わなくても、あらかじめ決められた花唄のショッピング枠から支払うことができる。毎月9日が返済日になっていて、その日に精算をすれば利子や手数料は一切かからないというものだ。

ショッピング枠があれば、今現在アリペイの残高が足りなくても買い物ができることから「先消費、後払い」という新しい消費スタイルを生み出している。もし、9日に返済しきれない場合は、アリペイの中で簡単に分割払いに変更することができる。ただし、この場合は利子を取られることになり、これがアントフィナンシャルの利益になる。つまり、花唄は「残高が足りなくても、利子なしで買い物ができる」ということを誘い水にして、分割払いに誘導して利子を取るというビジネスなのだ。日本のクレジットカードにある分割払いやリボルビング払いと似た機能をアリペイに加えることができ、このような利便性も多くの中国人がアリペイを使う魅力のひとつになっている。

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▲アリペイの中から利用できる花唄。今、59.58元の借入金があり、ショッピング枠は9940.42元になっている。返済ボタンから一括返済をすると、ショッピング枠が増える。分割払いを選択すると、分割回数に応じて利子がかかることになる。クレジットカードの機能がアリペイの中で実現できている。

 

手元が寂しい時に返済させることで、分割返済に誘導

この花唄の返済は簡単で、毎月9日に、アリペイの残高を返済額以上にしておけばいいだけだ。返済日になると、アリペイ残高、余額宝残高、銀行口座残高の順に自動的に引き落としをしてくれ、それでも不足する場合は、自動的に3ヶ月払いから12ヶ月払いまでの分割返済に変更してくれる。

しかし、なぜ、返済日が毎月9日に固定なのだろうか。それは給与支払日と関係がある。中国の給与支払日は、各企業によって異なるが、統計によると20%が10日以前で、60%が10日から20日、20%が20日以降になる。つまり、9日には80%の人が給料日前ということになり、いちばんお金がない時期なのだ。このときに花唄の返済日がくるのはけっこうつらい。そこで、利子のかかる分割払いに変更する人が増える。

つまり、アントフィナンシャルは返済日を9日に設定することで、利益を最大化できるのだ。

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▲クレジット機能は、アリペイの「花唄」、ECサイト京東の白条、クレジットカードの3種類が主なもの。しかし、国際クレジットカードが使える場所は多くなく、銀聯のクレジット機能をつけるにも審査が必要になる。花唄は、芝麻信用の信用スコアが極端に低くなければ、簡単にスマホから利用できる。

 

返済してショッピング枠が最大になると購買欲が増加する

また、花唄のショッピング枠は500元から5万元の間で、各個人の信用度に応じて決められるが、11月11日独身の日のセール直前などでは、キャンペーンとして花唄のショッピング枠が臨時にあがる。11日11日のセールは、多くの中国人にとって給料日前であり、あまり購買欲が強くない時期だが、花唄のショッピング枠が突然大きくなることで、購買欲を刺激し、かつ花唄の利用率を上げることができる。

花唄を使い、きちんと返済をすると、信用スコアである芝麻信用(ジーマクレジット)のスコアが大きく上がる。信用スコアがあがると、花唄のショッピング枠も上昇をしていくという仕組みになっている。

中国のITサービスにはすべてのことに意味がある。返済日を何日に設定すれば、利益を最大化できるか。そういうことを必死で考えているのだ。