中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アリババが宇宙から独身の日セールを支援。宇宙からの自撮りも

アリババが11月11日の独身の日セールを前にして、驚きの計画を発表して話題になっている。それは「一站一星計画」というもので、ミニ宇宙ステーションと通信衛星を打ち上げ、宇宙から独身の日キャンペーンを行うのだと動点科技が報じた。

 

本当に衛星を打ち上げてしまったアリババ

この「一站一星計画」が発表された時は、ネットでは、引退を目前にしているジャック・マー会長の「最後のホラ」ではないかというコメントも見られた(ジャック・マーは、過去、数々の計画を発表し、その度にホラ吹きと揶揄されたが、数年以内に次々と実現してきた)。しかし、これはホラではなく本当の話で、すでにミニ宇宙ステーションはすでに打ち上げに成功している。

ミニ宇宙ステーション「キャンディーカン」の打ち上げは、10月25日に行われた。約20kgのキャンディーカンは上海で組み立てられ、山西省の太原衛星発射センターに運ばれ、長征4号により打ち上げられた。

アリババは「独身の日セール期間中、世界の消費者に宇宙から喜びを分かちあうために打ち上げる」とコメントした。キャンディーカンというネーミングも、子どもがいちばん喜ぶキャンディーが詰まっているという意味合いだという。

f:id:tamakino:20181110112128j:plain

▲キャンディーカンを搭載した長征4号。本来なら廃棄してしまう上部のロケット上段を利用し、そこにも機材を搭載するミニ宇宙ステーションだという。

 

宇宙からの自撮り、お年玉の雨などのキャンペーン

キャンディーカンにはカメラが搭載され、独身の日セール中に、衛星が撮影した写真を地上のスマートフォンに送るというイベントも計画されている。キャンディーカンは90分で地球を1周し、居住地域の上にくると、越境ECアプリ「AliExpress」に告知が表示され、ユーザーが写真撮影を依頼。宇宙から自撮り撮影をしてくれる(もちろん、人の姿が見えるほどの縮尺にはならない)。

また、紅包(ホンパオ、お年玉。QRコードを読み込むとアリペイでお金を受け取る)を衛星から大量配布する「紅包雨」のイベントも計画されている。

f:id:tamakino:20181110112131j:plain

▲キャンディーカンの心臓部。見る限り、特殊な装置はない。カメラで、地上の消費者の「宇宙からの自撮り」をする。

 

ミニ宇宙ステーションと通信衛星の2機が宇宙へ

このキャンディーカンは、写真を見る限り、ミニ衛星に見えるが、アリババはミニ宇宙ステーションと呼んでいる。これはロケット上段も利用するからだという。ロケット上段は、衛星を放出した後は、捨ててしまい、スペースデブリとなるか、大気圏に突入して燃え尽きるかのいずれかだった。キャンディーカンは、放出をせずにロケット上段のまま軌道に投入するため、ロケット部のスペースにも機器を搭載できる設計なのだという。

また、来年打ち上げ予定の「Tmall国際号」は、通信衛星で正式軌道上に投入されると報じられている。

f:id:tamakino:20181110112134j:plain

▲太原衛星発射センターでのキャンディーカンの打ち上げの瞬間。多くの観客、メディアが集まり、独身の日セールのキャンペーンとしては、これだけでも大成功だった。

 

議論されるアリババの本当の目的

アリババは、以前から宇宙系の研究機関と共同研究、研究開発を進めていて、特にSLAM技術(Simultaneous Localization and Mapping、惑星探査車などが自走しながら周囲の地図を作成していく技術)と自動運転技術に力を入れていることから、地上の自動運転車を衛星と組み合わせたシステムの開発を構想しているのではないかという見方もある。また、地上のIoT機器と連携させることを構想していると解説するメディアもある。一方で、アリババがコメントしているように、純粋に独身の日セールのキャンペーンのために打ち上げたのではないかと見る向きもある。

アリババが始めた独身の日セールは、今年でちょうど10周年を迎える。当初は「独身の日」だったものが「購物狂歓節」や「網購狂歓節」という名前に変わり、昨年からはアリババのTmallなどでは「全球狂歓節」という名前に変わっている。独身の日セールは、中国だけのものではなくなり、海外在住の中国人、中国系住民も爆買いをする日になってきた。アリババとしては、セールの規模を拡大するために、地球規模のイベントにしたいと考えているようだ。

【科学工作】力学 超飛距離ペットボトルロケットキット

【科学工作】力学 超飛距離ペットボトルロケットキット