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iPhoneの最大の弱点ーー「フルベゼルレス」開発競争が激化する中国スマホ

中国の携帯電話メーカーでは、ノッチのないフルベゼルレススマホの開発競争が続いている。小米(シャオミー)は、Mi MIX3で、スライドするとセルフィーカメラが現れるというデザインを採用した。どうして薄いスマートフォンでスライドが可能になるのか。その仕組みを毒眼観察が解説した。

 

画面占有率94.5%のフルベゼルレスMIX3

iPhoneのどうにも釈然としないデザインーーノッチ。上部の切り欠き部分だ。これはセルフィー用のカメラを搭載するために、どうしても画面を広げることができず、フルベゼルレス(完全フチなし)が実現できない。

中国のスマホメーカーは、ここをチャンスと見ているのか、各メーカーともさまざまな方法でフルベゼルレスを実現している。vivoはNEX Sで、セルフィーカメラが使用時に本体からポップアップしてくるというギミックで実現をした。画面占有率率は91.4%になる。iPhone XS Maxが84.4%と報じられているので、大幅なアップとなる。

そして、シャオミーは、スライドをするというギミックで画面占有率94.5%を達成した。スマホ本体が2枚構造になっていて、セルフィー撮影をしたいときは、指で縦にずらすと、上部からセルフィーカメラが現れるという仕組みだ。

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▲MIX3は2枚構造になっていて、ディスプレイ側をスライドすると、上部のセルフィーカメラが現れる。

 


【拆解】一面“科技”,一面艺术——小米 MIX 3

▲MIX3のスライドの秘密を紹介する中国ネットメディア。分解をして、仕組みを紹介している。

カニカル方式が使えない極薄スマートフォン

このようなスライド式というのは、フィーチャーフォン時代には、ノキアが盛んに採用していた。このときは、ばねを用いたメカニカルな方式で実現していた。しかし、スマホではメカニカル方式を採用することはできない。フィーチャーフォンは本体の厚みがあるので、メカニカルな仕掛けを入れることができた。しかし、薄くなったスマホではそのような余分な空間は残されていない。

かといってレールだけでは、勝手な時に開いてしまうし、それを物理的なフックのようなもので止めておこうとすると、早晩その部分が破損してしまう。フィーチャーフォン時代とは、1日の中での使用時間が圧倒的に増えたスマホでは、メカニカルな方式はもう通用しないのだ。

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▲フィチャーフォン時代には、ノキアがスライドギミックを多用していた。当時は、本体に厚みがあるので、メカニカルな方式を使うことができた。

 

ネオジウム磁石でスライドの感触を生み出す

そこで、シャオミーは磁石を採用することにした。第3世代の永久磁石であるネオジウム磁石のN52グレードを採用している。この強力な磁石の反発力を利用している。閉じている状態では、磁石の位置がずれているが、半分スライドした段階では磁石の位置が揃い、しかも同じ極同士が並ぶので反発力が生じるというのがポイントだ。閉じている状態で、何かの衝撃で開こうとしても、反発力があるために開けない。この反発力が指で開く時の心地よく抵抗力になっている。

開く時は、磁石の反発力を指に感じるが、半分以上開くと、今度は反発力によって指にかかる抵抗力が減り、さらに開く方向に力がかかり、スムースに開くことができる。

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▲MIX3のスライド機構の解説図。ネオジウム磁石の反発力を利用して、スライドするときの気持ちいい感触を生み出し、きれいにスライドできるようにしている。

 

iPhoneの弱点「フルベゼルレス」を突く中国メーカー

シャオミーでは、この開閉テストを繰り返し、30万回は問題なく使えるとしている。これは1日100回開閉をしても、8年間使えるということだ。

このスライド方式。フルベゼルレスのスマホとしては、今のところノッチ解消の最もスマートな解決策なので、他社でも追随するところが出てきて、スマホのひとつのスタイルとして定着するかもしれない。中国携帯メーカーが注視するアップルが、フルベゼルレスを実現できていないことで、多くのメーカーが「このiPhoneの弱点」を突くことがアップルに追いつくことになると考え、フルベゼルレス競争が激しくなってきている。今後も、さまざまなアイディアを使ったフルベゼルレススマホが登場することになるだろう。

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▲nubiaは、背面にもディスプレイを搭載する2画面で、フルベゼルレスを実現している。カメラは、片面にしか搭載されていない。セルフィー撮影をするときは、カメラがある側を自分に向けて、サブディスプレイで写り方を確認する。

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vivoのNEX Sでは、セルフィー撮影をするときに、内部からセルフィーカメラがポップアップすることで、フルベゼルレスを実現している。

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