北京市工商連は、北京市の企業ランキングである「2018北京民営企業トップ100」を公開した。これによると、携帯電話、家電メーカーの小米(シャオミー)が初めて百度(バイドゥ)を抜き、5位にランキングされ、BATの時代が終わり、ATMの時代になるとインターネット科技苑が報じた。
BATからATMへ。ジャック・マーの予言
中国のIT業界をリードしているのはBATであるとよく言われる。百度(バイドゥ)、アリババ、テンセントの3社の頭文字をとったものだ。また、それぞれの企業の本拠地も、百度は北京、アリババは杭州、テンセントは深圳と分かれていた。しかし、アリババのジャック・マー会長は、3年ほど前からBATはATMに変わると予言していた。北京を代表するIT企業は百度に代わり、シャオミー(愛称はMi)が出てくると口にしていたのだ。
この発言には多くの人が驚いた。シャオミーは確かに2010年3月に創業してから5年ほどは「シャオミーの奇跡」とも呼ばれる急成長を遂げてきた。しかし、ジャック・マーがこの発言をした頃は、シャオミーは明らかに初期の勢いを失って低迷していた頃だ。携帯電話だけでなく、家電製品まで手を広げたことで、「迷走するシャオミー」とも言われていた。その時期に、ジャック・マーは「ATMの時代がやってくる」と断言し、今、まさしくその通りになりつつある。
シャオミーの第2期の成長が始まったことにも世間は驚いているが、ジャック・マーの未来を見抜く力にも驚いているのだ。
▲シャオミーの創業者、雷軍(レイ・ジュン)。創業の頃は、ジョブズ風のプレゼンテーションをしたため「中国のジョブズ」と呼ばれたが、本人は中国のものづくりレベルの底上げをする仕事をしてきた。理想は日本の無印良品と公言している。
ベゼルレスで完全復活。総合家電メーカーになっているシャオミー
小米(シャオミー)は、日本では携帯電話メーカーとして知られるが、現在では総合家電メーカーとなり、社員数1万4000人、売上高1146億元(約1.8兆円)の企業に成長している。スマートフォンも世界展開をし、74カ国で発売され、そのうちの15カ国でシェア5位以内に入っている。今年7月には、香港市場に上場をし、国内外から改めて注目されている。
驚くべきはその成長スピードだ。シャオミーの創業は2010年3月。この時は、グーグルのアンドロイドOSを、より中国人に使いやすいカスタマイズを施したMIUI(ミーユーアイ)をスマートフォンメーカーに提供する企業だった。しかし、翌年、独自のスマートフォンの販売を開始、直販を主体とするという方法で、熱狂的なファンをつかみ、中国にシャオミーブームを巻き起こした。
その後低迷した時期もあったが、2016年に世界に先駆けて発売したベゼルレス(枠のない)スマートフォンMi MIXで完全復活。現在では炊飯器などの白物家電も作る総合家電メーカーになっている。
▲シャオミーのフルベゼルレススマートフォンMi MIX3。上部にノッチと呼ばれる切り欠きがない。画面全体がスライドできるようになっていて、スライドすると、セルフィーカメラが現れる仕組み。
中国のジョブズから中国の無印良品へ
ジャック・マーの「ATMの時代になる」発言に反論をする人も多かった。シャオミーが株式市場に上場をしても、時価総額は百度に及ばないだろうというものだった。この予測も確かだった。香港市場に上場をしても、シャオミーの時価総額は百度を超えることはできなかったのだ。
しかし、上場してからのシャオミーの成長が止まらない。携帯電話だけでなく、テレビ、ノートPC、炊飯器、扇風機、調理器具、自転車、洗濯機、体重計、ソファ、衣類、傘、スーツケース、アクセサリーと、ありとあらゆる日用品の製造販売をし、それぞれの分野でヒット商品を出している。
いずれもエコロジー的なデザインで統一をされ、あらゆる日用品をシャオミーで揃えるミーファンと呼ばれる人たちまで生み出している。
シャオミーの創業者である雷軍(レイ・ジュン)は、当初、スティーブ・ジョブズ風の製品プレゼンテーションを行うことから「中国のジョブズ」と呼ばれたが、企業としてアップルを目指しているわけではなく、日本の無印良品を理想とし、「中国の無印良品になりたい」と発言している。まさに、MUJIのように、日用品のすべてを提供し、ライフスタイルを提供する企業になろうとしている。
▲シャオミーもロボット掃除機を開発している。日本では販売されていないが、中国では人気製品だ。
▲シャオミーの空気清浄機。デザインレベルは高い。大きすぎないミニマルサイズの液晶表示。空気穴をグラデーションにしてアクセントとして使う。デザインについては学ぶべき点が多い。
▲シャオミーが開発した電動歯ブラシ。もはや携帯電話専業メーカーではなくなっている。
▲リュックや衣料品なども扱うようになっている。
自動運転車の量産に入った百度
一方の百度は、自動運転プラットフォームであるアポロの開発に集中をし、本業の検索広告ビジネスは伸び悩んでいる。この11月から計画通り量産体制に入るなど、アポロ計画は順調に進んでいるが、利益が出るようになるまでにはまだまだ時間がかかる。このまま推移すれば、時価総額の面でもシャオミーが百度を超えるのは確実とみられている。そうなれば、シャオミーの他企業への投資も活発になってくるだろう。
ジャック・マーの予言通り、BATの時代は終わり、ATMの時代がやってくる。